「青い鳥」

公開
2008年11月29日
監督
中西健二
原作
重松清 
脚本
飯田健三郎、長谷川康夫
音楽
まきちゃんぐ
出演
阿部寛、本郷奏多、山崎和也、太賀、伊藤歩、井上肇、岸博之、重松収、 宮崎悠里、水島奈津希、丸藤雄也、三浦萌、大谷尚輝、道辰洸太、青木柊太、浅井萌、伊藤大翔、水島瑞希、 小幡彩花、河神将平、沼沢千遥、
堀田実那、高田里穂、鈴木達也、森桜子、尾林優樹、永居亜希子、吉田佑、篠原愛実、小倉拓弥、田中大河、
内田早香、高橋和希、仲原藍子、他
備考
  
物語
 東ヶ丘中学校2年1組、両親がコンビニエンスストアを経営する野口哲也は、級友から「コンビニ君」と呼ばれて、物品を要求されては両親の店で商品を万引きして渡すことを繰り返し、 遂に耐えられなくなって首吊り自殺を図った。幸い一命を取り留めたが、野口は転校、両親は店を閉めて、家も引っ越した。 学校は、同級生達に反省文を書かせ、校内に「青い鳥BOX」を設置し、友情を訴える標語を張り、「ベストフレンド運動」を展開。 マスコミの報道も一段落したが、2年1組の担任教師・高橋は休職してしまった。 〜そんな状態で迎えた3学期。2年1組の担任として、臨時教師の村内が着任した。
 村内は、吃音だった。生徒達は驚き、笑ったが、村内は意に介さぬ風で、撤去されていた野口の机と椅子を教室に運ばせ、元の場所に戻した。 そして、“野口の席”に向かって「野口君、おはよう」と声をかける。 村内の、野口の席へのあいさつは、毎朝続いた。
 事件を忘れようとしていた生徒達は、村内の行動を理解出来ず、困惑した。 野口に対するいじめの中心だった井上武志は、怒って、野口の机と椅子を外に出してしまう。 しかし、村内は雨降る校庭に捨てられていた机と椅子を、一人で元に戻し、またあいさつするのだった。「野口君、おはよう。」
 動揺する生徒達は、野口の自殺未遂事件について改めて噂し合う。 遺書に“3人”が名指しされていたらしく、2人までは皆想像が付いたが、あとの1人は誰だったのか・・・・自分なのか?
 村内の行動は生徒達のみならず、教師達にも保護者達にも波紋を呼んだ。 ある日の職員会議で、批判を浴び、毎朝の行為をやめるよう言い渡されたが、村内は従わなかった。
 生徒会役員と生徒指導教師が立ち合う、「青い鳥BOX」の定例会議に、ある日、村内も同席した。 その日も、いつものように、「青い鳥BOX」からはゴミや落書きばかり出てきた。 だが中に、嫌いだと言ったらいじめになるのか、と問う紙片があった。 生徒指導教師は、これも落書きと判断して会議を終了させようとしたが、2年1組から参加している園部真一が食い下がった。 その問いかけの答えが分からないと訴える園部は、満足に取り合ってもらえず、会議室から飛び出した。
 追いかけてきた村内に、園部は胸に溜まっていたものをぶつけた。 〜野口はいつも要求されたものを笑って持ってきていた、園部はたった一度だけポテトチップスを頼んだが、 あの時、野口は助けを求めていたのかもしれない、だけど自分は何もしなかった、遺書に書かれていた名前は自分に違いない。〜 園部の、激しい本気の言葉を、村内は静かに受け止め、つっかえながら、本気の言葉で答える・・・・・・・・・・。
一言
 「いじめ」で同級生が自殺未遂をして転校した後、何度も書き直させた原稿用紙5枚以上の「反省文」と、「青い鳥BOX」の設置により、 事件の総括と再発防止策を整え、平穏を取り戻したクラス、そして学校。 しかしそれは上辺だけのものに過ぎず、根本的な解決はしていないし、事実、悲劇の起きた2年1組では今も、別の同級生に対するいじめが行われている。 〜そこへ着任した、吃音の国語教師・村内の取った行動は、あえて波風を立てるように見えて、事件の真実に、生徒の魂に踏み込もうとするものでした。  2年1組の「いじめ」事件の根元的問題は、相手の気持ちを、本当の気持ちを感じないこと、気が付いても気が付かないふりをすることだったのです。 なのに、上辺を取り繕った反省文で事件を終わらせようとした学校と同じで、生徒達も友達の上辺だけを見ていては、「いじめ」は無くなることはないのです。

 本気の言葉は、本気で聞かなければならない。
 人は弱いから強くなろうとする。しかし強くなれなくていい。少しだけ人の気持ちが考えられればいい。
 いじめた相手を忘れて、一からやり直すなんて、卑怯だ。相手のことをずっと覚えておくことが責任だ。


 村内は多くを語らないし、映画も多くを語らず(例えば、村内の過去に何かが起きたらしいことも、1枚の写真から想像させるだけ)、至って静かな映画です。 しかしその分、一つ一つの言葉、特に吃音の村内が絞り出すような言葉は、正に本気の言葉で、重みを感じました。

 主演の阿部寛は、本作と「歩けども 歩けども」の2作で、2008年の映画賞で主演男優賞を受賞していますが、 「歩けども 歩けども」より格段に、本作における抑えた演技が光っていたと思います。



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