| 公開 |
2006年5月13日 |
| 監督 |
堤幸彦 |
| 原作 |
荻原浩 |
| 脚本 |
砂本量、三浦有為子 |
| 音楽 |
大島ミチル |
出演 |
渡辺謙、樋口可南子、坂口憲二、吹石一恵、水川あさみ、木梨憲武、及川光博、渡辺えり子、田辺誠一、袴田吉彦、松村邦彦、
木野花、市川勇、MCU、遠藤憲一、香川照之、大滝秀治、他 |
| 備考 |
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| 物語 |
佐伯雅行は、大手広告代理店のやり手部長。
仕事では大型企画の契約を取り付け、家庭には良き妻・枝実子があり、一人娘の梨恵は恋人・直也と結婚を予定し、順風満帆な人生だ。
だが、雅行に、変調の兆しが現れた。
物忘れが多くなり、大事スケジュールを間違えたり、仕事で関わる人達の顔や名前が分からなくなったり、同じ物を何度も買ったり・・・・。
枝実子に促されて病院に行った雅行は、医師に、若年性アルツハイマー病の初期症状だと診断された。
老人の病気だと思っていたアルツハイマーは、早いケースでは20代で発症することもあり、雅行の年代の患者も多く、そして、完治は無い・・・・。
雅行は激しく動揺し、絶望感に襲われるが、「私がずっと側にいます」と言う枝実子に支えられた闘病生活が始まった。
雅行は、仕事は続けた。しかし進行する症状に、失敗も増える。
やがて会社に病気のことが知られてしまい、依願退職を勧められたが、降格を受け入れてなお会社に留まった。
秋には梨恵の結婚式。大事な原稿を紛失して狼狽する一幕もあったが、何とか新婦の父のあいさつを果たした。
父親としての大役を終えて、雅行は退職した。
雅行は在宅生活を送るようになり、代わって枝実子が生活費を稼ぐため、友人が経営する陶芸品のギャラリーで働き始めた。
枝実子が朝出勤してから夜に帰宅するまでの間、雅行は、枝実子が書き置いたメモに従って生活する。
散歩には出るし、若い頃に枝実子と一緒にやっていた陶芸をまた始めて陶芸教室に通ったりもするが、一人で家にいる時間が多くなった。
時は流れる。梨恵が出産し、初孫に雅行は「芽吹」と命名した。
家族の新しい出来事が積み重ねられて行く。雅行の病状は、段々進行して行く。
枝実子は雅行を献身的に支える。時は流れる・・・・。
ある日、雅行は、枝実子が出勤した後、一人で電車に乗り、ナーシングホームを見学に行った。
以前、枝実子が友人からもらったが隠していた資料を、偶然雅行がみつけていたのだった。
施設が気に入った雅行は、さらに、山奥の陶房に向かった。
「日向房」と朽ちた看板を掲げるそこは、若き頃の雅行と枝実子の思い出の場所。
無人に見えたが、突然主である老人が現れた。雅行が携えていた自信作を見るや、老人は「焼きがなっとらん」と言い放った。
若き日の師匠だった老人の指示に従って雅行は準備をし、野焼きが始まった。
日が暮れて、火を囲んで2人は、丸焼きの野菜と燗のやかん酒を口にする。
話しぶりから、老人もアルツハイマーを患っていると思われた。
だが老人は大きな声で言う。
「みんなは呆けていると言うが、わしは呆けておらん!呆けとるかどうかは、わしが決める!」
「酒と食い物と女があれば、あとは何もいらん!生きてりゃいいんだ、生きてりゃ!」
朝になった。いつの間にか眠っていた雅行が目を覚ますと、老人はいなかった。
野焼きの火は消えていて、雅行は作品を掘り出した。
完成した陶器を大事に抱えて、山道を、雅行は歩いた。
向こうから、女性が歩いてきた・・・・・・・・・・・・。
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| 一言 |
渡辺謙の、意外にも初主演となる映画。
記憶が蝕まれ、新たな記憶を刻むことが出来なくなり、自分が自分でなくなる・・・・
アルツハイマー病の主人公の物語ながら、割と淡々と映画は進み、重苦しいものにはせずに仕上げられている印象です。
(中盤以降、ちょっと淡泊かなとも思いましたが。)
強烈な存在感だったのが、ラスト近くで幻か現か曖昧な登場の仕方をした、大滝秀治演じる日向房の老人。
アルツハイマーの症状が相当進んでいると見受けられるが、本人は全く病識が無いこの老人は、
端から見れば滑稽ですが、その言葉には何をも超越した逞しさがありました。
「生きてりゃいいんだ、生きてりゃ!」・・・・この映画は、この一言に尽きるとさえ思いました。
劇中においては、苦しんでいた主人公に、悟りを与える言葉だったのではないでしょうか。
(悟ったことを忘れてしまうとしても。)
全体的に、大人が見る良作の趣でした。
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