「武士の一分」

公開
2006年12月1日
監督
山田洋次
原作
藤沢周平
脚本
山田洋次、
音楽
冨田勲
出演
木村拓哉、壇れい、笹野高史、板東三津五郎、緒方拳、桃井かおり、小林稔侍、岡本信人、左時枝、綾田俊樹、 赤塚真人、近藤公園、歌澤虎右衛門、大地康雄、他
備考
  
物語
 東北地方、海坂藩の30石の下級武士・三村新之丞は、美しく気だてのよい妻・加代と、慎ましく暮らしていた。 藩主の毒味役という仕事に意味を見いだせない新之丞は、早く隠居して子ども達に剣術を教える夢を持っていた。
 そんな新之丞の生活が、ある日一変する。 毒味した貝の毒に当たり、3日間高熱で寝込んだ末に意識を取り戻した新之丞は、視力を失っていたのだ。 人の手を借りなければ何も出来なくなったことに、新之丞は絶望し、自害しようとしたが、加代が必死に止めた。 新之丞が死んだら、自分もすぐに後を追って死ぬ、と。
 親族が集まって、家禄没収も免れ得ないであろう新之丞の行く末について議論するが、良い知恵はない。 加代が、番頭・島田藤弥に相談に乗ると声をかけられていたことを口にすると、親族一同はそうしろと決めつけて、親族会議は終わった。
 ほどなく、三村家の家禄30石はそのまま、新之丞は終生養生すべしと、寛大な沙汰が下った。 だが、新之丞は、加代の外出時間が長いことに気が付いた。 さらに、加代が男と一緒に歩いていたという噂話を聞かされて、新之丞は疑惑を抱き、中間の徳平に、外出する加代のあとを付けさせた。 徳平は、加代が寺で先祖の墓に参った後、茶屋町に消えるのを見てしまった。
 加代は、徳平の尾行に気が付いていた。 意を決して、全てを打ち明ける加代。 番頭の島田に、新之丞の身上について口添えを頼みに行った時、引き替えに手込めにされたこと、その後も脅されて何度か逢っていたこと、 自分はどうなってもいいから夫・新之丞を守りたかったこと。 だが新之丞は、きっぱり離縁を告げる。 徳平が、おろおろと取りなすものの、身寄りも帰る実家も無い加代は、すぐに三村家を出て行った。
 新之丞は、目の見えぬまま、木刀を手に、稽古を始めた。 そして、師匠・木部孫八郎の道場に赴き、手合わせを求める。 尋常ならぬ新之丞の様子に気が付いた師匠に、新之丞は「武士の一分」としか言えないと答えた。
 かつての同僚が、新之丞に関する沙汰の経緯を調べてくれた。 重役は、家禄も屋敷も没収の上、20俵の捨扶持を与えると決めたのを、藩主が一存で覆して寛大な沙汰になったのだ、と。 島田は口添えなどしていなかった・・・・。
 島田の卑怯な行為を知り、盲目の剣の術を掴み、新之丞は意を決して、徳平を使いに出し、島田に決闘を申し込んだ。 腕に自信のある島田は、受けて立つ。
 風の吹きすさぶ河原で、新之丞と島田は対峙。 武士の一分をかけた、真剣勝負が始まった・・・・・・・・・・。
一言
 藤沢修平原作・山田洋次監督の時代劇3部作の、第三作。 前2作ほど舞台と時代の設定が明確にされていないけれど、幕末の近い海坂藩での物語なのでしょう。
 下級武士の主人公が、貧しくも平穏な暮らしをしていたところへ、事件が起こり、決闘に至る展開、さらに大切な人とのその後まで、 話の骨格は前2作と同じ。 大きな違いは、クライマックスの決闘が、前2作の主人公は上意(藩命)に逆らえずに臨んだものであったのに対し、 本作では藩には秘密の、全くの私闘であること。 新之丞が私闘に挑んだ理由は「武士の一分」ですが、藩の意向に関係無く自由意思で戦った彼の精神は、武士身分よりもっと普遍的なものに思えました。
 この映画の全編を通じて印象に残ったのは、主人公夫婦のつましい暮らしぶり、概ねの登場人物の素朴な様、それに、季節々々の音でした。 鳥のさえずり、枯葉のたてる音、風の音・・・・。
 クライマックスは武士と武士の決闘ですが、この映画が本当に描いているのは、失われつつある(失われた、というべきか?)、 日本の風土の中で生きる日本人の美しい姿なのだと感じられました。



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