「茶々 天涯の貴妃(おんな)

公開
2007年12月23日
監督
橋本一
原作
井上靖 「淀どの日記」
脚本
高田宏治
音楽
海田小吾
出演
和央ようか、寺島しのぶ、富田靖子、高島礼子、余貴美子、原田美枝子、中村獅童、渡部篤郎、松方弘樹、谷村美月、吉野公佳、 メイサツキ、黄川田将也、中村大樹、平岳大、近藤近園、高橋長英、中丸新将、松重豊、他
備考
  
物語
 1573年、織田信長軍の攻撃で浅井長政の小谷城は落城、長政の妻で信長の妹である市とその3人の幼い娘達は、信長の元に下った。 その信長亡き後、羽柴秀吉が頭角を現し、対立する柴田勝家と争う。 娘達を連れて、勝家の元に身を寄せていた市は、茶々、はつ、小督の三姉妹に「女は負ける戦をしてはならぬ」、そしてとにかく生きるよう言い残して、 勝家に殉じて自害した。 三姉妹は、秀吉の庇護下に置かれることになった。
 三姉妹の生活は長くは続かず、まず小督が佐治与九郎に、はつが京極高次に嫁がされて行った。 妹二人が去り、残された茶々を、秀吉の奥向き束ねる大蔵卿の局が訪ねた。 関白・豊臣秀吉には子がない、秀吉の世継ぎを生んで欲しい、と。 茶々にとって、秀吉は親の仇である。 「側に上がるということは、殺すことも出来るということ」と、茶々は、秀吉の側室になることを承諾した。
 秀吉は、無邪気なまでに茶々を歓迎した。 茶々の殺意はいつしか失せて、待望の世継ぎ・鶴松が誕生する。 鶴松は早世してしまうが、第二子が生まれた。後の秀頼である。
 秀吉が、小督を佐治与九郎と離縁させ、徳川家康の嫡男・秀忠に改めて嫁がせた。 はつは憤慨して茶々に迫るが、茶々は冷静に告げるのだった。 茶々が豊臣の子を産み、小督が徳川の子を産むことで、将来豊臣と徳川が戦っても、どちらかが生き残れば自分達の「勝ち」であると。
 秀吉が死に、天下は家康の握るところとなった。 それでも茶々は、小督と秀忠の間に生まれた千姫を、秀頼の正室として嫁がせることに成功した。
 時は流れ、秀頼も成人した頃、徳川家康が兵を挙げ、大阪城に大軍で押し寄せた。 大阪城を明け渡す代わりに豊臣家を存続させるという和議条件を、茶々は一蹴。 家康の本陣に、甲冑に身を包み、秀頼と共に騎馬で乗り込んだ茶々は、武力対決を宣言した。
 しかし戦闘は、圧倒的大軍勢で包囲する徳川軍の優勢に進み、本陣を強襲して家康に肉薄した真田幸村も討ち死に。 大砲を撃ち込まれた大阪城下は炎に包まれて行った。 戦火をかいくぐって、危急の姉・茶々を、小督が決死の思いで訪ねる。助命を請け負おうとする小督の言葉を、茶々は拒絶した。 千姫も、連れて帰ろうとする小督を拒み、秀頼と共に大阪城に残ることを選ぶ。小督は、虚しく大阪城を去るのだった。
 火の手は本丸にも回り、いよいよ落城が迫る。秀頼は、騎馬で突撃して行った。 茶々は最後を覚悟し、長年仕えてきた侍女・きくに、千姫を小督の元に送り届けるよう命じた。 大蔵卿は、茶々に背いてそれを阻止しようとするのだが・・・・・・・・・・。
一言
 時代劇大作なのですが、至って大味な印象です。 繰り返し落城を経験して両親を失った三姉妹の繋がり、親の仇・秀吉との愛憎、秀頼との関係、等、茶々の生涯とその思いを立体的に描く大きな軸があるのに、 三姉妹の繋がりを除けば、どうも淡泊な感じです。 特に秀頼は、この映画の展開上は“いない訳にはいかないのでいる”程度の存在感しか感じられないのです。 又、三姉妹の繋がりも、次女・はつのナレーションで物語を進めながら、はつの出番が少ないのは仕方ないにしても、要所でナレーションがつかなかったりして、これも少々淡泊。 ただ、各シーンは作り込まれているので、シーンとシーンの繋ぎがしっくり来ないというところ。 総じて言えば、大味な大作、なのです。
 誰もが知っていると言って過言ではない題材で、そのまま作っても面白くないという考え方もあるでしょうが、 史実に照らすと、かなり滅茶苦茶です。 例えば、大阪冬の陣と夏の陣が一つの合戦にまとめられている(?)のは、そのシーンがいつなのか、観客に混乱をもたらします。 唖然としたのは、茶々が甲冑姿で家康の本陣に乗り込んだり、秀頼が死に場所を求めるような突撃をしたこと。 “通説”では、浪人を寄せ集めた自軍の中に徳川への内応者が潜り込んでいることを恐れた淀殿(茶々)が、危険な陣中に秀頼を出さなかったと言われている訳で、 豊臣軍が劣勢を挽回する起死回生策は、秀頼が前線に出ることによって豊臣恩顧の大名の戦意を喪失させることだった〜と考える向きもあるところ、 この映画の中で本当に秀頼を突撃させて、歴史の「if」を見せるでもなく、単なる見せ場だったようです。 (結果、当然“通説”とは秀頼も淀殿こと茶々も最期が異なる。) もっと大胆な作り話になると、かえって面白かったかもしれませんが・・・・。
 本格的時代劇映画を期待してみると大味なのですが、主演に宝塚の元トップスター(男役)を据えて、実年齢なら50歳近かった茶々の甲冑姿の雄々しい姿を見せる ・・・・この映画は、「宝塚ファンのための時代劇」だと考えると、こういうものかなとも思えます。
 茶々を演じた和央まよかは、キリリとした目を持っていて、打ち掛けの姫姿でも凛々しく、副題の「天涯の貴妃」に相応しい女優が起用されていると感じました。 ただ、だからこそ、かつての「男役」的シーンを作らずに、「姫」で通した方が、悪女ではない、孤高の淀殿(茶々)像が格好良く描けただろうと思われるのです。



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