「ちゃんと伝える」

公開
2009年8月23日
監督
園子温
脚本
園子温
音楽
原田智英
出演
AKIRA、奥田瑛二、伊藤歩、高橋恵子、吹越満、高岡蒼甫、でんでん、綾田利樹、諏訪太郎、佐藤二朗、他
備考
  
物語
 教師で、サッカー部のコーチだから、高校時代には学校と家の、公私とも厳しかった、父・北徹二。 タウン情報誌の編集部で働く社会人になってからも、北史郎は父を避けるように過ごして来た。 だが、父がガンで入院してからは、史郎は父とちゃんと向き合うことにして、母・いずみの心配をよそに、毎日1時間、仕事を抜けて、 病室の父の側で過ごすことを日課にしていた。
 徹二は、退院したら史郎と釣りに行きたいと言い出した。 同僚教師の田中に連れられて紅名湖に行き、田中が釣りをする姿を見て、釣りに憧れ、既に竿も買ってあるという徹二。 紅名湖に釣りに行くことが、親子の約束になった。
 徹二の主治医の渡辺と仲良くなって、勧められて念のために受けた検査の結果、史郎にも胃ガンがみつかった。 しかも渡辺医師は、徹二のガンより悪いという。 父を看取るどころか、同じガンで、父が息子を看取った後に命が尽きる可能性すらある〜大きな衝撃を受けた史郎は、家族には告知しないよう渡辺医師に懇願し、 事実を自らの胸の中にしまっておくことにした。 お互いに結婚を意識する恋人・中川陽子にさえ・・・・。
 史郎は、大きな不安を抱えながら、いつも変わらないように生活を続けた。 陽子とのデート中に釣り堀に行って、釣りの練習だってした。 密かに、父が先に逝ってくれることを、切実に願いながら。
 ある日、史郎は陽子に、もしも自分がガンだと分かっても一緒にいてくれるかと尋ねたところ、陽子は、 何故そんなつまらないことに答えなければならないのかという反応。 湖に釣りに連れて行ってくれた時に、気持ちをちゃんと伝えるという陽子の提案に乗って、2人は近々、結婚について話し合うことにした。
 東京でミュージシャンをしている、高校時代の同級生・田村圭太が帰省して、史郎は圭太と陽子を連れて徹二の病室を訪ねた。 久々に教え子・圭太に会って、上機嫌の徹二だったが・・・・3人が病室を後にして母校を訪ねている間に、史郎の携帯電話に、母・いずみから連絡が入った。 徹二が亡くなったと・・・・。
 葬儀の日。斎場に向かう途中、思い詰めた史郎は、ハンドルを握る葬儀屋の担当者を追い出して、棺を乗せた霊柩車を奪った。 呆然とするいずみ、陽子、参列者達・・・・。 史郎が亡骸となった父を連れて行ったのは、約束の場所、紅名湖だった。 水辺のベンチに父の亡骸を座らせて、史郎は、父の釣り竿の糸を湖に垂らす。 ・・・・約束の釣りだった。
 後日。釣りデートを約束していた日、史郎は、待ち合わせより早く、陽子の家を訪ねる・・・・・・・・・・。
一言
 父の子への思い。子の父への思い。恋人の、相手への思い。 ・・・・いろいろな思いを、そして事実を、「ちゃんと伝える」ことが物語の背骨で、題名が作品のテーマをストレートに表している映画です。
 作品世界は、一部の要素を除けば、どこかにありそうな普通の日常を切り取ったような印象を受けました。 大手の作品ではない、単館系映画ならではの“良さ”を感じます。
 終盤で、史郎がとる思い切った行動は、驚かされるものでした。 死体と釣りをする・・・・一歩間違えれば迷シーンに陥るところ、ギリギリ名シーンに留まっています。 良いシーンになっていると思います。



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