| 公開 |
2006年10月28日 |
| 監督 |
クリント・イーストウッド |
| 脚本 |
ポール・ハギス、ウィリアム・ブロイレス,Jr |
| 音楽 |
クリント・イーストウッド |
出演 |
ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ、バリー・ペッパー、ジェイミー・ベル、
ポール・ウォーカー、ジョン・ベンジャミン・ヒッキー、他 |
| 備考 |
硫黄島2部作の内、“アメリカから見た硫黄島”。
“日本から見た硫黄島”である「硫黄島からの手紙」は12月9日公開。 |
| 物語 |
〜1枚の写真が、戦争の勝敗を決定することがある〜。
寿命を迎えようとしている老人、ジョン・ドク・ブラッドリー。
彼は、家族にも多くを語らぬ、「硫黄島の英雄」の一人だった。
1945年2月。アメリカ軍は、初めて日本固有の領土・硫黄島攻略戦を開始した。
3日間の爆撃と、徹底的な艦砲射撃の後、アメリカ海軍海兵隊は上陸を開始した。
ドクは、衛生兵としてこの戦闘に参加していた。
難なく上陸したアメリカ軍だが、巧みに偽装したトーチカや壕に身を隠した日本軍の猛攻撃を受けて、続々兵士が倒れた。
姿の見えない敵に、恐怖で大混乱する上陸部隊は、壕一つ、トーチカ一つを丹念に潰して、死傷者を増やしながら、占領範囲を広げて行く。
そして遂に、要衝・擂鉢山を制圧し、山頂に星条旗を立てたのだった。
その星条旗は、大隊旗だった。上官が記念品に求めるや、大隊長は、別の旗とすり替えさせた。
2つ目の星条旗を立てる様の写真が、新聞のトップを飾り、アメリカ中を熱狂させる。
政府上層部は、この“2つ目の星条旗“の写真を利用することを思いついた。
写真に写っていた6人の兵士は本当は誰だったのか曖昧なまま、6人の名が挙げられたが、3人はその後続いた戦闘で戦死していた。
生き残っていた、たまたま手を貸しただけの衛生兵ジョン・ドク・ブラッドリー、2つ目の星条旗を伝令役として運んだレイニー・ギャグノン、
戦場に残ること望んでいたアイラ・ヘイズの3人が、本国に戻された。
帰国した3人を待っていたのは、戦時国債キャンペーンで「硫黄島の英雄」として振る舞う任務だった。
〜彼らが立てた星条旗は2つ目で、しかも戦闘のさなかではなく擂鉢山の攻防が決着した後で、写真に写っている6人の名前まですり替わっている。
彼ら自身、賞賛されるべき英雄ではないと分かっている。
あえて本当の英雄を挙げれば、硫黄島で戦死した戦友達なのに・・・・。〜
望みもしないのに英雄に仕立てられ、擂鉢山を模した舞台に旗を立てる再現劇までさせられ、耐えられなくなったアイラは酒に溺れ、志願して戦場に戻った。
ドクとレイニーはその後も「英雄」役を続け、政府は戦費を調達し・・・・戦争が終わった。
戦後、レイニーは彼を“持ち上げて”くれた人のつてで就職しようとしたが、「過去の英雄」は相手にされることなく、清掃員として生活することになる。
アイラは、生きて本国に帰還したが、「英雄」どころか、インディアン出身故の差別を受け続け、酒浸りになり、行き倒れて生涯を終える。
そしてドクは、元々望んでいた通り、葬儀屋で働き、後にその葬儀屋の経営者になり、家族にも恵まれたが、硫黄島の戦いについては口を閉ざしたままだった。
戦場の凄まじき光景も、救えなかった負傷兵も、失った戦友も、脳裏を離れることはなかったのだが・・。
硫黄島で何があったのか、ドクの息子は当時を知る人を尋ね歩く・・・・・・・・・・。
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| 一言 |
戦争映画で、戦場の地獄絵図を見せながら、むしろ銃後で起きたことに焦点を当てて、戦争の何たるか、戦争の英雄の何たるかを問う作品。
太平洋戦争における戦勝国・アメリカの、「英雄」と呼ばれた兵士達が、転落人生を歩んでいたことに、驚きを禁じ得ません。
宙を銃砲弾が飛び交い、地を、四肢が飛び散り、内蔵があふれる、むごたらしい屍が埋める、凄まじい戦場の体験は、それだけで人間の精神を蝕むに十二分なもの。
「硫黄島の英雄」の3人は、加えて、政府の都合で「英雄」に仕立てられ、用が済むや政府にも世間にも放り出されてしまった・・・・。
彼らは、戦場体験と、「英雄」体験とにより、二重に人生を壊されてしまった訳です。
勝敗に関係無く、戦争が個人にもたらすものは、喪失だけということでしょうか。
又、硫黄島の戦いでアメリカ軍が勝利したことは、太平洋戦争において、アメリカ軍機が日本本土を空襲することを容易にする大きな転換点になったのですが、
劇中では、その重要性も、そもそも硫黄島がどこにある島なのかも、大して語られていません。
このことによって、史実の太平洋戦争における硫黄島の戦いは、抽象的に戦争の中の一幕となり、ドク達の物語も、戦争で作られた英雄達をめぐる普遍的な物語と化しています。
過去の戦争を題材にして、未来に通用する映画が作られた、と言っていいと思います。
ところで、題名は「父親たちの星条旗」ですが、何故「父親たちの〜」なのかが、よく分かりませんでした。
ドクの息子以外にも元兵士の息子や娘が登場するか、せめてドク親子の姿をもっと描写していれば、理解出来たかもしれないのですが・・・・。
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