| 公開 |
2009年1月24日 |
| 監督 |
君塚良一 |
| 脚本 |
君塚良一、鈴木智 |
| 音楽 |
村松崇継 |
出演 |
佐藤浩市、志田未来、松田龍平、柳葉敏郎、石田ゆり子、木村佳乃、佐野史郎、佐々木蔵之介、東貴博、津田寛二、冨浦智嗣、他 |
| 備考 |
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| 物語 |
1月24日。
東豊島署暴力犯捜査係の刑事・勝浦卓美は、娘・美菜に渡すプレゼントを買っていた。
3年前に、マークしていた覚醒剤中毒者に4歳の男の子を刺殺された、捜査ミスが起こした事件の責任を1人負わされてから、
家庭が壊れ、妻子とは別居中だが、美菜が御膳立てしてくれた「家族旅行」が、2日後に控えている。
これが、家族関係を修復する、最後のチャンスだと、勝浦は考えている。
夕方になって、勝浦は同僚の三島省吾と共に、加害者の家族の保護、という任務を与えられた。
前月に発生した小学生姉妹殺人事件の容疑者として警察は、18歳の少年・船村直人が逮捕したのだが、事件の重大性から実名報道される可能性があるので、
容疑者の家族である両親と妹を、世間やマスコミから守る必要があるというのである。
マスコミが包囲する船村家で、警察はまず、両親の離婚と再婚、妹の新戸籍への入籍により、容疑者の家族を母親の旧姓・大野に変えさせた。
次に、家族を別々に保護すると同時に事情聴取を行うこととし、勝浦達は妹・沙織を任された。
1歩外に出れば、マスコミのカメラとマイクが殺到してくる。
フラッシュの閃光と記者達の怒声を浴びながら、勝浦と三島は、沙織を車に乗せて発進した・・が、マスコミの車は執拗に追ってくる。
東和新聞の記者・梅本は〜彼の息子が学校でいじめに遭った時、相談しても、学校は息子を助けてくれなかった〜、
「被害者は加害者の家族にも死んで償って欲しい思っている」と迫る。
上司の坂本係長に行き先の指示を求めても、供述を取ることを求めるだけで、安全な場所を確保してくれない。
三島が家宅捜査の応援に呼び戻されてからは勝浦1人が、当初用意されていたホテル、勝浦自身のアパート、勝浦がカウンセリングを受けている精神科医・尾上令子のマンションと、
安全な場所を求めて、沙織を連れて転々とする。
この間に、家宅捜査に立ち会っていた母親が警察の隙を見て自殺したことが沙織の知るところとなり、彼女は今日起きたことが整理出来ないまま、泣き叫ぶ・・・・。
1月25日
勝浦は沙織を車に乗せて、令子のマンションを出た。
ファミレスに寄った時、“3年前の事件の刑事”が容疑者の妹を保護していることを疑問視するコメントが、ついていたテレビで流れる。
勝浦が沙織を連れて来たのは、西伊豆のペンションだった。
翌日から家族旅行で泊まる予定だったペンションで、“3年前の事件”の被害者の両親である本庄圭介・久美子夫妻が経営するペンションでもある。
安全な場所が何処にも無く、すがる思いで訪れた勝浦を、本庄夫妻は、客を泊めるのが仕事だと、笑顔で向かえてくれた。
容疑者は供述せず、沙織も口を閉ざしたままで、この仕事は長期化する・・・・勝浦は、娘・美菜に電話して、家族旅行が出来ないことを告げた。
美菜には、電話を切られてしまった。
勝浦の知らないところで、いや、勝浦を辛辣に糾弾する梅本すら及ばないところで、事態は急激に動いていた。
インターネット上に、容疑者少年や、その家族、さらにはマスコミ報道された「容疑者の妹を保護する刑事」勝浦の、個人情報の暴露や、
激しい誹謗中傷が溢れていたのだ。
1月26日
朝、勝浦は、ペンションの外にいた若い男に写真を撮られた。
三島が電話で知らせた情報で、勝浦は、マスコミ報道されていない沙織の名前や顔写真、勝浦と沙織が今いる場所、勝浦の自宅住所までもが
インターネット上の掲示板に載せられていることを知る。
美菜に電話すると、自宅にも見知らぬ人達が押しかけているという。
怯える美菜に、勝浦に出来るのは、外に出ないよう指示することと、三島に自宅の警護の手配を頼むことだけだった。
ペンションはインターネットの掲示板を見た群衆に包囲されて、勝浦達は身動きが取れない。
温厚に振る舞っていた圭介が、「警察は殺人犯の家族を守るのか!?」と、勝浦に溜まっていた思いをぶつけた。
後になって、圭介は勝浦に詫びるのだが。
警察には恨みがあるが、事件の後、亡き息子に手を合わせに来てくれる勝浦のことを恨んでいるのではない、目の前に勝浦しかいなかっただけだ、と。
そしてそれは、沙織も同じだろう、とも。
三島と一緒に、刑事課第一係長・稲垣が来た。稲垣は、沙織を厳しく尋問するが彼女は何も語らない。
夜になって、沙織のボーイフレンド・園部達郎がやって来た。
達郎には、15歳の少女らしい、明るい顔を見せる沙織・・・・。
1月27日
沙織と達郎が、ペンションから消えた。
勝浦は、町を駆け回る。
1人で歩いていた達郎をみつけて居場所を聞き出し、「今起きていること」を何も知らずにホテルの1室にいる沙織のもとへ急行し、
彼女を守ろうとする勝浦・・・・・・・・・・。
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| 一言 |
前半で、「加害者の妹」になって戸惑う少女と、過去の事件のトラウマを抱える刑事を追い詰めるのは、マスコミ。
相手が15歳の少女であっても憚らずに「死ね」と言う、良識を疑うような存在です。
ところが、勝浦がマスコミをまいた後の後半では、2人を追い詰めるのはネットユーザー達に代わっています。
激しい言葉に留まらず、実際に手を下しかねない、マスコミすらついて行けないような存在です。
これは、名刺を持つ(言い換えれば、名札を付けた)職業人から、匿名の大衆への交代で、姿も所在も不明確な後者は、一層恐ろしい相手。
映画の最後には、刑事と少女を取り巻く事態は、どうやら収拾しそうだけど、同じことが何処かで繰り返されていることも見せています。
この作品は、現代の「恐怖」を、加害者家族の苦しみを、被害者家族の苦しみを、見事に浮き彫りにしている秀作です。
「守るということは、人の痛みを知ること。
人の痛みを知ることは、とても辛いこと。
しかし、それこそが、生きるということ。」
この勝浦の台詞(※要旨)が、着地点の無い物語の、せめてもの行き着くところでしょう。
重苦しく、解決のない物語ですが、家族を失いかけている刑事も、犯罪被害者の遺族である夫婦も、犯罪加害者の妹の烙印を押された少女も、
痛みを乗り越えて・・・・いや、痛みをしっかり受け止めたまま、かすかな希望を持って生きて行くであろうラストに、救われる思いがしました。
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