| 公開 |
2004年1月17日 |
| 監督 |
磯村一路 |
| 原作 |
さだまさし |
| 脚本 |
磯村一路 |
| 音楽 |
渡辺俊幸 |
出演 |
大沢たかお、石田ゆり子、富司純子、林隆三、田辺誠一、古田新太、鴻上尚史、石野真子、渡辺えり子、柄本明、松村達雄、他 |
| 備考 |
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| 物語 |
東京の小学校の教師・高野隆之は、先輩教師からも10年に1回しか巡り会えないと言われる良いクラスを担任して、充実した日々を過ごしていた。
だが、11月のある朝、クラスの子供達に集団で襲われる悪夢で目覚め、立ち上がるなり何が起きたか分からないまま転倒した。
これが異変の始まりだった。
幼なじみの眼科医・清水博信は診察後、隆之に、原因はベーチェット病であること、治すことは出来ず、最悪の場合失明することを告げる。
清水に引き合わされて隆之は、ベーチェット病で失明した患者・黒田寿夫の話を聞いた。
黒田自身は視力を失うまでに数年かかったが、ある日突然見えなくなった人もいること、目が見えなくなって困ったことは実は大したことではないこと、
目が見えないというのは暗闇ではなく、乳白色の霧の中にいるようなものだということ、等を。
隆之は、恩師の朝村に会って、事情を話し、教師を辞める決心を伝えた。そして、モンゴルに研究に行っている恋人・陽子とも別れることも。
陽子は、朝村の娘だった。
3月。子供達に別れを告げ、朝村から知らせを受けて慌ててモンゴルから帰国した陽子にも幸せに出来ないと告げ、隆之は長崎の実家に帰った。
故郷・長崎に帰った隆之は、母・聡子、姉・玲子、幼なじみ・松尾輝彦達の中で静かに暮らす。
そして、目が見える内に長崎の町をしっかり目に焼き付けておこうと、ひたすら歩き始めた。
5月。町を歩く隆之の目の前に、陽子が現れた。
「あなたの目になりたい」と言う陽子は、隆之の戸惑いをよそに、長崎に、それも隆之の家に留まる。聡子は陽子を気に入り、温かく迎え入れた。
一緒に町を歩く隆之と陽子は、聖福寺で林という老人と会った。林の人柄に触れた隆之は自らの病気のことを話す。
林老人は、禅寺の修行僧の生活の話をした。
〜托鉢生活をする修行僧は、夏の始まりの日=「結夏」になると庵に集まり、共同生活を営む。
それは、虫の卵や草の芽などの新しい命を踏み潰してはいけないという釈迦の教えに従ったもの。
夏の終わりの日=「解夏」には、互いの罪を懺悔しあい、再び托鉢生活に旅立つ。〜
別れ際、林老人は隆之に、失明する恐怖は「行」だと言った。
辛い「行」の後、失明した瞬間に恐怖から解放される、その日が隆之の「解夏」だと。
陽子と共に歩く日々が続く中、隆之の病状は確実に進行した。
ある日、雨の中で転倒した隆之は、衝動的に陽子に冷たい言葉を浴びせてしまう。陽子は、東京に帰った。
母・聡子には陽子も辛いのだと言われ、林老人を訪ねて、失明する前、最後に見たいものは何だろう?と言われ、隆之は東京に飛んだ。
そして、陽子をみつけ、言った。「俺の目になって欲しい。」
長崎で、隆之と陽子と聡子の生活がまた始まった。
隆之の視力はさらに衰え、東京の小学校の教え子達の手紙も読めない。
陽子が代読したその手紙に、2人は涙した。
林老人に教えられた、興福寺で咲いた白いサルスベリの花を見に行った隆之と陽子。
その花は、隆之の目には・・・・・・・・・・
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| 一言 |
物語も映像も音響も、派手なものは何もありません。
1人の青年が発病から視力を失うまでの間の、彼自身の恐怖と葛藤、それらを経て達したある種の“悟り”、そして彼を取り巻く人々の姿や、彼を支える人々の心情を淡々とフィルムに焼き付けた映画です。
見終えて気が付いたのは、悪い人が1人もいないこと。登場人物全員が、善人です。
この環境が、主人公・隆之に「解夏」を安らかな心で迎えさせたのだと思うし、観客もまた安らいだ気持ちにさせるのだと思います。
物語の中で何度か、陽子の「私のこと、見える?」という問いに対し、隆之はその度に「見える」と答えていますが、意味は違っていて、最後の「見える」は深い答えでした。
陽子の気持ちを全く理解していなかった最初の「見える」と違い、陽子の姿形が見えるのではなく、陽子の心が見えているのだから。
失明は悲劇的なことですが、隆之の人生の中では(林老人の言う通り)一つの“行”の終わりで、(黒田の言う通り)失明後は困苦の日々を送るのではなく、別の世界に生きるのだと、穏やかに説得力を感じました。
映画の最後は、その続きが気になる終わり方で、せめてエンドロールの背景で“その後”を見せて欲しいと思いましたが、ラストシーンは美しく、そこに被せられた隆之の言葉も印象に残りました。
主人公は大沢たかお演じる隆之ですが、もう一人の主人公と言っていい、石田ゆり子演じる恋人・陽子の、切なく健気なたたずまいが美しく際立って感じました。
又、隆之も陽子も白い衣装が多く、その清潔感が、この物語の中の2人に似合っていました。
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