| 公開 |
2006年1月21日 |
| 監督 |
小泉尭史 |
| 原作 |
小川洋子 |
| 脚本 |
小泉尭史 |
| 音楽 |
加古隆 |
出演 |
寺尾聰、深津絵里、斉藤隆成、吉岡秀隆、浅岡ルリ子、井川比佐志、頭師佳孝、伊藤紘、茅島成美、観世銕之丞、他 |
| 備考 |
|
| 物語 |
ある高校の新学期、数学の最初の授業。
若い教師は、自分が「ルート」と呼ばれるようになった由来と、数学の道を志すことになったことを語り始めた。
数にまつわる定理や、数式を交えながら・・・・・・。
19年前。10歳の息子と二人で暮らす母親は、家政婦として働いて生計を立てていた。
ある日、彼女が新たに派遣された家は、頻繁に担当者が交代している、未亡人が住む屋敷の離れだった。
離れの住人は、未亡人の義弟。
彼は、博士号を持つ数学者だが、10年前に交通事故に遭って記憶が80分間しかもたない障害を負い、離れの中で生活していた。
11時から19時まで、義弟の食事の世話等をするのが家政婦の仕事。
未亡人は、何故か、離れの問題は離れで解決し、母屋に出入りしないように告げる。
家政婦の新しい仕事の最初の朝。
玄関に現れた、上着にたくさんのメモを張り付けた博士は、初めて会う家政婦に、靴のサイズを尋ねる。
24cmと答える家政婦に、博士は、24は4の階乗で潔い数字だと言い、上がるよう促した。
記憶が80分しかもたない博士は、次の日には昨日のことは覚えておらず、このやりとりは毎日繰り返されることになる。
他人とうまくコミュニケーションをとることが出来ない博士は、何かにつけて数字の話をした。
素数、完全数、友愛数・・・・。
穏やかに、楽しそうに語る博士の数字の話は、特に、家政婦の誕生日「2月20日(220)」と、
博士がかつてもらった学長賞記念の腕時計に刻まれている「284」が友愛数の関係にあるという話は、学の無い家政婦にとっても、わくわくするものだった。
ある日、家政婦に10歳の息子がいることを知った博士は、慌てた。
家政婦が自分のために食事を作っている間、その息子が独りぼっちでいることに。
そして博士は家政婦に、明日から息子を学校が終わったら博士の家に来させて、夕食を一緒に食べることを約束させた。
衣服のメモに、そのことを書き加えて。
次の日、博士は家政婦の息子のことを、賢い知恵が詰まっていそうだと頭をなでながら、「√(ルート)」と呼んだ。
博士の説明する「√」とは、どんな数字でも包み込む、優しい記号。
博士はルートとも、数学を通して触れあった。
ルートは博士に打ち解けて、自分の野球チームの試合の応援に来て欲しいとせがんだ。
快諾した博士は試合当日、家政婦に連れられて野球場に足を運び、ルートとルートの仲間達に盛んに声援を送る。
だが、炎天下での応援がこたえたのか、博士は熱を出してダウン。
やむを得ず家政婦は、泊まり込みで看病をした。
翌朝、目覚めた博士はひどく狼狽して、呟く。「僕の記憶は、80分しかもたない・・・・。」
夜通し看病した家政婦は、博士にとって見知らぬ人。厳しい現実だった。
家政婦紹介所に呼び出された家政婦は、交代を言い渡された。
看病のために泊まり込んだことがルール違反で、未亡人から抗議があったのだ。
病人を放って帰る訳にいかなかったのだが、決定には従わざるを得なかった。
別の場所に派遣された家政婦は、家事をしながらも、博士と過ごした日々を思い出していた。
冷蔵庫の製造番号をいろいろ計算して、素数であることを発見して喜ぶ家政婦。
突然、家政婦に呼び出しの電話が入った。家政婦は大急ぎで、博士の家に向かう。
そこには、博士と未亡人と、ルートがいた・・・・・・・・・・。
|
| 一言 |
博士と家政婦とルートと未亡人。脇役はおろか、主要登場人物にも名前が無い、何だか不思議なお話。
80分しか記憶がもたない博士は、毎日決まった時間にやって来る家政婦を、毎日「新しい家政婦さん」として迎え、同じやりとりを繰り返す。
でも事故に遭う前までの記憶は残っている彼は数学者であり、いつも数字と“語り合っている”。
そんな博士は、数字を潔い、チャーミング等と表現し、数式に美しさがあると言い、彼の話を聞いていると、また博士の話す数学の世界に魅了されていく家政婦を見ていると、
本当に数学が文学性豊かで叙情的なものに思えるから、また不思議です。
博士や、博士の教えを受けたルートの授業を受けていたら、数学が苦手になんかなっていなかったかも・・・・。
(そう思うと、中学生や高校生に見て欲しい映画です。)
一見、障害のために世間離れして、ひょうひょうと暮らしているような博士は、記憶が80分しか持たないという事実を受け止めて、
その上で日々を懸命に生きているのであり、実に壮絶な人生だと考えられます。
そんな博士は、変人のような外見とは異なり極めて常識人のようで、時折強く発する言葉は、「いかん、子供を独りぼっちにしておくなんて」、「子供をいじめてはいかん」、
「子供には祝福が必要だ」等々、素朴にして、金言に満ちています。
キャッチコピーになっている家政婦の台詞「博士と過ごしたひとときは、私とルートにとって、本当に大切な時間でした」のように、
この映画を鑑賞したひとときは、観客にとって、本当に大切な時間でした。
|