「ほたるの星」

公開
2004年3月13日(山口県先行上映)
監督
菅原浩志
原作
宋田 理
脚本
菅原浩志
音楽
中西長谷雄
出演
小沢征悦、山本未来、菅谷梨沙子、中谷ひとみ、余貴美子、森公美子、北見敏之、笹野高史、小柳友貴美、佐藤允、江沢萌子、八名信夫、樹木希林、役所広司、他
備考
 
物語
 3度目の挑戦で教員採用試験に合格した三輪元(はじめ)は、地方都市・上山口市の常徳小学校3年1組の担任として赴任した。
 理想をもって憧れの教職に就いた元だが、元気いっぱいの子供達に振り回され、その保護者達にもたじたじにされ、くたくたになる毎日。 それに、東京から転校して来たという比加里は心を閉ざして、独りぼっちだった。
 ある日、野外授業で訪れた、汚れた川で、元が何気なく、この川に蛍が飛んだらいいなあと呟くと、子供達が口々に蛍を飛ばそうと言い出して、3年1組みんなで蛍を飼育することに決まる。 蛍のことを何も知らない元と子供達は、生態を一から調べ、漁協に蛍の幼虫を譲り受け、水道管屋の田中の助けで校内の洗い場に飼育水槽を設け、蛍の飼育を始めた。
 ある日比加里を家まで送った元は、彼女が母を亡くし、父とも別れて大叔母に引き取られて来たことを知る。 彼自身、母に家を出られ、父に構われず、担任の滝口先生に救われた小学生時代を思い出す、元。
 子供達は蛍の世話に熱心で、汚れた川をきれいにすることにも努力する。 比加里も、「蛍が舞う時に、一番会いたい人を連れてきてくれる」という話を信じて、蛍飼育に打ち込み、いつしかクラスの中にとけ込んでいた。
 教頭は蛍飼育に理解を示さずに中止を求めたが、元は続行を主張して、蛍が飛ばなかったら教師を辞めると言い放ってしまった。
 蛍の幼虫を放流する予定の錦纏川に、河川改修工事の看板が立てられた。 工事が始まったら、蛍が飛ばせない! 子供達は署名を集めて市役所に押しかけ、元も工事の必要性が薄いことを示すデータを持って市役所と掛け合う。水道管屋の田中も応援。 校長が県庁と交渉し、ようやく、蛍が飛ぶ時期まで工事着工を延期する約束を取り付けた。
 育てた蛍の幼虫を、錦纏川に放流した直後、台風が襲来して、増水した川は荒れてしまう。 それでも元と子供達は諦めず、“その時”を待った。
 そして、月日が過ぎ、6月。暗くなる錦纏川で、元と子供達は、蛍が舞うのを待った・・・・・・・・・・
一言
 「ときめきメモリアル」(1997年)でロケを行った時に、山口県の言葉と風景を気に入った菅原監督が、山口県防府市立華浦小学校であった実話を知ったのをきっかけに生まれた映画。 何の変哲もない一地方の地味な物語を、地元の人でなければ分からないのではと思われるほど山口弁を存分に使った台詞と、舞台になり背景になる山口県の風景が、格別な味わいの作品にしています。 (※「上山口市」も「常徳小学校」も架空。)
 元のクラスの子供達は、そのあり余る元気で、担任教師である元を手こずらせます。 しかし、案外素直な反応をしたりして、実はちゃんと「先生」を「先生」と認めているのです。 又、元の(前半の)下宿の農家の老夫婦も、水道管屋の田中も、新米の「先生」である元を、きちんと「先生」と認めています。 大人も子供も「先生」に尊敬の念を持ち、「先生」は子供に対して責任を全うする、この人間関係は、温かいものです。
 この温かい関係こそが、山口県の風景と方言、そしてほたるを飛ばすという物語を通じて、観客に届けたかった主題だと思えます。
 さて、映画の物語の後、恐らく錦纏川は直ちに工事が始まることでしょう。 そうなれば、もう一度蛍を育てて川に流し、飛ばす、ということは出来ません。 けれど、元も子供達も、十分に学んだと思います。 子供達は、蛍飼育に留まらない、環境や「社会」等の、多くの知識を。さらに何よりも、諦めずに努力すれば夢は叶うということを。 元は、子供達に対する、大人としての責任の果たし方を。



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