「百万円と苦虫女」

公開
2008年7月19日
監督
タナダユキ  
脚本
タナダユキ
音楽
桜井映子、平野航
出演
蒼井優、斉藤隆成、矢島健一、キムラ緑子、平岩紙、弓削智久、江口のりこ、モロ諸岡、嶋田久作、 竹財輝之助、斉藤歩、安藤玉恵、宇都秀星、 ピエール瀧、佐々木すみ江、笹野高史、石田太郎、 森山未来、堀部圭亮、惣城早矢、他
備考
  
物語
 佐藤鈴子は、短大を卒業した後、正社員の就職が出来ず、ファミレスでアルバイトしている。 ウェイトレス仲間のリコに持ちかけられたルームシェアリングの話に乗り、実家を出てマンションに移ったが・・・・リコではなく、 リコの別れた恋人との同居になってしまう。 ある日、拾った子猫を勝手に捨てられたことに腹を立てて、彼の荷物を勝手に捨てた鈴子は、器物損壊で刑事告訴され、拘留生活も体験し、前科一犯に・・・・。
 実家に帰った鈴子に、中学受験を控えている弟・拓也は迷惑顔。 鈴子は、「百万円貯まったら出ていく」と家族に宣言して、アルバイトに励む。
 拓也は実は、小学校でいじめに遭っていて、いじめる相手と離れたくて、中学受験にかけているのだった。 「前科者」と嘲笑う元同級生に反撃する鈴子を目撃した拓也は、家を出たら手紙をくれるよう、姉にねだる。
 百万円貯めた鈴子は、海のある町に行った。 アパートを借りて、海の家で「かき氷の才能がある」と誉められながらアルバイトをする生活。 いつも海に来るサーファーの男・ユウキがナンパしてくるが、鈴子にはうっとうしい。 通帳残高が百万円に戻ると、鈴子は町から消えた。
 次に鈴子が着いたのは、山の町。 喫茶店のマスターの紹介で、桃農家の親子の家に住み込みで働くことになる。 老母は「桃をもぐのが上手い」と誉めてくれて、息子の春夫も武骨だが優しい。 だが、“農村にやって来た若い娘”が注目されたところで、静かな生活が一変する。 村長直々に、「桃娘」として村のPRをして欲しいと要請を受けた鈴子は、これを固持する。 村長は納得せず、理由を求められ、遂には村人達の前で「前科者なんです!」と叫んだ鈴子・・・・。
 変わらず優しい親子に見送られて、鈴子は村を出た。
 次に鈴子が着いたのは、東京から特急で1時間の地方都市。 アパートを借りて、ホームセンターの園芸コーナーでアルバイトを始める。 不慣れな仕事ぶりで売り場責任者に責められるが、大学生で先輩アルバイト店員の中島亮平がフォローしてくれる。
 ある日、喫茶店で中島と話していた鈴子は、百万円貯まったら引っ越す生活を“自分探し”かと問われ、 むしろ探したくない、探さなくたってここにいる、と答え、成り行きで「前科者」であることまで喋ってしまう。 意外にも、中島は鈴子を好きだと言う。2人は付き合うようになった。
 幸せな日々も束の間。デート代を鈴子に払わせたり、何かしら理由をつけて金を借りたりして、中島が鈴子に金を使わせるようになる。 中島に別れを告げた日、拓也から届いた手紙を読む鈴子。 そこには、いじめの相手と取っ組み合いをしたら相手が怪我をして、向こうの親が許してくれなかったこと、 中学受験は諦めて、彼らと同じ公立校に行くつもりであることが書かれていた。
 翌朝、鈴子はアパートを引き払い、ホームセンターのアルバイトも辞めて、その街を出ることにした。
 中島が鈴子に金を使わせていたのは、百万円貯めるのを妨害して、引越をさせないためだった。 その鈴子がアルバイトを辞めたと聞いて、中島は駅へと急ぐ。 鈴子は、ドーナツを口に、駅へと歩く・・・・・・・・・・・
一言
 些細なことから転落人生を歩くことにした主人公の、ちょっとだけ前向きになるまでの物語。
 転落して行く過程が、本当にあれよあれよ・・・・で、「百万円貯まったら、住む町を替え続ける」ことにした主人公の、自暴自棄的人生が、 何となく説得力を持った気がします。
 さて、百万円貯まったら(実は貯まらなくても?)誰も自分のことを知らない町に移る生活を送ろうとしても、しばらく住んでいれば人との関わりが出来て、 いろいろと面倒なことが起きることに、主人公は気付きます。 人は、誰も一人で生きることは出来ないし、人間関係を全く無くして一人で生きようすること自体が無理なことだったのです。 ただ、いじめから逃げずに踏みとどまろうとする弟の手紙に衝撃を受けて、自分も逃げるのをやめることにした主人公が、そのために住む町をまた替えることは、 つまり逃げることに他ならないと思うのですが・・・・。 たとえ面倒な状態になっていても、今ある人間関係の中で生きることこそ、弟に負けない、逃げない生き方なのではないでしょうか。
 そう思うと、ラストシーンの“1分後”が気になります。 主人公は、町を出るのを止められるのか、それともそのまま行ってしまうのか。 「あとは見た人が考えてください」式結末は、制作者が物語を完結出来なかっただけではないかと思うことがしばしばあるのですが、 本作の場合は、“1分後”を考えるのも悪くありません。



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