「陰日向に咲く」

公開
2008年1月26日
監督
平川雄一朗
原作
劇団ひとり
脚本
金子ありさ
音楽
澤野弘之
出演
岡田准一、宮崎あおい、伊藤淳史、緒川たまき、西田敏行、三浦友和、西田敏行、塚本高史、平山あや、 本田博太郎、北見敏之、山本竜二、根岸季衣、生田智子、堀部圭亮、池内万作、戸田昌宏、近藤公園、平岩紙、諏訪雅、浜田学、 増本庄一郎、岩田丸、木幡竜、他
備考
  
物語
 バス運転手のシンヤは、パチンコ癖がひどく、借金まみれでブラックリストにも載せられている。 浅草で偶然出会った寿子が、母の初恋の相手を探すのを手伝ったりしたが、電気も止められたアパートに帰れば、取り立て屋が待ち構えている生活。 脅されるままに「オレオレ詐欺」を試みるが、電話の向こうの老女に「健一かい?」と呼ばれ、以後、「健一」として何度も電話することに。 その内に、金が要るという「健一」ことシンヤに、老女は50万円の準備を約束した。 シンヤは、「健一」の後輩として、老女を花火大会に連れて行くことにしたが、待ち合わせ場所に彼女は来ない。 電話をかけると、老女は、病気だが病院に行く金が無いという。 彼女のために金を工面しようとしたシンヤは、次に電話に出た大家から、老女が急死したことを知らされ、そのアパートを訪ねる・・・・。
 弁護士の寿子は、鳥取出身の母・鳴子の、初恋の人を探していた。 35年前に、浅草のストリップ劇場の売れない芸人だった雷太に一目惚れして押しかけて、「ゴールデン雷太・鳴子」というコンビを組んだ鳴子。 その思いを寿子は、母の日記をみつけて知ったのだった。 途中、シンヤに手伝ってもらったが、ゴールデン雷太の消息は、なかなかつかめない。 だが、劇場の元支配人から、雷太と鳴子の別れに関わっていた売れっ子ストリッパー・ジュピターの居場所が分かったと教えられて、鳴子は、その住所を訪ねる・・・・。
 サラリーマンのリュウタロウは、人混みが割れるように開けた歩道橋を駆け下りるホームレスを見て、彼に憧れた。 仕事は長期休暇を取り、妻も息子もいなくなった家を出て、勝手に「モーゼ」と名付けたあのホームレスのいる公園で、ホームレス生活に加わった。 だが、何十年も会っていない父親を捜すプロ野球選手の代理人が公園を訪ね、後日、モーゼは、そのプロ野球選手に連れられて公園を離れた。 台風が接近して、リュウタロウは、モーゼに譲られたテントに入るが、ここは自分のテントだという男に追い出される・・・・。
 ネットカフェで働くゆうすけは、アイドルの武田みやこ(愛称みゃーこ)の大ファン。 25歳のみゃーこは、イベントに集まるのがゆうすけとその仲間の2人のオタクだけという、崖っぷち状態。 そんなみゃーこが、ゴールデンタイムの健康情報番組に出演することになり、ゆうすけ達は大喜びするが、 放送されたみゃーこの出番は、ドロドロ血液のドロ子として、全身タイツで床を這う姿だった・・・・。 ゆうすけはとっさに、店のパソコンを使い、ペンネームを取っ替え引っ替えして番組宛てに「ドロ子」へのファンメールを送信しまくった。 その甲斐あってか、ドロ子こと武田みやことして、みゃーこは突然人気が出る。 ある日、ゆうすけはみゃーこからメールを受信し、彼の生涯一度の「現実の恋」(小学生時代の片思い)の相手・ようこが今のみゃーこであることを知る。 そして、以前とはうってかわって大盛況となったみゃーこのイベントの握手会で、ゆうすけの順番が来る・・・・。
 台風の夜、過去と現在の別々の人生が、交錯する・・・・・・・・・・。
一言
 過去で3人、現在で6人、計9人の、無関係な物語が同時進行で描かれて、散漫な印象を受けたのですが、 連作小説を長編映画にすれば、こういう作り方になるのでしょう。 (そのまま映像化するには、短編作品集にするしかないでしょう。) そして、最後に物語は集約されて行って、一つになった時、なるほど、と、うならされました。 (ゆうすけとみゃーこの物語だけは、例外で、他の物語と直接繋がっていませんが。)  主要登場人物が多い分、それぞれについて細かく描写されておらず、モーゼは本当はいつからホームレスだったのか、というような謎が残りましたが、 全体的には“語り過ぎない”ことでいいと思います。
 切ないのは、シンヤの「オレオレ詐欺」の相手になった、かつてジュピターだった老女。 幼くして子供がいなくなり、それから30年(?)くらいの間、安アパートでどう生活していたのか? そして、分かった上で騙されていた、その気持ち! 現実に振り込め詐欺という、犯罪の餌食になってしまう高齢者の心の一端を垣間見た気がするエピソードでもあると思います。
 取り留めがないように始まって、物語が集約し、それぞれの登場人物に何だかいい結末があり、ラストシーンはちょっと笑わせて終わる〜 尻上がりに良くなって、「終わりよければすべてよし」という感じの映画。 意外な佳作、といったところです。
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