| 公開 |
2006年11月25日 |
| 監督 |
天願大介 |
| 原作 |
乙一 |
| 脚本 |
天願大介 |
| 音楽 |
めいなCo. |
出演 |
田中麗、陳柏霖、宮地真緒、岸辺一徳、佐藤浩市、井川遥、佐野史郎、浪岡一喜、森下能幸、大塚良重、入江若葉、他 |
| 備考 |
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| 物語 |
交通事故で視力を失った本間ミチルは、父と2人で暮らしていた。
だが、父が急死し、ミチルの、住み慣れた家での一人暮らしが始まった。
たまに親友の二葉カズエと一緒に買い物に出かける以外は、家事をこなしたり、寝たり考え事をしたり、家から出ないミチルの生活。
家の中のことなら何でも分かっていて、危険なことは何も無い。
父の保険金で、生活費の心配も無い。
しかし時に、存命中のままにの父の部屋で、父が残した点字の手紙を読んで涙を流す・・・・ミチルは孤独だった。
ある朝。ミチルは、毎日しているようにカーテンを開け、窓を開け、新鮮な空気を取り入れた。
ただその日は、窓の下の駅で電車の急ブレーキの音が鳴り、しばらくして救急車のサイレンが聞こえた。
さらに9時5分、玄関のチャイムが鳴った。
ミチルはドアを開けて「どなたですか?」と尋ねたが、反応が無い。
ミチルはドアを閉めて、定位置の居間のこたつに戻った。
目の見えないミチルの脇をすり抜けて男が1人、家の中に入り込んだことに気付かずに・・・・。
ミチルが音声を聴いているテレビのニュースで、ミチルの家の下の駅で、ホームから突き落とされた男が死んだ、殺人事件があったと報じていた。
容疑者は、被害者・松永トシオと同じ印刷会社に勤める大石アキヒロ。
ミチルの家に侵入した男こそ、その大石アキヒロだった。
アキヒロは、中国人の母を持つ日中ハーフで、アパートに一人暮らし。
職場での人間関係がうまくいかず、いじめに遭い、孤独に過ごしていた。
松永もアキヒロに辛く当たっていて、アキヒロは殺意すら抱いた。
事件があった朝、現場から走って逃げるアキヒロを駅員が目撃していて、彼に容疑がかかったのである。
ミチルの家に忍び込んだアキヒロは、物音を立てず、息を潜め、駅が見える居間の窓の側に座った。
すぐそこにいるアキヒロが見えないミチルと、自分の存在を消すアキヒロの、妙な生活が始まる。
アキヒロ気配を消し、夜ミチルが寝ると台所の食べ物を失敬。
ミチルは淡々と、普通に自分の生活を送るが、何となく「家の中に何かがいる」ことを感じるようになった。
ある日、棚の上の物を取ろうとしたミチルはバランスを崩して倒れ、棚の物が落ちた。
とっさに飛び出して、ミチルの顔に落ちる土鍋をキャッチしたアキヒロ。
ミチルは、物言わぬ誰かに助けられたことを悟って感謝し、その夜から、食事を二人分作る。
クリスマスが近付いた頃、落ちた洗濯物を届けてくれたのがきっかけで知り合った三島ハルミが勤めるイタリアンレストランでカズエと食事をした帰り、
一人で外出する練習をするよう繰り返すカズエの誘いを、ミチルは頑なに断った。
外は危険だが家の中は安全で、外に出なくても一人で生きていける、と。
カズエは、怒って、もう来ないと言い放って帰ってしまった。
翌日。ミチルは白い杖を手に玄関に立ち、やっぱり外に出るのはやめようとしたが、アキヒロが無言で手を引いて連れ出した。
杖を使って歩くミチルは、何度も危ない目に遭うが、少し距離を置いて見守るアキヒロがその度に助けてくれる。
初めて2人は言葉を交わした。
目的地のカズエの家に着いて、ミチルは、上着を着ていないアキヒロに自分のコートを貸して、先に帰るよう言った。
それから、ミチルはカズエと話し合い、仲直りしたのだった。
ミチルの家には帰らなかったアキヒロは、ミチルから借りたコートのポケットに入っていた写真を見て驚く。
その写真は、ミチルとカズエが、ハルミのレストランに行った時に撮ったもの・・・・。
ミチルの家で、カズエとハルミを呼んでクリスマスパーティーをする日。
カズエがクラッカーを買いに行っている間、庭で水やりをしていたミチルに、アキヒロが声をかけた。
コートに入っていた写真に、松永トシオを殺した真犯人が写っていたと・・・・・・・・・・・。
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| 一言 |
主人公の一人は、失明して光を感じられない世界で生きる女。
「一人で生きていける」と口にする彼女は、心の中にも光が無かった。
主人公の一人は、人間関係を築けず、孤立して生きる男。
自分の居場所をみつけられない彼は、心の中に光の差すことが無かった。
〜題名の「暗いところ」とは心の闇で、同じ闇の中で出逢った2人の物語です。
殺人事件あり、職場内いじめあり、と、血生臭い要素がありながら、全体的には、とても穏やかで静かな雰囲気の映画だと思います。
殺人事件が起き、容疑者として報道されているアキヒコがミチルの家に忍び込み、目の見えないミチルはすぐ側に容疑者がいるとは知らずに過ごし、
アキヒコは人を殺せる者ではないと観客に思わせる出来事があり、アキヒコがミチルの家に潜んだ理由が明らかになり、
アキヒコがみつけた真犯人はまさかの人物・・・・と、サスペンス的にも面白い展開ながら、この映画を豊かにしているのは、1シーン1シーンの描写。
田中麗奈演じるミチルはふわふわしたした感じが魅力的なヒロインで、盲目の彼女の日常生活(料理、掃除、等)も、
危険に満ちた外出(自動車も自転車も歩行者も、気配りがない)も、又、アキヒコの潜伏生活(盗み食い、排泄、等)も、
言葉を交わさない2人の交流も、丁寧に描写されていて、好感が持てました。
物語の終わりに、アキヒコは「居場所を探してきたけれど、本当に必要なのは居場所ではなく、自分の存在を認めてくれる“人”だった」と言いますが、
同時にミチルは、自立とは、自分で何でもすることではなく、他人と関係を作っていけることだと気付いていたと思われます。
本当の闇と光を知った2人は、これから先、人と関わって生きようとすることでしょう。
ミチルの目は見えないままだし、アキヒコは失業、それでもラストシーンには希望がありました。
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