「ラストゲーム 最後の早慶戦」

公開
2008年8月23日
監督
神山征二郎
脚本
古田求
音楽
和田薫
出演
渡辺大、柄本佑、柄本明、石坂浩二、藤田まこと、富司純子、山本圭、小高杏奈、和田光司、脇崎智史、原田佳奈、佐々木すみ江、 片山亨、中村俊太、宮川太一郎、三波豊和、ベンガル、浜田学、永井浩介、田島亮、伊藤毅、岩間天嗣、松永毅、池森健一、杉内貴、 安倍新、上原風馬、加藤竜治、桜木涼介、相馬圭祐、小林すすむ、山田百貴、榎本貴、徳井広基、日向丈、西本優、箕浦康子、他
備考
  
物語
 昭和18年(1943年)夏。 東京6大学リーグが春に解散させられて、試合が出来なくなった早稲田大学野球部では、部員達がなおも合宿所に起居して、練習に励んでいた。 戸田順治もその1人。 志願して陸軍軍人になった兄・栄一を、父・栄達は誇りに思う反面、アメリカのスポーツに興じる順治には批判的だった。 早稲田大学自体、軍部からは睨まれる存在だった。
 9月、学生の徴兵猶予が停止された。 20歳以上の学生は、10月25日に本籍地で徴兵検査を受け、12月1日には入営を義務づけられたのである。 早稲田大学野球部顧問の飛田は、部員達に、最後に思い出になることをすることを約束した。
 慶應義塾大学塾長の小泉が、飛田を訪問、学生が出征する前に早慶戦をやりたいと申し入れた。 飛田にとって渡りに船の話だったが・・・・飛田の報告を受けた早稲田大学総長の田中は、猛反対する。 多くの研究者を拘束されて、弾圧を受けている早稲田を守るために、これ以上文部省や軍を刺激することは避けたかったのだ。
 飛田は、田中に繰り返し早慶戦の許可を得るべく交渉したが、田中は頑として動じなかった。 出来るのか出来ないのか・・・・部員達は苛立ち、慶應側も決断の催促を繰り返す。 期限が近付き、慶應側は、早慶戦が実現しない可能性を考えて、徴兵検査に備え、一旦部員を帰省させた。
 「戦争は俺に任せて、お前は野球をしろ」と言って出征した、順治の兄・栄一が戦死した。 戸田家での通夜に訪れた飛田に、野球に対して批判的だった順治の父・栄達が、2人きりになって本音を漏らした。 栄一の遺骨すら帰って来ないのは、日本が負けているからではないか、順治に早慶戦をやらせてやって欲しい、と。
 飛田は、強行策に出た。野球部の責任で早慶戦の申し出を受け入れると、慶應側に回答したのだ。 慶應側は、直ちに帰省した部員達に電報を送る。 そして、口コミで噂は広まり、新聞記事になった時、田中の目に止まった。 飛田を呼び出した田中は、激論の末、飛田の覚悟を受け入れるのだった。 万一事故が起きたら、総長である自分が責任を負う、と。
 10月16日、早稲田の戸塚球場で、観客席を埋める人々が見守る中、早慶戦が始まった。 ずっと練習を続けていた早稲田に対し、部員を帰省させて急遽呼び戻した慶應は練習不足が否めない。 試合は、序盤から早稲田の優勢で進む・・・・・・。
一言
 太平洋戦争中の、野球をすることが、せめてもの最後の一試合をすることが、とてつもなく困難だった実話を基にした映画。 戸田順治を主人公とする家族、そして青春の物語と、飛田を主人公とする最後の早慶戦実現の物語が並行していますが、 飛田を中心とする物語が圧倒的に作品を引っ張っていると感じました。 柄本明が演じる飛田の存在感、飛田と藤田まこと演じる田中総長、そろって頑固者のぶつかり合いが、この映画の大きな見所だと思います。
 悲願の早慶戦が終了した後の、双方応援団のやり取りには、感動させられました。 これも史実だそうで、あの時代の人の高潔な精神を見た気がします。
 この映画は、最後の早慶戦を戦って出征した部員達は、特攻を含め、何人もが帰って来なかったことを語って終わりますが、 「出口のない海」(2006年)が、やはり東京六大学リーグ解散、学生の徴兵猶予停止に始まり、特攻隊に入った明治大学野球部のエースを主人公とする作品で (「出口のない海」はフィクション)、併せて見ると、この時代、そして、それぞれの作品に対する理解が深まるかもしれません。



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