「ポストマン」

公開
2008年3月22日
監督
今井和久
脚本
鴨義信
音楽
中村幸代、森下滋
出演
長嶋一茂、北乃きい、原沙知絵、田山涼成、小川光樹、犬塚弘、谷啓、竹中直人、野際陽子、大塚寧々、菊池隆則、遠藤久美子、 古手川祐子、木梨憲武、渡邉邦門、佐野夏芽、他
備考
  
物語
 海江田龍兵は、千葉県房総町の郵便局員。昇進の話を断ってまで、郵便配達にこだわり続けている。 パソコンを使わず、携帯電話も持たず、バイクを拒否して赤い自転車・バタンコをこいで配達して回る、時代遅れの男だが、 その正確・迅速で誠実な仕事ぶりは、町の人達からも信頼されている。
 龍兵は2年前に妻・泉を亡くして、中学生の娘・あゆみと小学生の息子・鉄平と3人暮らし。 中3のあゆみは、陸上競技で全寮制の私立高校に進学を希望するが、龍兵は家族が揃って暮らすことにこだわって、許さない。
 あゆみは、臨時採用の教員ながら担任代理の塚原奈桜子に相談し、力になってもらおうとするが、自分の人生なのだから自分で何とかするよう言われてしまう。 奈桜子自身、アメリカに留学するのか、このまま教師を続けるのか、決められずにいたのだが・・・・。 あゆみの本心は、母親の思い出がたくさん詰まった家を出たい、ということで、全寮制高校への進学はそのためだった。
 泉の三回忌の法要の席で、龍兵が形見分けを口にした時、母親のことを忘れようとしていると、あゆみが猛反対した。 龍平とあゆみは、激しくぶつかる。 泉の母=あゆみの祖母・木下園子は、あゆみが寝ている間にそっと、大きな箱を置いていった。
 配達に回っている途中、龍兵は、顔なじみの独居老人・三ツ矢輝夫が家の中で倒れているのを発見した。 搬送先の病院で、看護師が、三ツ矢の服のポケットに入っていた手紙を龍兵に手渡した。 それは、三ツ矢が古い友人とやり取りしていた手紙。 〜以前三ツ矢は龍兵に、手紙が届く限りはお互いに元気、途絶えたら“お迎え”が来たということだ、と語っていた。〜 直ちに龍兵は、手紙の宛先、富士山麓の町の羽田薫宅目指して、愛用のバタンコで走り出した。
 その夜は、三者面談のために奈桜子が海江田家を訪ねる日だったが、何の連絡もないまま、龍兵は帰って来なかった。 あゆみは、園子が置いていった箱に気が付いて、ふたを取り、中に入っていた大量の手紙を読んだ。 それは、小学生の時に「木下泉」が宮城県に転校した後、千葉県の龍平との間で、結婚するまで交わし続けた手紙だった。 ずっと泉を思い続け、病気で子供を産めないかもしれないことを承知の上で泉と結婚し、手紙のおかげで泉と繋がっていられたから郵便配達員に感謝し憧れ、 現在の仕事に誇りを持って就いている、父・龍兵の心を、あゆみは理解した。
 その頃、龍兵は、たった1通の手紙を、心待ちにしているであろう人に届けるために、バタンコのペダルをこぎ続けていた。 それは、三ツ矢が助かるための願掛けでもあった・・・・・・・・。
一言
 頑固な程に郵便配達一筋の郵便局員の仕事を軸に、高校進学を控えた娘と、その担任代理で、生徒の進路指導どころか自身の進路に悩む臨時教員を中心にした、房総半島の町を舞台にする家族の物語。
 クライマックスは、1通の手紙を届けるために龍平が、信じられないような距離をバタンコで疾走する一幕で、唖然とするような暴走ぶりは圧巻です。 ただ、父である龍平が三者面談をすっぽかし、仕事一徹な龍平が無断欠勤し、(多分)2日間失踪していたのに、家族も郵便局長以下郵便局の人達も、捜索願を出すことなく大した騒ぎをしていないことに、違和感を覚えました。 龍平の行き先は、途中で修理に寄った自転車屋が連絡して分かったのだとしても、それは翌日の(多分)午後のこと。 カットシーンがあるのかもしれませんが、脚本が大味な気がしました。
 基本的には、離れた老友を繋ぐ手紙、主人公とその妻を繋いでいた手紙、子供が亡き母に宛てた手紙(「郵便屋さんが天国のお母さんに届けている」は、ある意味本当だった!)等、 人と人を繋ぐ手紙を巡る、心温まるエピソードで構成されています。 ただ、主人公が熱血サラリーマンならサラリーマン賛歌になるであろうところ、主人公が熱血郵便局員(郵便配達員)の本作の場合、郵便局の宣伝映画に見えてしまうのは、少々損をしているかもしれません。



学芸員室/映画掛TOPへ戻る