「そのときは彼によろしく」

公開
2007年6月2日
監督
平川雄一郎
原作
市川拓司
脚本
いずみ吉紘、石井薫
音楽
松谷卓
出演
長澤まさみ、山田孝之、塚本高史、黒田凛、深澤嵐、桑代貴明、国中涼子、北川景子、黄川田将也、本多力、和久井映見、小日向文世、他
備考
  
物語
 アクアプランツショップ・トラッシュを営む遠山智史は、水草(アクアプランツ)にしか関心が無いかのようだった。 得意先のパン屋の柴田美咲に好意を寄せられていることにも、気が付かない。
 ある日、剥がし忘れた求人の貼り紙を見て、森川鈴音と名乗る女が店に現れた。 行くところが無いという彼女は、半ば強引にトラッシュの住み込み店員になってしまう。
 その鈴音を見た、アルバイトの夏目や客達は驚く。彼女はトップモデルなのだが、智史は全く知らなかった。 鈴音は智史に、「ダイエットがきつくて」モデルは辞めたと説明する。
 鈴音との共同生活が始まってしばらくして、智史はやっと彼女の正体に気が付いた。 13年前に離ればなれになった幼なじみ、滝川花梨が本名である。
 小学生の頃。転校生だった智史は、滝川花梨と五十嵐祐司、2人の親友が出来た。 3人は、「トラッシュ」という名の犬がいる、湖の畔の廃バスを秘密基地にして、遊んだのだった。 語り合った夢は、祐司は絵描き、智史は水草屋の店長、花梨は絵描きのモデルと水草屋の看板店員。
 祐司は母親と生き別れ、花梨は両親を知らず、施設で暮らしていた。 そんな2人を、智史の両親・悟朗と律子は遠山家に招き、誕生日を祝ってくれたりしたものだった。
 楽しい日々は、智史の引っ越しで終わりを告げる。病弱だった母・律子の治療のために、智史は両親と共に別の街に移ったのだ。 以来、お互いの消息を知らぬまま、13年の月日が流れていた。

 智史と花梨は再会を喜び(花梨は、雑誌に載っていたトラッシュの記事を見て、知った上で来たのだが)、改めて共同生活が続く。
 智史は、花梨を実家に連れて行った。 母・律子は既に亡く、開業医だった父・悟朗も心臓を悪くして医院を閉めて一人暮らし。 その悟朗にとっても花梨とは13年ぶりの再会で、大いに喜んだ。
 かつて、医師として子供時代の花梨を診察したことのある悟朗は、花梨が厄介な病気を持っていたことを知っていた。 智史が席を外した間に、花梨は悟朗に、病気が治っていないこと、一番強い薬も効かなくなったことを告白する。
 祐司の所在が分かった。それは病院の集中治療室・・・・交通事故に遭い、昏睡状態だった。
 連絡をくれたのは、祐司が働いている画材店の娘で恋人の葛城桃香。 鈴音が見たのと同じ雑誌の記事を目にした祐司から智史のことを聞いていたという桃香は、祐司の近況を語った。
 鈴音は、祐司の側についているために、トラッシュを出ると言った。 真実を知らぬまま、鈴音と別れた智史。
 悟朗に鈴音の病気のことを聞かされた智史は、彼女を探した。 やっと、思い出の秘密基地でみつけた鈴音は、深い眠りにつこうとしていた・・・・。
 鈴音は、眠ると目が覚めなくなる病気だった。 まどろむ程度にしか睡眠をとることは許されなかったのだが、もはや薬で制御出来ないところまできたのだった。
 鈴音が眠りのつくのと入れ違うように、祐司が意識を取り戻した。 祐司の病室に置いてあったスケッチブックには、鈴音の智史に対する思いが綴られていた。
 病院で眠り続ける鈴音を、智史は見舞い続けた。 月日が流れ、祐司は桃香と結婚し、子供も出来た。又、祐司は、念願の個展を開くことも出来た。 5年後には、悟朗が亡くなった。 智史は、トラッシュを経営する傍ら、水草を携えて、病室の鈴音を訪ね続けた・・・・・・・・・・。
一言
 作品の出来が悪くない割に、満足度は低いものでした。それは、「見たことある」感が強かったせいです。
 原作は、ヒロインが若くして死ぬことになるの知りながらその運命を選択した映画「いま、会いにいきます」や、 やはりヒロインが“恋したら死んじゃう病気”を恐れずに運命を受け入れた映画「ただ、君を愛してる」と同じ、市川拓司。 鈴音役は、映画「世界の中心で、愛をさけぶ」で白血病のヒロインを演じた長澤まさみ。 智史役は、連続ドラマ版「世界の中心で、愛をさけぶ」で白血病のヒロインの恋人を、 連続ドラマ版「タイヨウのうた」でXP(色素性乾皮症)のヒロインの恋人を演じた山田孝之。 祐司役は、映画「タイヨウのうた」でXPのヒロインの恋人を演じた塚本高史。 主題歌を歌うのは、映画「世界の中心で、愛をさけぶ」に出演し、連続ドラマ版「世界の中心で、愛をさけぶ」の主題歌を歌った柴咲コウ。
 〜実に、そうそうたる顔ぶれです。 ですが、それがために、「そのときは彼によろしく」自体は初めて見ても、見たことがあるように錯覚してしまったのです。
 ヒロインが病気を抱えている設定と、ヒロインの思いを相手は、彼女の残した物で知るという展開は、 「世界の中心で、愛をさけぶ」でも「いま、会いにいきます」でも「ただ、君を愛してる」でも使われていました。 いずれも名作でしたが、原作者や出演者が重なり、悲劇性の設定と展開が重なる本作では、新鮮さは全く無いし、 このところ好調の日本映画は早くもマンネリに陥ったかとさえ思わされました。
 「そのときは、彼によろしく」の中で、題名のままのの言い回しが2回出て来ますが、1回目は「またこういう方法か」と思いました。 でも2回目は意表を突かれました。ただそれも、最後に一矢報いた程度のものでした。
 これだけの人材を集めながら、これだけの映画しか作ることが出来なかったのか、というのが見終えた後の感想です。 もっとも、最初に書いた通り「見たことある」感が強かったためであり、「世界の中心で、愛をさけぶ」も「いま、会いに行きます」も 「ただ、君を愛してる」も無かったら、正当に、それなりに高い評価をしたでしょう。
 小日向文世演じる、智史の父・悟朗が、意外に最後まで本筋に絡んできたのが、“類似作品”との大きな違いといえば違いです。 (それと、結末は悲劇的ではないことも。)



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