「スパイダーマン3」

公開
2007年5月1日
監督
サム・ライミ
原作
マーブルコミック スタン・リー、スティーブ・ディトゥコ
脚本
サム・ライミ、アイヴィン・ライミ、アルヴィン・サージェント
音楽
クリストファー・ヤング
出演
トビー・マグワイア、キルスティン・ダンスト、ジェームズ・フランコ、トーマス・ヘイデン・チャーチ、 トファー・グレイス、ブライス・ダラス・ハワード、ジェームズ・クロムウェル、 ローズマリー・ハリス、J.K.シモンズ、他
備考
  
物語
 スパイダーマンとしての活躍がニューヨーク市民に受け入れられ、大学での勉強も順調、恋人メリー・ジェーン(MJ)との交際も順風満帆のピーター・パーカー。 MJにプロポーズする決心を叔母メイ・パーカーに打ち明けて、大切な指輪を譲り受けた夜、ピーターの生活は暗転した。 スパイダーマンに父ノーマン・オズボーンを殺されたと思いこむハリーが、ニュー・ゴブリンとなって、スパイダーマンの正体と知ったピーターに襲いかかったのである。 ピーターは辛くもその攻撃をかわし、頭を打って意識を失ったハリーを病院へ。 意識を取り戻したハリーは、短期的記憶障害を起こし、ノーマンが死ぬより前、ピーターとまだ親友だった頃の彼に戻っていた。
 次いでピーターは、メイと共に呼び出された警察で、驚くべき事実を知らされた。 メイの夫ベンを殺した真犯人は、服役囚のフリント・マルコであることが判明したが、そのマルコは脱獄して逃亡中である、と。 追い詰められて転落死した強盗以外に真犯人がいた・・・・ピーターは、激しい憎悪に襲われる。
 マルコは、逃亡中に紛れ込んだ研究施設で巻き込まれた実験の影響で、怪人サンドマンになり、現金輸送車を襲い、ニューヨーク市民を脅かした。 サンドマンと対決したスパイダーマンは、仇敵であることを知るが、全身を砂状化するサンドマンに、攻撃は全く通じなかった。
 MJは、ブロードウェーの舞台に立つまでになっていたが、厳しい批評が新聞各紙に載るや降板させられた。 落ち込む彼女をピーターは慰めるが、得意の絶頂の彼にはMJの失意が十分理解出来ていなかった。
 ニューヨーク市がスパイダーマンに名誉市民の称号を与える式典で、糸で降下して登場したスパイダーマンは、観衆のはやしたてるままに、 「助けられた人」代表のグウェン・ステーシー〜ピーターの学友でもある〜にキスさせた。 それを見たMJは、打ちのめされるのだが、ピーターはそのことにも気が付かない・・・・。 レストランでプロポーズする計画も、MJの怒りで、失敗に終わった。
 心の乱れたピーターに、黒色の液状生命体が取り付いた。 宿主の特性を増幅する性質を持つその寄生生命体により、ピーターは全身黒色のブラック・スパイダーマンとなる。 より強大な力を発揮するブラック・スパイダーマンは、サンドマンと再戦し、弱点と知った水を利用して、サンドマンを撃破した。 得意のピーターは、マルコがスパイダーマンに殺されたと、メイに報告するが、メイは甥ピーターに、スパイダーマンがそんなことをする筈がないし、 ピーターやメイが復讐心を持つことなどベンは望んでいないと諭すのだった。 復讐心は、その人の心を蝕んでしまう、と。
 ハリーが記憶を取り戻した。 彼はスパイダーマンへの復讐を遂げるため、MJを脅してピーターに別れを告げさせた。 ピーターとハリーは、戦う。 今回は憎悪に支配されたピーターが、容赦なく攻め立て、ハリーに重傷を負わせた。
 寄生生命体に取り付かれたピーターの暴走は止まらない。 性格もすっかり変わってしまい、グウェンを伴ってMJがアルバイトをするジャズ・カフェで大暴れ。 MJと、さらに心が遠離ってしまう・・・・。
 強大な力と引き換えに、心が闇に蝕まれて行くことを悟ったピーターは、教会の鐘の側で、ブラック・スパイダーマンのスーツを引き剥がした。 教会に来て、その様子を見ていたエディ・ブロックに、液状に戻った寄生生命体が取り付いた。 エディは、ピーターに写真の偽造を暴露されてカメラマンの仕事を失い、彼を憎んでいた。 スパイダーマンの能力をコピーした寄生生命体に飲み込まれたエディは、怪物ヴェノムとなる。
 ヴェノムは、復活したサンドマンに、スパイダーマン倒すために共闘を申し入れた。 そして、MJを人質に取り、スパイダーマンをおびき寄せる策に出た。
 ピーター=スパイダーマンは、2体の強大な敵からMJを救い出すために、ハリーに協力を願う。 だがハリーは、父の仇にして自らに傷を負わせた者の頼みを、断った。 ピーターが去った後、執事が、ノーマンの最期について知っていることを打ち明けるのだが・・・・。
 80階建てのビルの高さに張られたヴェノムのネットに、拉致されたタクシーごと乗せられたMJ。 待ち受けるサンドマンとヴェノム。 それをニューヨーク市民が見守る中、スパイダーマンは現れて、たった1人で、立ち向かう。 しかしやはり、サンドマンとヴェノムの連携攻撃に、スパイダーマンは苦戦を続ける・・・・・・・・・・。
一言
 (今のところの?)シリーズ完結編。 スパイダーマンと戦う敵を3体も登場させながら、139分の上映時間にうまく収めていると思います。
 単に倒されるべき悪役としては「敵」が登場せず、主人公がただ「敵」を叩きのめすのでもないのがこのシリーズの深みで、「3」でもこの特徴は健在。
 最初に登場するのが、いきなりピーターを襲撃したニュー・ゴブリンことハリー・オズボーン。 彼は「1」からずっと登場しているので、何故そうなってしまたのか、改めては説明不要。 記憶を失っていた間はピーターの無二の親友に戻ったように、「父の仇」(実は誤解)スパイダーマンに対する復讐心さえなければ、ハリーは善人。 クライマックスにおける彼の行動も末路も予想出来たものですが、納得もまた出来るものでした。
 次に登場したのが、設定上は「1」の事件に関与しているものの初登場の、サンドマンことフリント・マルコ。 強盗の片棒を担いだのは、娘の病気を治すのに金が必要だったから。 相棒がぶつかった拍子に引き金を引いてしまって人(ベン・パーカー)が死んだが、殺意はなかった。 脱獄したのも、娘の治療費を工面したくてのこと。 不死身の怪人と化してからもなお現金輸送車を襲ったのも、娘の治療費のため。 スパイダーマンと戦ったのは、目的の邪魔だったから。 〜彼は実は、目的のための手段を間違えてしまったために転落した、悲劇の人だったと思えます。 最期ははっきりしなかったけれど・・・・過ちに目を覚まして、死んでも死にきれなかった執着から自らを解放して消滅、というのがこのシリーズにおけるこういう人物らしい決着だと思うのですが。
 最後に登場したのが、ピーター=スパイダーマンから引き剥がされた黒色生命体がエディ・ブロックに取り付いて誕生した怪物、ヴェノム。 エディがピーター=スパイダーマンに対して憎悪を抱く過程は、最小限以上には描写されているのですが、他の「敵」に比べると丁寧さを欠き、この役自体の扱いが軽いように感じました。 多くの要素を詰め込んだ弊害が、ここに出てしまったようです。 この憎悪の権化のような怪物との対決でも、スパイダーマンは、エディを救おうとするのですが・・・・。 最後には、ヴェノム(というよりは寄生生命体)の意外な弱点が明らかになりましたが、エディ自身の弱点は、憎悪に飲まれ、強大な力に溺れた心でした。
 これら「敵」と戦うスパイダーマンは、今回は、自らの心とも戦いました。 「1」から通して、スパイダーマン(ピーター)が殺意を剥き出しにしたのは、「1」で叔父ベンを殺した(と思いこんでた)強盗を追い詰めた時を除けば、 今作でブラック・スパイダーマンとなって、叔父の仇サンドマン(マルコ)、MJとの仲を壊したハリーと戦った時だけ。 三部作の完結編は、多くの「敵」と戦いながら、自分自身の、闇に飲み込まれそうな心と戦うスパイダーマンの物語で、彼は、もっとも勝たなければならない戦いに勝利を収めたといえるでしょう。 超人的な能力も、健全な精神と共にあってこそのヒーローです。
 「1」で大いなる力に伴う大いなる責任を負う決意をし、「2」で才能(能力)を人類のために使わなければならないことを学び、「3」でより強大な力を生む憎しみは自らを蝕んでしまうことを知った、 ピーター・パーカー=スパイダーマンの活躍は、これからも続くことでしょう。 そう期待させられたことで、(ラストシーンにそのわくわく感は無かったものの)今作は三部作の完結編として、満足し、納得出来るものでした。
 「4」の噂もありますが、3作続いたキャストによるシリーズとしてはひとまず幕を下ろすのもやむを得ないでしょう。 (さらに続けるには、ピーターを教え諭すメイ叔母さんを演じるローズマリー・ハリスが、1927年生まれの年齢的に・・・・。) 寂しいことですが。
 ところで、「スパイダーマン」三部作を通じて、心を暗黒に支配させれば、強大な力を得られる代わりに、抑制がきかなくなって、かえって破滅に至ることが語られている訳ですが、 これは、「スターウォーズ」六部作と共通する教訓です。 いずれも大ヒットして、多くの人々が見ているのに、現実の世界において、“暗黒面”に墜ちる人のなんと多いことか・・・・。 教訓に満ちた良心的娯楽大作映画は、まだまだ使命を終えることが出来ません。 「スパイダーマン」に続く良作の登場を、期待します。



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