「夜のピクニック」

公開
2006年9月30日
監督
長澤雅彦
原作
恩田陸
脚本
三澤慶子、長澤雅彦 
音楽
REMEDIOS
出演
多部美華子、石田卓也、郭智博、西原亜季、貫地谷しほり、松田まどか、高部あい、近野成美、池松壮亮、加藤ローサ、 柄本佑、嶋田久作、田山涼成、南果歩、他
備考
  
物語
 全校生徒1000人が24時間で80kmを歩く、第56回北高鍛錬歩行祭が始まった。 3年7組の友達・梶谷千秋や後藤梨香達と歩く甲田貴子は、1つの謎と1つの秘密を抱えて参加していた。
 1つの謎とは、今はニューヨークに住む親友・榊杏奈から届いた葉書。 自分も一緒に歩いている、去年“おまじない”をかけておいたから、悩みが解決する、という内容は、もう一人の親友・3組の遊佐美和子にも分からない。
 1つの秘密とは、誰にも言えない秘密の賭け。それは、同級生の西脇融に話しかけること。 数年前に亡くなった融の父の、不倫相手が産んだ子が貴子〜つまり、貴子と融は異母兄妹であり、このことを貴子は親友にも話していない。 そして、高校生活3年間、互いにずっと避けてきた融に、歩行祭という特別な時に話しかけられなかったら一度も言葉を交わさないままになってしまうだろう ・・・・だから、この歩行祭の間に融に話しかける、という秘密の賭けをしていた。
 友達は、勘違いをしていた。 貴子は融のことを気にし、融は知らず知らずに貴子を目で追っているものだから、貴子の友達は貴子が融を、融の友達は融が貴子を好きなのだと思い、 それぞれ2人をくっつけようとしていた。これを、それぞれ迷惑がる、貴子と融。
 街を歩き、川土手を歩き、21km地点の昼食。 海辺を歩き、夕日が照らす田園地帯を歩き、43km地点の夕食。 時にきゃあきゃあと騒ぎ、時に思い出話をし、時に梨香が即興の一人芝居をして見せ、また杏奈の弟・順弥が姉の片思いの相手を探しに乱入したりしながら、時間は進んで行く。 勘違いしている周囲が機会を作ってくれる(?)のに、貴子は融に話しかけられない。
 夜も更けて、疲労がつのり、参加者達は口数が減っていた。 ところが昼間はリタイア寸前だったのに、夜になると異常に元気な男・高見光一が、日付が変わったのを確認して、缶コーヒーを級友達に配る。 その日は、融の誕生日だったのだ。 光一がみんなをけしかけて乾杯して、一瞬、貴子と融が二人きりになった。
「誕生日、おめでとう。」
「ありがとう。」
・・・・やっと、一言だけ、言葉を交わせた。
 60km地点で、2時間の仮眠。 貴子は、杏奈の葉書を見ながら“謎”を考える。 順弥は、姉・杏奈の片思いの相手は、杏奈の友達の兄弟らしいと言っていた。 美和子には兄弟はいない。 夢現で、順弥が変なことを言っていたと呟いた貴子は、美和子が本当のことだと答えるのを聞いた・・・・。
 仮眠が終了し、残り20kmの、自由歩行が始まった。 ずっと団体歩行で来たが、ここからゴールまでは、歩いても走っても自由なのである。 まだ暗い道を、健脚自慢の生徒は猛ダッシュで駆け出し、一方でゆっくり歩き始める者もいる。 貴子は、美和子と一緒に走り始めたが、途中で脚が止まってしまい、歩いて行くことに。
 明るくなって行く田園地帯を歩きながら、美和子は、前年に杏奈と一緒に貴子の家に遊びに行った時、貴子の母親から“事実“を聞かされていたことを打ち明けた。 そして2人は、ずっと前を走っていた筈の融が、親友の戸田忍と一緒に道端に座っているのをみつけた。 融が足首をひねってしまったのだ。 美和子の提案で、融の鞄を代わる代わる持って歩くことになった。
 ゆっくり歩く貴子、美和子、融、忍の4人のところに、また順弥が現れた。 そして、順弥の発言に対する反応で、貴子と融の“秘密”が、忍と順弥にも分かった。 順弥は、“微妙な空気”に、すぐに立ち去ってしまう・・・・。
 街に戻ってきた。 恋多き小悪魔・内堀亮子が融を独り占めしようとするが、まだ“勘違い”している光一が乱入して融を“救出”。 いつの間にか、朝の街で、貴子と融は並んで歩いていた・・・・・・・・・・。
一言
 茨城県立水戸第一高校で実際に行われている「歩く会」をモデルにした、鍛錬歩行祭の、朝の登校風景で始まり、ゴールで終わる、 ほぼ24時間を2時間に凝縮した本作は、ドキュメンタリー的フィクション。 貴子の“賭け”が主な筋とはいえ、ただ歩き続けるのを撮っては単調と考えたのか、展開の少ない前半を中心に凝った想像や幻想(?)シーンが時々挿入されていますが、ちょっと演出過剰気味。 それでも、亮子が融に迫るシーン(「地獄の黙示録」のテーマに、爆撃シーン挿入)は思いっきり突き抜けて、爆笑ものでした。
 それにしても、24時間歩き続ける歩行祭は、「奇祭」と呼べるものでしょう。 劇中で、「何のために歩くの?」と言う者があれば、「みんなで夜歩く、ただそれだけなのに、どうしてこんなに特別なんだろう」と言う者もあり、 「歩行祭のどこが面白いのか分からない」と言う者があれば、「歩いてみなければ分からない」と言う者もいる。 文化祭や体育祭のように、日常的学校生活と少し違う日だから、非日常的な出来事に遭遇もするし、非日常的感覚が普段言えないことを言わせたり、 普段出来ないことをさせたりしてくれる、高校生にとっては特別な日であることに違いありません。 (例えば、貴子は異母兄妹・融に話しかけるという賭けをし、光一は昼に言えなかった本当の進路希望を教師に打ち明けている。)
 でも、それだけのためにこの奇祭が行われるのでしょうか。 辛くても苦しくても歩き続けることは、辛くても苦しくても生き続けること、つまり80kmの道のりは80年の人生の縮図で、 歩くことは生きることである、というのは考え過ぎでしょうか? そして、ゴールに到達した時、側に友達がいたことに改めて気が付いた主人公達を見ていると、 一人では出来ないことが、仲間と一緒にやることで成し遂げられることを学んだように思えたのです。
 平均年齢の若い出演者は、演技も全体的に“若い”と感じられるのですが、本作では高校生達の瑞々しさがスクリーンに満ちて、良かったと思います。



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