「ゼロの焦点」

公開
2009年11月14日
監督
犬道一心
原作
松本清張
脚本
犬道一心、
音楽
上野耕路
出演
広末涼子、中谷美紀、木村多江、西島秀俊、鹿賀丈史、黒田福美、杉本哲太、市毛良枝、野間口徹、崎本大海、本多博太郎、他
備考
  
物語
 昭和32年、禎子は鵜原憲一と見合い結婚した。 憲一は東洋第一広告の金沢営業所に勤務していて、禎子との東京の新居と行ったり来たりの新婚生活だったが、東京本社への異動が決まり、 12月1日、禎子に見送られて、引継ぎのため最後の金沢に向かった。 そして憲一は、約束の12月8日を過ぎても帰って来ず、行方が分からなくなる。
 いてもたってもいられなくなった禎子は、初めて、金沢を訪れた。 金沢営業所長・青木と、憲一の後輩・本多に迎えられた金沢で、いきなり面会させられた水死体は別人であったものの、 憲一が下宿を1年半も前に引き払っていて、今までどこに暮らして金沢営業所に勤めていたのか、青木達も首をかしげる有様。 手がかりを求めて、禎子は、憲一の得意先で公私ともに懇意だったという、耐火煉瓦会社の社長・室田儀作や、その妻で、 初の女性市長を目指す候補者を陰から支援している佐知子と面会したが、何もつかめない。
 憲一の兄・宗太郎が、京都出張の帰路、金沢に回って禎子に会い、憲一をみつけると言って分かれて・・・・青酸カリ入りウイスキーで殺された。 義兄の葬儀のため、禎子は一旦東京に戻る。 本多に、気になった人物=室田の会社の受付にいた田沼久子について調べることを依頼して。
 本多は聞き込みにより、久子の謎めいたところを知るが、禎子に電話で情報を伝えた日の夜、久子に会いに行って、刺殺された。 久子は指名手配される。
 再び金沢をに赴いた禎子は、自らの足で調査して、自分の知らない憲一の真実を求める。 ついに、憲一は田沼久子の家に偽名で暮らし、偽名で自殺したらしいことを知って、東京に引き揚げた。
 東京に帰った禎子は、憲一が一時期働いていた立川警察署時代の同僚を訪ねる。 そこで禎子は、前日に室田が来ていたことと、かつて田沼久子がねぐらにしていた場所を教えてもらい、 その場所に行って会った女性に見せられた写真に思いがけない人物が写っていることに、驚く。
 禎子は、金沢行きの汽車に飛び乗った。 憲一を捜す中で知った断片、出会った人〜バラバラの点が繋がり、禎子の頭の中で、真相が構築されて行く。 その頃、金沢では、佐知子が久子を乗せて車を走らせていたのだが・・・・・・・・・・。
一言
 新婚の夫が失踪し、その生死も分からぬまま、妻が金沢で手がかりを探す間に、周辺の人物が連続して殺害され・・・・と続く前半部。 夫が偽名で自殺したらしいことを知った妻が東京に帰るところから、事の真相が明らかになって行く後半部。 全編重厚な見応えの、間違いなくミステリーものですが、重厚さを感じたのは、むしろミステリー以外の部分です。
 事件の核心にいた男女は、いずれも、戦争を生き延び、戦後の混乱期を絶望の中で生き抜いて、戦後10年を経た“今”、 明るい未来を夢見て生きようとしていた〜その姿に、引き付けられました。 あの時代設定だからこそ成立する、見事な人間物語です。
 原作は未読ですが、脚本の良さを確信出来、又、監督の演出手腕と、出演者の演技の力が、スクリーンから遺憾なく伝わって来ました。 特に、主要3女優の内、木村多江は“十八番”の薄幸の女ぶりが見事。 又、中谷美紀は、表の顔も裏の顔も、壊れる姿も、恐ろしいほどの迫力でした。



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