平成18年11月 選句結果
得点 | 兼題 「秋刀魚」 | 作者 | 戴いた人 | |||||
3 | 戦なき世を生き継ぎて秋刀魚焼く | あきこ | ゆき | 小自良 | 静歩 | |||
3 | 海の色纏ひて秋刀魚競られゆく | 夕花 | 晶子 | 暖流 | あきこ | |||
3 | とれとれの秋刀魚の刺身漁の宿 | 瓢六 | 春雪 | 零風 | いくこ | |||
3 | 安宿の秋刀魚しみじみほろ苦し | 暖流 | まさき | だいご | 門名無 | |||
2 | 陰膳の秋刀魚たちまち冷えにけり | 桜貝 | 夕花 | 和泉 | ||||
2 | 角皿に尻尾はみ出て初秋刀魚 | 桜桃 | 朱夏 | 紫 | ||||
2 | 家族の数秋刀魚並んだ頃ありし | 紫 | CGE | 桜桃 | ||||
2 | 子の住むはあの山あたり秋刀魚焼く | ゆき | ウクレレ | 霜月 | ||||
2 | 味噌汁と秋刀魚好まぬひとと住む | もも | しおみ | 緑茶 | ||||
1 | 頑なに秋刀魚を炭で焼いてをり | 霜月 | もも | |||||
1 | 気兼ねなく単身赴任秋刀魚焼く | 静歩 | 桜貝 | |||||
1 | 秋刀魚焼く匂いに追われる帰り道 | 緑茶 | 瓢六 | |||||
1 | 枕頭に秋刀魚うかべて脳ひねる | だいご | ちあき | |||||
得点 | 雑詠 | 作者 | 戴いた人 | |||||
6 | 講堂の硝子百枚秋光る | あきこ | CGE | 小自良 | だいご | 夕花 | 桜桃 | |
紫 | ||||||||
6 | 長き夜や妻とは違ふ音を立て | 春雪 | 暖流 | あきこ | 緑茶 | 夕花 | 霜月 | |
桜桃 | ||||||||
5 | 点滴の取れて銀杏の散る窓辺 | 桜貝 | CGE | 零風 | 霜月 | 静歩 | 紫 | |
4 | 寄る辺なき孤独添ひ来る秋の夜 | 夕花 | 瓢六 | いくこ | 桜貝 | 門名無 | ||
3 | 階段のぐうちょきぱあの柚子とんとん | まさき | ウクレレ | しおみ | もも | |||
3 | 黄落や固く閉ざせし勅使門 | 暖流 | 春雪 | 朱夏 | いくこ | |||
3 | 大根葉歯に詰め出てくる寺の僧 | 紫 | しおみ | 小自良 | 門名無 | |||
2 | 小春日の手熨斗ですます洗いもの | ゆき | 暖流 | あきこ | ||||
2 | 焚き火爆ぜ輪の広がりし風と声 | ゆき | まさき | 春雪 | ||||
2 | 余白無き暦に記す冬支度 | 桜貝 | ゆき | 静歩 | ||||
1 | 秋受勲吾が胸に有り桐葉章 | 零風 | 和泉 | |||||
1 | 奥入瀬の奔流白し櫨紅葉 | 暖流 | ちあき | |||||
1 | キャンパスの光となりて銀杏散る | あきこ | だいご | |||||
1 | 唇に覚え聞かせる秋の風 | だいご | まさき | |||||
1 | 新蕎麦も展覧会も長き列 | 門名無 | もも | |||||
1 | 書を読めと學べと鵙の日和かな | 夕花 | 朱夏 | |||||
1 | つくばひの冬の干天神の呑む | 晶子 | ちあき | |||||
1 | 長き夜を共に語れど手も触れず | だいご | 和泉 | |||||
1 | 庭の隅落ち葉の布団猫眠る | ちあき | 桜貝 | |||||
1 | 人参の赤きサラダや喪服着て | 晶子 | 緑茶 | |||||
1 | 後の月筏をぬふて渡りゆく | 霜月 | 晶子 | |||||
1 | 母となる嫁母が連れ地蔵盆 | 静歩 | ウクレレ | |||||
1 | 火男の素顔が見たい里祭り | 静歩 | ゆき | |||||
1 | ひと言がだだに悲しと秋の母 | もも | 晶子 | |||||
1 | 民宿の膳は岩魚に紅葉添え | 桜桃 | 零風 | |||||
私の選んだ一句 | ||||||||
戦なき世を生き継ぎて秋刀魚焼く | あきこ | 「中七が心に沁みました、しみじみと平和な世を願いながら秋刀魚をやいてらっしゃる作者に 乾杯!です」(ゆき) 「同感です。」(小自良) |
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海の色纏ひて秋刀魚競られゆく | 夕花 | 「表現が巧みなのでこれを戴きました。新鮮なさまが見えるようです。」(晶子) 「今年は秋刀魚が豊漁で我が家の食卓も賑わいました、海の色をまとっているとは実感です 競りの秋刀魚の箱は海の色一色でしょうね。」(あきこ) |
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とれとれの秋刀魚の刺身漁の宿 | 瓢六 | 「民宿でしょうか。刺身を詠んだのはこの句だけ。とれとれと刺身が句に勢いを付与したか。」(春雪) | ||||||
陰膳の秋刀魚たちまち冷えにけり | 桜貝 | 「亡くなった方がお好きだったのでしょう、また秋刀魚の季節ですよ、とお供えしてみても、冷めてしまう、寂しい句ですが、ひと味違う視点の秋刀魚の句に出会えました。」(夕花) 「陰膳と言うからには居るべき方が今は何かの都合で共に食事をすることが出来ないのですね。旅行や出張ならいまどき陰膳はしないでしょう。深い事情があってのことでしょうか。」(和泉) |
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角皿に尻尾はみ出て初秋刀魚 | 桜桃 | 「いくらはみだしてもやっぱり一匹丸まま出しますね、すらりとしてこそ秋刀魚!?」(朱夏) |
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味噌汁と秋刀魚好まぬひとと住む | もも | 「秋刀魚は、頭と尾でふたつに分けて、自分は頭のほう二つです。絶対、こっちが美味い。」(しおみ) 「パターンは、違っても、同じような思いをすることが多々あって、とても共感を覚えました。お互い様なのにーですね。」(緑茶) |
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枕頭に秋刀魚うかべて脳ひねる | だいご | 「愉快な感じです」(ちあき) |
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講堂の硝子百枚秋光る | あきこ | 「広い校庭が見えますね。」 小自良 「広い講堂の百枚ものガラス窓から光が注ぎ込んだら明るくて温かいでしょうね。 「秋光る」が効果的に使われています。」(夕花 ) |
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長き夜や妻とは違ふ音を立て | 春雪 | 「なんだか不思議な俳句です。作者は秋の夜を夫人と二人だけで過ごしているのでしょう。語り合うでもなく、一緒に音楽を聴くでもなく、それぞれに違うことをしながら、長い夜を穏やかに過ごしている。そんな情景を視覚ではなく、聴覚で表現しているのです。しかも「音」という味も素っ気もない一語で。人はなにかをするときに必ず音を立てます。読書する音。酒を飲む音。まどろむ音。水をつかう音。読み手が想像で補うしかない「音」によって、作者は夫婦の静かな関係と秋の夜の深い静かさを造作なく表現しきっているのです。なんだか不思議な俳句です。」(暖流) 「一緒にいてもそれぞれが違うことをしている、でも、そばにお互いの気配を感じる安心感。それを上手に詠まれたほのぼのと優しい句です。」(夕花) |
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点滴の取れて銀杏の散る窓辺 | 桜貝 | 「わが身も同じ思いをした時期あり一ヶ月もしていた点滴の針を外してもらって、6階の病室から都会の渋滞した車を見下ろした日を思い出す一句に出会いました。」(紫) | ||||||
階段のぐうちょきぱあの柚子とんとん | まさき | 「Skype で孫とじゃんけんしています。ああ そんな時代。」(しおみ) | ||||||
黄落や固く閉ざせし勅使門 | 暖流 | 「京都御所?叙景句?観念句?いい句です。」(春雪) 「歴史と渋い油絵の世界!」(朱夏) 「何時か行った醍醐寺の堅く閉じた勅使門、思いだされました。秀吉の没後幾度か開かれたのでしょうか。黄落や・・・が胸を打ちました。」(いくこ) |
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大根葉歯に詰め出てくる寺の僧 | 紫 | 「菜飯かオヒタシか、炊事当番の手抜きか、鋭い観察力なのか、いろいろ追求できて面白い句です。」(しおみ) 「ユウモラスさを買いました。 これは何かのまじない?それとも付いてきただけ?」(小自良) |
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焚き火爆ぜ輪の広がりし風と声 | ゆき | 「幼時の思い出の句か。優しさがいい。」(春雪) | ||||||
余白無き暦に記す冬支度 | 桜貝 | 「もう師走、暦を眺めながら冬支度をしなければ、と、作者は月日の経つのが早過ぎると感じてらっしゃるでしょうね」(ゆき) | ||||||
秋受勲吾が胸に有り桐葉章 | 零風 | 「桐の名前のついた勲章を実際に叙勲されたのでしょうか。桐の葉が胸に落ちて あたかも勲章をつけたように装ったと解釈すべきでしょうか。567のおなかまで叙勲された方も居られますから前者?」(和泉) | ||||||
唇に覚え聞かせる秋の風 | だいご | 「暮れ行く秋の冷ややかな風を、そっと唇に感じさせる。繊細な感覚が伝わってきます。」(まさき) | ||||||
書を読めと學べと鵙の日和かな | 夕花 | 「ほのぼのとしたユーモアが感じられて・・・」(朱夏) | ||||||
長き夜を共に語れど手も触れず | だいご | 「かつての歌人の「やわはだの 熱き血潮に・・・」のように解釈すべきでしょうか。それとも 夫婦も○○婚式ともなれば・・・イヤこれでは寂しい。」(和泉) | ||||||
人参の赤きサラダや喪服着て | 晶子 | 「赤と黒が頭の中でパッと浮かんで選んでしまい、ご不幸の場面なのに・・・・。 とても鮮やかな絵で、いろんなことが思い出されました。」(緑茶) | ||||||
後の月筏をぬふて渡りゆく | 霜月 | 「筏が沢山合った訳ではないでしょう。しかし、筏が後の月にぴったり合って風情を感じます。」(晶子) | ||||||
火男の素顔が見たい里祭り | 静歩 | 「私も見たいわ、もしかして苦味ぱしった好い男かも」(ゆき) | ||||||
ひと言がだだに悲しと秋の母 | もも | 「何が哀しいかは問いません。母は、親は哀しいもの。子供も他人にも分からないことでしょうが・・・」(晶子) |