ハリーポッターの夢~ホグワーツで陰謀~

注意:2巻ネタバレです。お読みになっていない方、
ご注意下さい。

12歳になった私は、憧れのホグワーツに入学した。

ホグワーツではやりたい事が色々あって、

わたしはスリザリン寮に入りたいと思っていた。

スリザリンは闇の魔法使いを多く輩出する寮。


「スリザリンではもしかして 君はまことの友を得る

どんな手段を使っても 目的遂げる狡猾さ」


わたしは汚職をする政治家官僚が大嫌い。

将来、汚職をする様な人間に出会いたかったら

スリザリン寮に入るのが良いだろう。

同じスリザリン生ならば彼らも油断して

悪巧みの話をするかも知れないし、

在学中に弱みが握れるかも知れない。

親の悪事が聞けるかも。

それを私と判らぬ様、こっそりグリフィンドールに横流ししてやるのだ。

スリザリン生からの情報では、はなから信用してもらえないからね・・・


組分けの時、

「スリザリンに入れますように!」

と念じていたにもかかわらず、

組分け帽子は、

「朱に交われば紅くなる。紅くなられても困るから、

あなたのような人はレイブンクローに入んなさい!」

と一喝し、

私はレイブンクローに叩き込まれてしまった。


それでも私はスリザリンを陥れる野望を捨てきれずにいた・・・

他寮の生徒が嫌うスリザリン生に、

私は快く近付いた。

普通に話しかけ、親しく挨拶し、親切にした。

最初は訝しげだったスリザリン生も、次第に打ち解け、

学内一のピュアピュアっ子と呼ばれる私は

スリザリン生とも非常に仲良くなった。


しかし、計画は完全に狂った。

100通りは計画を立てて入学した。しかしそれらの計画は全て、

「スリザリン生が嫌な奴」

という前提に立って企てられたものだったのだ。


スリザリン生達はいい人ばっかりだった。

他の生徒には冷たい彼らも、

私の前では善良だった。寧ろいい人だった。


スリザリン生S「スリザリンってだけで、他の寮の連中は、

まるで僕らが何か企んでいるような、そういう眼で、はなから

見るんだ・・・反発したくもなるよ。・・・でも、君は違う。

レイブンクローなのに、普通に接してくれるし、

嫌なものを見る目つきで見たりしないんだ・・・

『もしかして君はまことの友を得る』とは、きっと君のことだよ・・・!」


スリザリン生は、私の前では

決して人の悪口も言わなかったし、悪巧みも全然してくれなかった。

そういう話へ持ち込もうと、

私が一度、少しハッフルパフの悪口を言ってみたら

大変なことになる始末だった。

スリザリン生L「き、君が人の悪口を言うなんて・・・!

僕達が人の悪口を言ってもいいけど、君は駄目だ!!

君はそんな人じゃない筈だ!!!兎に角君は駄目なんだよ!!」

血相を変えて言うので、どうも演技には見えない。

本気で言っているようなのだ・・・

完全に調子が狂ってしまった。


極めつけが「トム・リドル」だった。

学内一の真面目人間と言われるトムと、

学内一のピュアピュアっ子と言われる私は、

当然の様に親しくなった。

スリザリンの中でも一目置かれる首席の彼に私から

近付いたところもあったのだが・・・

2人は親友となり、常に一緒にいた。

そして次第に秘密の話などもする間柄になった。


そんなある日、トムは私と2人きりで話があると切り出した。

トム「実は・・・他の人には秘密にして欲しい・・・

僕は、多重人格なんだ・・・。ヴォルデモートという悪の人格がいて・・・

僕には彼を抑えられないんだ・・・」


以来、私と2人きりの時にだけ

ヴォルデモートは姿を現した。


ヴォルデモート「お前、文才があるって評判だそうだな。

このレポート、代わりにやってくれよ。筆跡も俺と同じにしろよ?」

私「で、でも、宿題は自分でやったほうが・・・」

ヴォルデモート「俺が出来ないっていっているんじゃないんだよ。

只簡単すぎて、羊皮紙2巻書く時間が勿体無いっていってるんだよ。

嫌ならいいんだ。そこの窓から飛び降りて、トムの奴と

心中してやるからさ・・・」


私は何時しか、彼のゴーストライターになった。


トム「ヴォルデモートはまさか、君に酷いことをしてはいないかい!?

そんなことになっていたら、僕は・・・」

私「大丈夫よ、トム!それに貴方は何も悪くないわ!!

自分をそんなに責めないで!!」

わたしは組分け帽子に会いに行った。

私「トムの側にいたいの!力になりたいのよ!

わたしをスリザリンに入れなおしてください!」

組分け帽子はとうとう怒り出した。

「そんなことを言っているようでは、レイブンクローから

ハッフルパフへ入れなおすぞ!!」


終には反省文まで書かされる始末だった。

ヴォルデモート「先日ハグリットを捕まえた一件でね、

まあ、悪くは無いんだけど

校則を2、3破ったので、形だけ反省文を書くことになったんだ。

一つ、名文を書けよ。先生達が涙腺壊して泣くくらいのをさ・・・」


私は羊皮紙10巻も他人の反省文を書かされる有様だった。


ヴォルデモート「まあ、こんなもんだろ。先生ってのは単純だから、

こんなものでも泣けるんだ・・・」


トム・リドルの反省文は大好評だった。スリザリンに

更に加点される程であった。

「彼は本当に特別功労賞に相応しい・・・!」


しかし、只一人、ダンブルドア先生だけは何か気がついたようだった・・・


反省文はトムの精緻で活字の様に綺麗な字で精巧に書かれていたが

時折、・・・羊皮紙10巻のうちほんの少し・・・

語尾が相好を崩し、撥ねている文字があった。

そして、その文字を順番に拾うと・・・


「わたしがスリザリンの継承者だ。」


ダンブルドアはそれからトムを監視するようになった。

ヴォルデモートも姿を現さなくなった。


卒業の日、

私「よかったわ、トム、病気は治ったのね!!」

トムは微笑み、

「ああ、多分、君のお陰だ。」

卒業後、わたしは海外の田舎へ移り、誰にも居場所を知らせず

隠居生活を始めた。

わたしと親しくしていたスリザリン生達は、

その後、「ほんとにスリザリン出身!?」

と言われるほど、善良な人々として福祉分野などで活躍していた。

在学中のあれは演技ではなかったようだ。

トム・リドルを除いては・・・


トムとの化かし合いにはわたしは完全に敗北した。

死者が出ても状況証拠しか掴めなかったのだから。

スリザリンに入りなおしても余り変わらなかっただろう。


ヴォルデモート卿が再び現れても、化かし合いで勝つ自信は無かった。

彼がことあるごとに『わざわざ』わたしのことを

『在学中からの親しい友人』と言って回ったお陰で

わたしは彼の没落後おおっぴらに表を歩けなくなった。


もっとも、それを見越して隠居生活を始めたのだから

痛くも痒くもないがね・・・


悔やまれることがあるとすれば、

トムが闇の魔術師などになって、役者にならなかったことだろう。