ハリーポッターの夢~続編~

注意:2巻ネタバレです。お読みになっていない方、
ご注意下さい。

ホグワーツ卒業後、隠遁生活と研究の日々を始め、月日は流れた・・・

わたしはもういいおばあさんになっていた。

日刊予言者新聞からは、かつての友、

ヴォルデモートとハリーポッター達の最後の戦いと

ヴォルデモートの敗北について知らされた。


誰もが彼の死を疑わなかった。

そう、彼、ヴォルデモートが私の家の前に現れるまでは・・・


「リリス、わたしだ。入れろ・・・」


私はこっそり魔法省に連絡した。

暫くして、魔法省の役人が到着し、

灯り取りの窓から顔を確認して中へ入れると、

役人は事務的に家の中を隈なく見て回り、

家の周囲を探索し、

戻ってきて、


「異常はないようですが・・・

失礼ですが、見間違えでは・・・?

一応、逃走したかもということで、もう少し周囲を探してみましょう・・・」


役人はすげなく出て行こうとして、

急に踵を返し、

私の顔をじっと見た・・・


「リリス、わたしが闇の魔術でどんな姿にも変われることを

知らない訳でもなかろうに・・・

油断したのかな・・・?それとも、

また何か企んでいるのかな・・・?」


彼の唇の端がゆっくりとあがった・・・


カタカタという音は私の歯が鳴る音だった・・・


私「ヴォルデモート・・・何故貴方がこんなところに来るのか

理解に苦しむわ・・・かつての親友の家では隠れ場所にならなくてよ・・・」


ヴォルデモート「これを見てもしらばっくれるかな・・・?」


彼の手によって、青い液体の入った丸底フラスコが掲げられた。


わたしの顔色は蒼白になった。


ヴォルデモート「賢者の石が壊されてから、不老不死の薬など、

半ば諦めていたよ・・・まさかこんなに身近な処に研究者がいたとはね・・・

しかも、この覚書を読むと・・・」


彼の手には、壁に塗りこめてまでして隠していた筈の

私の研究に関する一切の記録を記した羊皮紙の束が握られていた・・・


「飲んだ者は16歳まで若返り、闇の魔術も効かず、食物を摂る必要も、

空気さえもいらない・・・」


私「その研究は失敗よ!わたしはいいおばあさんじゃないの?

その薬が本物ならもっと若くなっている筈じゃない・・・」


ヴォルデモート「そう、君がいつまでも若かったら、

不老不死の薬を作りましたって言って回っているのと同じだろうさ・・・」


突然、彼は私を抑えつけ、咽喉に青い液体を流し込んだ・・・!!


ヴォルデモート「やはりその姿がいい・・・君はね・・。」


肌は張りを取り戻し、ピンクがかり、鏡を見ずとも

何が起こってしまったかが判った。


彼は私の体に異常がないことを確かめ、死の呪文に至るまで、

あらゆる闇の呪文をかけてみて、ひととおり実験すると、

自らも残った液体を飲み干した。


私の目の前にはかつて、異形の者になる前の

若かりし、16歳のトム・リドルが存在した・・・


「素晴らしい・・・君が闇の魔術や禁断の術にこんなにも

造詣が深かったとは思わなかった・・・

学生時代、リリスという名は君に合わないという者がいたが、

最初のデヴィルの母たる女の名を冠するに、

君程相応しい者もおるまいよ・・・」


私「もう、薬はそれで終わりよ。出て行ってもらえるかしら?」


彼は振り返り、私の肩を痛む程強く掴んだ。


「君が必要だ。

他の家来も部下も誰も連れてゆかない。

君だけいれば十分だ。

君はわたしと一緒に来るんだ・・・。」


私は彼の胸にそっと寄り添った。

「本当は・・・貴方がその薬を飲むと思っていたわ・・・

だから16歳なのよ・・・あの時のあの時間に全てが戻ったら・・・」


しかし、彼は何も言わなかった。

彼の表情も、わたしの位置からは判らなかった・・・


私は彼の逃避行に付き合う羽目になった。


ヴォルデモート「今ならポッター達と闘っても勝てるかもしれない。

しかし、わたしは過去の過ちをこれ以上繰り返すつもりもない。

相性だよ。ハリーポッターは常にわたしの予想を裏切る男だ。

彼が死ぬまで待とうじゃないか・・・」


誰も近付かない火山の噴火口に、それは巧妙に隠してあった・・・


マグルの宇宙へゆく船。それが魔法の何かで

まるで石の塔の様に、異形の姿に変えられている。


ヴォルデモートを私を乗せた船は、轟音と共に

暗黒の宇宙へと飛び立った。


揺れる船の中でヴォルデモートは私にそっと口付けた・・・


「君は永久にわたしの物だ・・・!」


ヴォルデモート・・・貴方は神話を忘れているのかしら・・・?

リリスはアダムの最初の妻だけれど、楽園を追われし後、

アダムに禁断の木の実を食べさせたのよ・・・?


私の薬は・・・


一ヶ月しか効果が無いの。

私の頭の中にだけ書いてある効用。

老人に戻ったりはしないけれど、酸素の無い処に居たら駄目よね・・・?


騙しあいは勝ったのかしら・・・?引き分けかしら・・・?


本当は貴方一人でゆかせるつもりだった・・・

もし他の誰かを連れて行くと貴方が言っていたら、

私はついて来なかった。

例え貴方を油断させる為にでも。


貴方が世界の誰より私を高く買ったから、

私一人でいいと言ったから・・・


愛しているわ・・・トム。

そして、ヴォルデモート・・・

貴方はもうこれ以上罪を重ねることはない・・・


一ヶ月、貴方は私に色々な薬を作らせるでしょう。

構わないわ。何でも作ってあげる。

もう最後だもの。


闇の帝王と魔族の母のハネムーンが暗黒の宇宙なんて、

素敵だと思わない・・・?


「そう、私は貴方のもの・・・

そして、貴方も永久に私のものよ・・・」


しかし、その声は轟音に掻き消された。