■コラム2:雑多な街
コラムTでは、ちと熱がこもりすぎて当初の予定から話がずれまくりました。
今回は気をつけて始めます・・・
「盗人講座」は盗賊の街ミストを唯一自由に動き回れる世界としています。
小さな世界に探索の舞台を絞ることで「濃い」世界を目指す。
かなり早い段階からこれは決めていました。
ただ狭い空間は飽きられるのも当然早いものですから、
シナリオ上の時間の流れによって街に変化を持たせることを基本設計として決めました。
心くすぐる隠しマップという空間はどんどん追加していきます。
基本設計に基づき、真っ先に舞台(世界設定)は出来あがりました。
この時、世界中を旅してまわるという流動的な物語ではなく、
一つの街をホームとする事件簿になる点がポイントです。
ゲーム制作は地道に長い作業。いろんな地図やキャラを作っていくわけですが、
その世界を「一つ」に絞ることで、多方面に向けねばならぬ創作力を
一つ所に集中させることが出来ます。
勝負するところはただ一つ「街」なのです。
ミストの街にはたくさんのイベントやキャラを詰め込みました。
一回のプレイではその全容はわからないという不親切な設計です。
隠された、または最初から全てはわからないままの未完の設定もあったりします。
全てが明るみに出ることはありません。またその必要もないと考えます。
街というのは多様な人間が集まるところ。
雑多であればあるほど、そこにはある種のリアリティーが生まれると思うんです。
必ずしもは8頭身の住民を用意する必要はないかなと。
この「盗人講座」で私はたくさん挑戦がしたかった。
その挑戦の一つがRPGでは当たり前に出てくる「街」、そして「住民」を魅力的に見せること。
乱暴な言い方だけど、主人公達がかっこいいのは当たり前だったから。
街の住民、一人一人にだいたい3回の盗まれる機会が設けてあります。
遊び手はきっと「街の人」に大きなことを期待して話しかけはしないでしょう。
けれど何回も同じ街の住民と顔をつき合わせることになれば嫌でも「記憶」に残ります。
セリフは丁寧に作ったつもりです。
「スリ」による小さな刺激と繰り返される会話で「街の人」に愛着が芽生えればと考えました。
砦突入前の自由行動時、スリを行うことは出来ません。
ぶっちゃけた話、あの時間は必ずしも必要ではありません。
ゲーム性という面では何もない時間ですから。
それでも全ての人にセリフを設け、わざわざ遊び手に歩きまわってもらったのは
あそこが「街」の見せ場だからです。
近づく帝国の侵攻を前に、街の人々がいつも以上に
自己主張が強いことに気づいていただけたでしょうか?
戦うことを誓う者、街を離れる者、ただただ怯える者、同朋の帰りを信じ街で待つ者・・・
大事件を前に人々の考えは様々です。
街が人の集まりであることを示す、街一番の見せ場シーン。
それが砦突入前の自由時間です。
コンテストパークの審査員の方の批評はそういう意味でも嬉しかったのは個人的なお話。
一つの街を作りそこに様々なイベントをのせていく。
思いつきで気軽に新規にエピソードを追加する。
一年続いたゲーム制作でしたが、長く新鮮な気持ちで創り続ける事が出来ました。
この「盗人講座」を通じて挑戦したかったことの一つ、
『長く楽しくゲームを創る』・・・この試みは成功したかなと考えています。
( 完 )
=おまけ・お気に入りの突入前セリフ集=
・「迷いはある。不安もある。けれど気持ちは決まってる。頑張ろうかお互いに!」 byジノ姉
・「理不尽な事なんてのはいつも突然にやってくるもんさ。
でもね、何が起ころうとアタシのやることは変わんないね。
アタシら家族の為に頑張ってくれる亭主をおいしい夕飯準備して
お風呂沸かして待ってること・・・。それが女の勤めと幸せってヤツだからね。」 by主婦
・「いつでもどこでもどんな時も。お天道様に胸晴れるいい仕事しなよ。」 by売却店店主
・「我輩らはわぬし達の帰りを待つことにした。
他に逃げる場所も頼る身寄りもないしな。
また何でも磨いちゃるから、はよう帰ってきてくれい。」 by磨き屋
・「・・・もう一度頑張ってみようと思う。もう一度指輪を持って彼女に会いに行く。
・・その為にも今この街に消えてもらうわけにはいかない。
俺と彼女の想い出はここにしかないんだからな」。 by青年ツルタ・不幸編
・「僕はね・・彼女とこのミストで出会って幸せになろうって誓ったんだ。
彼女はここでなくても僕がいればどこへ行っても大丈夫って言ってくれる・・。
でもやっぱりミストが無くなってしまうのは嫌なんだ!
2人で愛を誓ったあの木は・・想い出の場所はここにしかないんだよ。
僕はこの街で2人幸せに暮らしていきたい!・・・これってわがままなことなのかなぁ?」
by青年ツルタ・幸福編
以上。
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