2004年9月18日 松田達さんと 建築あそび 講演記録       HOME
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      ★★ フランス留学 あれこれ  1 ★★

佐藤::ご苦労様で終わり:::ちょっとまって・・質問があるんで。

松田:僕の方はあとは議論のまな板のようなものなんで・・

佐藤:コレからフランスに留学したい人がいるじゃない・・それは勝手にやりなさいみたいな感じなの・

松田:フランスに留学しないほうがいいんじゃないかなー

会場 笑い

堀井:俺に言われたことじゃないか

松田:建築やりたいだったら、モットいい国あるのかもしれないと思うんですけど・・

堀井:また戻るんでしょう・・モウ行かない言うっていうんだったらその話も説得力あるけど・・

松田:またフランスに戻ります

堀井:説得力 無いよね

松田:それは長期の場合ではありと思うんですよ。1年とか行って一気に吸収して戻ってこれるという場所じゃなくて、ジックリ腰を据えて、全然違うことを同時に学びつつ・・それでもいいやと思って・・というつもりじゃないと ・・日本の延長上だと何も学べないというか・・それで言うと スイスとかオランダとか 日本の延長上のものがあると思うんですけど

堀井:スイスは違う

松田:スイスは日本の延長じゃないかもしれないけど、日本が求めているものの一つがあると思うんですよ・・スイスの事務所に行って、日本じゃなかなか出来ない、ここで初めて出来た。みたいな・そういう経験をしてる人は 多くはないけどいると思う

フランスは違う意味であると思うんですよ・。前にサイバーメトリックにチラと書いたんだけど。フランスと日本の時空は直交しているようで・・例えば、日本からフランスにいる人の動きをみると、止まっているように見えると思うんですよ。「お前何にもやっていないじゃないか」と言う ぐらいに見える。

日本の軸はこっちでフランスの軸はこっちだとすると、フランスは常にこういう軸でしか動いてないくて、日本の軸から考えると前進してないというか・・だけど逆に言うとフランスから見ると、日本が止まっているように見えちゃんですよ

堀井:て・・フランス人が言っているの

松田:僕がそう思ってるの。フランスにいて日本を見たときに、止まっているというか、いろいろ情報は沢山あっても、肝心なところでフランスは少しずつ変わっているというか・・ヨーロッパ全体がそんな感じがして・・ナンシーとかストラスブールとか15年単位で都市を作っていて、ドンドンドンドン変わっているとか。都市が変化している感じがあるんですけど、日本の場合は積み重ねの変化ってあんまり無いじゃないですか

堀井
:フランスって共産主義・社会主義の国だからね。15年と言ったけど、5カ年計画を3回繰り返して15年計画にしている。

松田:日本も全国総合計画・・5年とか10年か一回やっているじゃないですか。あれの効果ってよく分かんない。それに対して・・例えばストラスブールだと15年で都市がガラッと変わる・・動いてる速度は遅いけどたしかに動いてるって感じは どんな場合にもある。

郵便局とかに行くと人がメチャクチャ並んでいて、めちゃくちゃ待たなければならなくてストレス感じるんですが。着実になにか進んでいる感じがするんですよ。だから時間が必要というか。日本の場合は瞬間的に終わっちゃうから、自分が早く動けば動くほど色んな事を得られるような気がするんですけど、フランスの場合は早く動いても何も得られないというか。

・・仕事やっていて「早過ぎ」とかいって怒られるんですよ・・あんまり早くやりすぎると上の人が次の指示だせないんですよ。

佐藤:急いだり 忙しいって立派な気がするんじゃないか・・日本では

松田:フランスの場合は「忙しい」って言うと廻りの人にストレス与えちゃうから、言っちゃいけないし、言わない

佐藤
:みんな「仕事だから」って言うじゃない・・仕事って絶対優先で 何の無礼でも許されるような雰囲気ってあるじゃない・・フランスにないわけですか

松田:フランス人は必ずしも良いとは思わないんだけど、仕事してるふりしますね・・忙しいとか言いながらメチャクチャゆっくりしているんですよ

佐藤:仕事の進め方ってはのどうなのかなー、例えば俺が松田さんに設計たのむと言ったときに、どんな感じになっていくんですか

松田:同じですよ日本と

佐藤:1年ぐらいほったらかしてグジャグジャ・・・やたらめったら案を出して 全部ポシャルみたいな・・

松田:フランスも一杯ぽしゃります・・
 
佐藤:話来たら 図面作って模型作ってプレゼンしちゃうわけ

松田:そこまで日本みたいにサッサかサッサか動くって感じでなくて・・でも人によりますよね

佐藤:人によるんだ・・日本では一級建築士と独占制度があるけど・・

松田:DPLGというフランス政府公認建築家資格があります。学校の6年制を卒業すると基本的には建築家の資格がもらえる・・ヨーロッパは基本的に学校を卒業すれば建築家で、どの国でも通用する。国家によって与えられた証明証書があってそれをもらうと建築家と自称する、自称じゃないか・・それ以外の資格はないんですよ。ヨーロッパ全体にどこにも無くて

佐藤:日本の場合は建築士を持っていないと設計できないことになっている、大学の建築かんけいの教授でも建築を設計できないコトニ 一応法律上はなっているジャン・・コンペはどうなの

松田
:コンペは参加するのが凄く難しくて、参加するまでに・・すごく大変なんですよ、実績がベースになるのと、書類がメチャクチャ必要なんです

佐藤:妹島和世さんはどうなっているの

堀井:妹島和世さんが取っているのはオープンコンペです。彼女は書類審査なら落ちます。こないだも落ちたらしい

松田:ヨーロッパも・・多くは指名ですよね・・日本と違うのはコンペやってお金をもらっているんで

佐藤:コンペに参加すると金くれるんだ

松田:基本的に仕事としてしかやらないですよね。オープンコンペに絶対参加しないんですよ。会社としてはそれで計算できるんですよ。プロポーザルに近いかもしれないけど、それがお金もらえるような・・

佐藤:日本じゃもらえないよね・・学生をこき使い 案出したらその場で忘れちゃうようなね・・だれも覚えていない・・

脇坂:最近 坂さんがとったやつ・・あれってオープンなやつで・・

松田:あれは6人の指名だったと思います・・その前に何段階かあったかも でも最初からある程度は指名ですよね

佐藤:フランスへ行って勉強して「私フランス帰りよ」みたいな感じで 日本で振る舞うと仕事来ると思っているんですか

会場 笑い
 
松田:ぼくですか・・日本に戻ってくるとフランスでやってきたことのほとんどは通用しないんじゃないですかね。仕事だって結局 日本で何かができなければ来ないだろうし・・・そもそもフランス語を学んでも日本で通用しない・・ただフランスで一番大きいのはなんと言っても言葉の問題ですね・・例えばフランスに来て日本代表みたいな顔っていうのは、日本で思っているようには絶対出来ないし、しないですよね。

例えばオランダだったら・・違うかもしれないけど・・フランスはまず言葉でコミュニケーションとってそこからスタートって感じはあるんで・・何が違うのか・・まず日本のことをこの国の人はやっぱり知らないし、せいぜいミステリアスな国ぐらにしか認識してないし、日本人がつくるものの説明をすることも、ほとんど不可能ですよね・・日本のものを尊敬したりする場合、理解して面白いと思うのではなくて、理解を超えているから面白いと思うという感じだと思います・・自分の考えを説明してもあまりに分かってもらえないことの多さには、もうこれは本当につらかったことが多いです・・日本で何をやって行ったとしても0からのスタートにはなりますよね・・マイナスからかな・・・

佐藤:日本の場合は身の回りの住宅やって、練習して コンペやって取って、その過程を雑誌発表して建築家に成っていく。フランスは IFAってあるじゃない、国が若手を支援して建築家を育ててるとかあるんですか

松田
:フランスでは若手に対してほとんど何もしないって感じはしますね。もちろんいくつか若手に開かれたチャンスはあるんですが・・聞いた話でもありますけど、フランスでは出る目は潰すっていう原則がやはりあるような気がして・・

会場 笑い

すでに力を持っている人が、自分の権限を守ろうとするその力の強さはすごいなぁという感じは、いろんな場所で受けました・・若者と力で張り合うと負けるから、そうではない形の勝負しかさせてもらえないというか・・ちょっと大げさな感じですが、全般的にメディアが若者を押そうという雰囲気は日本のようにはないような気がしました・・フランスでは力を持ってるのは基本的に年を取っている人という状況はあると思います

佐藤 ペローとかヌーベル出てきて力をもった

松田:彼らは例外だと思います・・ただ彼らだけがっていうわけじゃなくて、もっと日本で知られていなくても、活躍している人はいますね・・別に世界に知られてなくても仕事はできるじゃないですか・・

佐藤:日本と変わらないなー

松田:いやいや日本とは全然ちがいますよ・・若手が出るチャンスがないんですよ〜

堀井:日本だってつい最近までそうだったから・・良くなっている・・いやいや、良くなっているかどうだか・・爺が権益を牛耳ていて、仕事を山分けして 若い連中は片っ端から食いつぶす・・いう社会でしたよ・・少なくても80年代の前半までは・・

佐藤:いまでも地方はそうだと思うけどな・・業界的談合体質です 善し悪し判断する物差しも物差し使いこなす人も育ててないんだからね・・

松田:ある程度はそうだと思うけど。日本で感じるのは 若手が勉強する機会を得ようと思ったら自分で探し当てられるというか・・フランスの場合は建築事務所もメディアも含めて、若い人をうまく引っ張り挙げてくれるシステムがまだ成立していないという感じがします・・

佐藤:フランスの悪口いっているのかな

松田:あくまでも僕の経験した範囲でしかないんですが、現にフランスの若手建築家で目立った人ってあまりでてきてないですよね。例えば僕の建築関係の友達でメチャクチャ実力持っている人とがいて、一緒に仕事するととても面白いんですが、彼自身はわりと地味な事務所で働いていて・・ただやっていることはメチャクチャ高度で・・彼がつくるCGとかはあんなレベルの日本人はいないだろうと・・図面書いても、プラン描かしても上手いんですよね

だけど・・それを上の人は拾って伸ばしてくれるというよりも、完全に出来上がった職人的技術の部分が雇われているという感じなんですかね・・そこから育てられる環境、あるいは自分が何か得られる環境があればいいんだけど・・日本と全然違う意味で、もの凄い歯車に成っているというか・・順番に何かを覚えていって一人前になっていくという道ではなくって、すでにエキスパートになっていることの技術者として雇われて、結局 最後までそのエキスパートであるというか・・それ以外の道がなかなか見あたらない

日本も基本的にはそうだというのは、分かっているつもりなんですが、そのつもりで外国に行っても、状況が違うな〜と思って。 まぁ どういう仕組みになっているのかは結局よくわかってないのですが、結果として出てきた若いフランス人建築家の作品には、やはり一定のくせがあるというか・・建築が専門家の組み合わせで出来上がってる感じがしますね・・総合芸術ではなくて・・

もう一つは海外の建築の情報が思ったより入ってきていない。入ってきているけど受容があんまり上手くない・・
 
佐藤:オランダの情報とか入ってこないの、日本だとオランダのことはみんな知っているみたいな

松田;日本だと外国全てがフラットに、どこの情報も同じように入ってきていると思うんですけど、フランスの場合だと近いところから順番に強く入ってくるというか

堀井:じゃオランダなんかすぐ入ってくるじゃない

松田:少しは入ってきていますけど、フランスのフィルターかかってる気はします・・いややっぱり日本のようには入ってきてないような気がするなー

佐藤:そういわれてみると日本のほうが建築家になりやすいと思うね

松田:全くそう思います

佐藤:住宅たてさせてもらえるしなー、知らないやつだけど 発注する側へ挨拶に行き続けていると、顔見知りになったような気分で・・じゃ〜・松田にやらせようかみたいな感じになったりすることもあるんだけど、フランスではないのね

松田:フランスはコネ社会が強いので、実力があろうとなかろうと、コネがある人は、ある程度はうまくいくのかもしれません。実力があってもフランス人じゃないから上にのぼれないとかいうこともあるし。極端な話、ベルギーのフランス語圏の人なんて言葉の問題はまったくないはずなんだけど、ベルギー人だということで上にのぼれないということがあったりするらしい。会社でも大学でも、ベルギーの人のそういう話は聞きます。というよりそもそもフランスで求められている実力というのは、日本でいう実力とは大きく違うはずなんですけど。あまりに状況が違いすぎて、なかなかうまく説明できません

脇坂:さっきスイスの方がいいという・・プロセスがフランスみたいに硬直化したのがあるとすれば・・スイスは日本に近いと・・

松田:近いと思います

佐藤:スイスは堀井さんに聞いた方が

松田:日本に近いというよりもフランスが離れすぎているのかなぁ・・ヨーロッパは基本的に日本とは違うと思います・・そのなかで、スイスにいて、日本人が理解できることは多いと思いますけど、フランス・スペインでもそうだけど日本人が理解できないことだらけ・・。僕はだからそこに行って悪いわけじゃないけど、直ぐに学べないということは分かった。だけど時間掛けたら時間掛けた分の事は学べるという気がした。

日本の建築の延長で・・日本で・・そっちに行って、こういう事やるぞ・・これだけの持って向こうに行くゾーと思ってやってもたぶん空回りする・・自分の思ってたことは学べ無いことが多くて、その状況に満足するしかないかもしれないし・・その場合に可能性としては1年ぐらいで帰ってきて・・でも・・あとはそこにズーット長くいて・・その場合もなんですけども、そこで得たことをそのまま日本にもって帰っても、うまく使えないのかもしれません・・状況がすごく違うし

脇坂:安藤さんのところにいた人 イタリアとかいたじゃない

佐藤:長田さん・・イタリアに行ってたの

堀井:一寸行っていた



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