佐藤敏宏 この人に聞く in仙台 2009年6月01日晴れ 櫻井一弥 さん home その01 その02 その03 その01 佐藤:今日は櫻井一弥さんの建築に対する考え方や、現在などを語っていただきます。櫻井さんよろしくお願いします 櫻井:はい 佐藤:これまでの作品を紹介していただけますか 櫻井:はい 佐藤:モノローグで行きますか、それとも途中突っ込み、入れた方がいいですか 櫻井:ドンドンドンドン 佐藤:ドンドンだと、俺喋り過ぎて、話が進まなくなるかもしれないな〜 櫻井:はあはははは 佐藤:ひとつ、よろしくお願いします (右絵 東北大 トンチクにて 右 櫻井さん) 櫻井:はい、僕 事務所はですね2005年に友人二人と3人で設立したんですけど 。そのとき一番最初にやったのが、この「0博士の家」。佐藤さんんんもオープンハウスで観ていただいたやつですね。 佐藤:凡庸だと日記に書いた建築ですね。見学会はいつでしたっけね 櫻井:2006年の7月ぐらいだったでしょうかね。 佐藤:事務所を設立して1年後に完成した建築ということで。その建築のコンセプトなどを 櫻井:これは非常に明快なコンセプトで出来ているんですけど。場所がですね、仙台の郊外にある、新しく出来た新興団地なんです。廻りに建っているのは本当に、工務店とか住宅メーカーが作った、特徴の無いものがだーっと並んでいるんですね。「そういう所で何ができるかな〜」と凄く悩んだんですけども。よく見ると言いますか、細かく土地を見ていくとですね、道路に三方囲まれてるんですね。そこを逆に仕切っていくことで、庭が4つ出来て。それぞれ特徴のある庭が作れるんじゃないか、というのがここの大きいコンセプトなんですよ。 佐藤:特徴ある庭をね、それで仕切るという発想は、何から立ち上がったのですか 櫻井:一つはですね、だいたい他の家って塀が在るじゃないですか。 佐藤:はい 櫻井:あの塀って基本的に防犯上なんの役にも たたないんですよね。 佐藤:そうですけど、盛んにつくりますね。 櫻井:だけど、実際は意味がない、簡単に乗り越えられるので。あれまず必要無いし。あれに変わる方法が何かないかな〜と思ったんですよ。こいつはですね、実は塀を反転しているんですね。考え方としては。 佐藤:そうだよね、いきなり反転技! 見た そのままだ ふふふ 櫻井:外側の塀をぐーっと内側にもって来て、逆に中心部から外側へ開いてあげて。それなりのスケール感が、そんなに大げさじゃないスケール感でここ(4つの領域内)の空間を一個一個作ってあげると。実は非常に、入って来難い気ができて。防犯上 逆にこの方が 佐藤:はは ははは、勝手にそう思ったと 櫻井:いやいやそんなことはないですよ。 佐藤:それは何か数字で実証されているわけでもないじゃん ふふふふふ 櫻井:実証はされてないですね。 佐藤:気分としてはそうだろうと、いう気も起きますね 櫻井:まあまあ実証はされてない 佐藤:全ての方向からすからかんに見えるから。故に賊は入り難いと 櫻井:そうですね。 佐藤:塀や門というのは境界をつくり、そこに暮らしている人の社会的地位や役割や、社会的な貢献度、暮らす人の富などを容易に表象する仕掛けだ、という歴史上はそのような機能を果たしていた。長い門塀史があるのですが。表象上の意図があったわけだから。防犯上だけで、建築家が勝手に語るのはどうでしょうか。付着された歴史的な意味を解体し、設計を始めたわけですね 櫻井:そうです。本当に、こうい土地で四角く塀を作るのって、どんな意味があるかと。 おそらくここは俺のお城であると。いうことを表明するという意味だと、 佐藤:戦後作られたインチキ近世の意識だと思います、まあ今ある塀屋敷の意識を解体しているわけですね 櫻井:それを 完全に解体している 佐藤:歴知的に培った意識・意図を解体することによって住人を不安に晒す!と。はははは 櫻井:いや!いやそれがですね〜そこはちょっと味噌があるんですけども。こちら(東)側の道路が凄く広いので 佐藤:30mぐらいあるでしょうかね 櫻井:そうですね、それぐらいです。東側なんですけども。まるでそこを自分の庭のように使えるんですね〜、逆に領域が広がっていくような感じになる。という処が狙ったところです。 佐藤:領域が広がるようだけど 住み手は不安になると 櫻井:どうでしょうかね〜確かに見られますけどもね。みられますけども。 佐藤:従来の考え方でいうと、4つの敷地のそれぞれの角を分解し切り取り、この場で融合されたような形、形式に成っていますよね 櫻井:そうですね。はい。 佐藤:敷地を四つに分割して その通路が十字に横断交通していると。 櫻井:そうですね。 佐藤:人は東西と南北に拓かれた道を往き来できる。4つの領域の敷地を体験できると。4つのそれぞれの敷地の特性が融合したようにも見ることができる。バロックしてますね敷地の見方。個人の4件の家の敷地が解体し崩れていくかのようにも見えるますね。その結果はどうでしたか 櫻井:結果としては 上手くいったと思うんですよね。 佐藤:上手くいったというのは なんのことでしょうか 櫻井:まず防犯上の話もあるんですけど。入って来難い雰囲気というのは、もちろん主観的な話にはなりますけども。予想してたよりも結構上手くいったな〜というとこあんですね。それはスケール感なのかな〜というとこなんですけど。あとはそうですねこの庭を、部屋と一体に使えるというか、ここ(住居)から広がりをもってやっていくというのが、それはそれで成功しているのかな〜という感じはするですよね。 佐藤:ややボンヤリしてますので具体的な部位について、主に東や東南の角の壁はコンセプトとの齟齬があり問題だと思いますが。ガラスでしつらえるとか。 櫻井:考え方はありますよ。 佐藤:そこの壁は取るなり、無きがことしの建築作法はなかったのですか 櫻井:取るわけにはいかなかったですね。 佐藤:構造的な問題が生じる 櫻井:構造的な問題もありますし、あんまり開けっぴろげにばーっと広げるイメージは最初から無かったですよ。 佐藤:コンセプトと語義 矛盾しているじゃないですか。説明と事実が。広げるとか言い放っている。 櫻井:それは意識的な問題と、使い勝手ということで。ここから外に出る、行けたりするわけですね。そうすると庭先に 佐藤:ああそうか。そこのダブルスタンダードの意識が整理されず、そのまま出ているから僕は凡庸だと日記に書いたんだ。中途半端だと思った理由ですよ。 櫻井:なるほどね。 佐藤:中に入ると意図は明快に受けとめることが出来るんだけど、外から見ると、その東南の壁が意図を削いでしまっている。東にどーんと広がっていくはずの広い道路の方が閉じている。町に対して広がるという意志・コンセプトは削がれて見えてしまう。東南の壁が非常にちゅうと半端だと思いました 櫻井:そうですね、そういう意味ではそうかもしれないです 佐藤:なるほど、それで 櫻井:(内部からの)視線とかはすごいコントロールしてあるんですよね。ここに窓台とか、いろいろ付けているんですけども。これはそれぞれ全部高さが違うんですね。それぞれの用途で。ここはリビングだから、座って飯喰う時に、こちらの目線と合わないサイズにしたりとか。あるいは(南西部の領域)寝室、ここは立っているとき見えない。ここに寝るので下は障子にしてある。視線を遮るというような、細かい工夫を色々やっているという感じですね。 佐藤:見学会の時も同じ質問したんですけど、今日のようには語っていませんでしたね 櫻井:だんだん明確に はははははは 佐藤:分かり易くなったな〜と。当時も同じ事を聞いたんだけども。今日と違って何度聞いても混濁していた。見学会と違う建物について見聞きしているような気分がする 共に はははははは 櫻井:そうですね、喋りはちょっと上手くなりました。 共に ふふふふふふ 櫻井:はい、やっぱり考え方まとまって来たというか、何を喋るかも。 佐藤:齟齬が生じてるから、壁の扱いを工夫する必要があるという反省を共有しておきましょう。それから敷地を4分割している黒い壁状のアイコンが象徴性を生じさせ強いのですが 櫻井:そうですね。 佐藤:それに対してこの白い壁(東壁)の面積が大きいので目立つから、そういう思いが強くなっている、と 僕の勝手な受けとめ、主観的な印象ですけどもね。 櫻井:いや正しいご指摘だと思いますね。 佐藤:君たち言っていることと作たことは違っているじゃないかと、 共に ははははあっはあはは 佐藤:違うから可能性が豊に有るんですよ。そこで見付かったり芽生えたりすると思う。逆に閉じてしまうかもしれないけど。話が飛びましたけれどもね戻します。4つの領域に分けて建築に仕立て、出来上がった建築を3年ぐらい使っているわけですけども、その後どのような展開をしているんでしょうか、この建築は 櫻井:使い方としてはだいぶ、こちらが想定しているような感じで使っていただいているんですけど。一つはですね、ここ(西何の領域の高窓)に簾みたいなものを掛けてらっしゃるんですね。西日がもの凄く強いんで、簾を。でも冬でも掛けていて、それは見えるのがいやだとか、という話ではなくって。簾越しにこっちの景色を見たいと仰ってましたけどね。あとは、ちょっと拙いな〜と、失敗はここは洗濯物置き場なんですけども。目立ち過ぎる。 佐藤:それは目立つはね。黒い壁が後ろにしつらえてあるんだから。 櫻井:さすがに恥ずかしいと。見えちゃうんですよ。ご高齢とはいえ下着とか見えるのはっていうことになって。 佐藤:日当たりいい場所だから分かるけど。エキスパンドメタルなどで紗掛けるなどして消してあげればまだ良かったけど。これは苦労すると思いましたよ。 櫻井:実際にはこの手前に簾みたいなものをご自分で掛けられて、目隠しはされて使っているんですけどね。 佐藤:三人で設計をやるデメリットのようなものが、出てるんじゃないかな〜と。見学会の時に思ったんですけどね。一貫性に欠ける点や、実利性の処理の問題でも、乾し場もそうだけど。 櫻井:それは あります。 佐藤:僕だったら東南の領域ではない場所に物干しを作って開いていく領域には、プライベートな下着とか掲げるしょうな設えはセットしないですよ。僕の感覚とは大きく異なっているな〜と感じました。それは4つの領域に実利性を生じさせる時の処理の問題なので、建築の質の評価にはどってことない問題ではありますけれどね。 櫻井:プランニングの問題というよりは、小道具がちょっと足りないんですよ 佐藤:ふふふふふ、確かに日当たりが一番いい場ではあるけれども 櫻井:そこはちょっと 佐藤:洗濯物乾し場の処理ってのは難しいから ね 櫻井:難しいですよね〜 佐藤:日々洗濯をする住宅用途の建築なら、そこを上手に処理しておかないといけないですよね。それは計画学というようりは実利性の問題ですけど。洗濯物なんか全てクリーニングに出せ!という落とし込み処理でもいいとは思いますけども。 櫻井:はははあはははは 佐藤:このお家の場合は洗濯は自分でもする、ということで 櫻井:そういう意味では色々失敗はありましたけどもね。ここ(東中央部)食品庫って置いてあるんですけども、これはまた南の光が思いっきり浴びて 佐藤:食品庫にならず保温庫になると。用途転用も手の内です。ははははは 櫻井:置く物が限られちゃうと 佐藤:西じゃないからまだ良いけど、夏場の日射量は東が最も多いしね。温ドライ庫ということで 櫻井:ちょっと甘いですよね〜。4つの領域で壁で仕切っていくっていうコンセプトが出た瞬間に3人でもう「いけたな〜」と思ったんですね。そこで舞い上がっちゃって細かい処でちょっと。 佐藤:最初見た時の印象ですけども、1つに敷地に4つの領域を入れて、「それぞれの領域を、それぞれの社会性を持たせていく。その試みは凄くいいな〜」と思ったので。説明聞いてみた、全然バラバラチンチラだった 櫻井:おおわらい はははははは 佐藤:なんだ、自分で設計した建築の特性を理解してね〜やと思ったわけです 櫻井:それは佐藤さんの目の方が正しい 佐藤:それで、和室に入ってみると、領域と共振せず場が落ち着かないんだよね 櫻井:ああそうですかね 佐藤:それぞれの土地の領域と、それぞれの建築的領域、部屋の対応、共存関係が練りこまれてなくって、中途で放り投げられたまま立ち上がってしまっている。そう感じました 櫻井:なるほど。 佐藤:個人の生活が建築的計画に落とし込まれて住居の建物としては問題があるけれども。建築の原形としては4つに分けて各領域に開いていく違和、相異を統合するような力業はあってもいいと思ったんだけどもですね。説明がね〜無い。閉じたような現代住宅を開いて、社会化していこうとする意識は良いんだけども、具体的に、特定の場で具現化したときのプロセスが。首をかしげるものが多かったように思い出しまいした。 櫻井:今 思いますよ本当に。 佐藤:それは可能性として有って消えてない。実利性に落とす手法の問題だ。具現化がスッキリと出来る技のようなものが不足してただけれだから建築がダメではないわけですよ。だから可能性があると思います。最初の作品で矛盾がいっぱい露呈して確認できる、するのは、俺は良いことだと思います。3年経て整理されて 櫻井:はははははあははは 佐藤:3年経って来てよかったです。はい。3方が道路であるということを積極的に解釈し建築化したのは いいですよね 櫻井:分かり易いというのはあると思うですよね。最近 この辺の写真撮ってるんですよ。フローリングとか色が落ち着いて来て、良い感じになってきたですね。 佐藤:建築の原形に、生活という雑多なものを入れてしまうと、いろいろ言い訳が出来てしまい迷走がはじまる起点でもある。それは建築の魔性・難しさだと思うし、そこの時にお客様主義者になるか、作家主義になるか、社会性を押し出した活動的建築家になるか、軽快に領域横断できる人間になるか、際どい場に立たされるわけですけれども。 そこが唯一 ポピュラーな建築家になっていくか、時代を体現するような 世界的建築家になっていくかの剣が峰ロードの風景でしょう。 櫻井:はははあははははあは 佐藤: ころっとお客様主義へ行くか、留まるか、そこらあたりは そうとう建築家という職能が際だつ道への入り口の瞬間でもあるから、とても面白いですよね。 以前の説明ではこれはダメだと思いましたけど、3年寝かしたおいたら、立ち位置も理解できたようで。 櫻井:上手くなったですか 佐藤:素直な構えになっていて、良いと思います。はい。 話は変わりますが素材に白と黒をつけて色分けしてるのは、気負いだと受けとめたんですけども色は付けなく、分かるので色つけしなくってもよいと思うのですが、抽象化した意図はなんでしたか? 櫻井:そうですね〜あんまり木ぽい感じ、木のむき出しにして出すような。 佐藤:当初立ち上がったコンセプトとは別で単に色を付けわけたかったのかな 櫻井:いや違います。それは領域を分けているっていう処と連動しているんですけど。色々スタディーはしたんです 佐藤:強く抽象度を上げているじゃない 櫻井:強いですね 佐藤:使い手にとってはどうでも良いことだと思うの。色づけしなくってもいいんじゃないかな〜とおもいましたけども。 現実の場は4つの領域に分割されているので、表象的にも強調する必要はあったのかな〜って思いますね。交差点の真ん中のトップライトがしつらえてある、あの場や性質がこれからの櫻井建築の中でどうなっていくのか? 興味は湧きます。偶然出来た中心みたにも見えるじゃないですか、その活用と展開の仕方が、こ慣れてないと思ったので、展開に注目してみるわけです。 まずいな〜おれが喋りに来たみたいな状況になってるな〜 まずい!! 櫻井:はははあははは、いじゃないですか。 佐藤:なるほど はい 櫻井:次のやつは 15:08 その02 へ |