夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その106 発行日 2009年12月20日
編集・著作者     森 みつぐ
  季節風
 12月中旬になって、あっと言う間に真っ白な冬景色になった。気温も一気に、真冬並みの一日中氷点下以下の日も続いている。雪用のジョギングシューズに履き替えて、雪の上を走っていたが、2枚重ねの手袋でも、指先が凍えるように痛かった。
 気温変動が大きく揺れ動いた今年の天候、もう一度、雪が融けるような暖かい日が来るかも知れない。次の日のジョギングでは、厚手の手袋を始め、すっかり完全防備で走った。真冬日の凍える寒さの中、我が家では、後ろ脚が1本取れてしまったマダラスズが、2〜3日前までか細い聲で鳴いていたのだが、残念ながら年を越えることなく逝ってしまった。
  言いたい放題
 「格差社会 高まるストレス 高所得者も死亡率増加」と言う題の記事(読売新聞)が載っていた。「社会の所得格差が大きくなると、貧困層だけでなく中間層や高所得層でも死亡する危険性が高まることが、・・(省略)・・大規模なデータ分析で分かった。社会のきずなが薄れ、ストレスが高まるのが原因らしい。・・(省略)・・社会の格差が寿命などに悪影響を与える「健康格差」の報告が最近相次いでいる。慢性的なストレスが自律神経やホルモンの働きを乱して、免疫機能を下げたり、血圧や血糖値を上げたりするのが原因と考えられている。」
 企業社会において、過当な競争、過重なノルマや複雑な人間関係など多くのストレスが存在する。バブルが弾けてから企業においては、競争至上主義や成果主義へと労働者一人ひとりに重いストレスがのしかかってきた。それは、一般労働者のみならず、高所得層の管理職たちにも同じようにストレスが高まり、心の病に陥っているのである。 そして、それに加えて格差社会が原因によるストレスがまた高まり、死亡する危険も、また高まるのであろう。
 やはり人間は、群れて生きる社会性動物である。格差社会の中で、どの層に属していようとも、社会との絆が薄れることは、やはり寂しい限りである。
  つくしんぼの詩
 札幌も遅ればせながら、本格的な雪の季節が到来した。柔らかい雪も、人や車に踏み固められたり、雪が解けたりを繰り返しながら、つるつるの氷の路面へと化してゆく。慎重な上、慎重を重ねてゆっくりと歩く高齢者の姿が痛々しく映ってくる季節でもある。
 高齢者にとって、転んで骨折でもするものならば、その後の人生にとっても大きな痛手となる。雪国ならではのこの大きなリスクをどう回避することができるかが、毎冬、考えてしまう問題である。
  虫尽し
 10月半ば、台湾での最初の採集であるが、残念ながら昨日からの雨が降り続いていた。前回、初夏に来たとき見つけた採集地へ、ともかく行ってみた。小雨が途切れることなく降り続いている中、傘を差して歩いていると、アスファルトの路面にアゲハチョウの翅だけが落ちていた。
 "あれっ!初めて見る翅だ!""ワタナベアゲハの雌のようだけど!""晴れないかな!?・・・口惜しいね!"
  情報の小窓
『まず何より、平等を壊すのは非常に早くできるし簡単なのに対して、それを元に戻すのは世代を超えた時間がかかるということがわかります。時間軸というものを抜いて、あたかも同じように進行して可塑性をもっている、いったん格差が拡大しても、元の政策に戻せばすぐに元に戻る、と考えるのは間違いです。福祉の給付を切り、市場の規制緩和をして優勝劣敗をどんどん強めれば、あっという間に格差は広がります。今日のように金融市場を規制緩和していけば、投機で一気に儲ける人が出てくる一方で、働いても働いても給料が上がらない人を簡単に作ることができます。労働市場の規制緩和をすれば、企業は利益を上げる競争をしているのですから、すごい勢いで非正規雇用を増やします。そして、九七年頃からの不良債権処理の失敗による負債デフレもあって、格差が急速に広がってしまったわけです。このとき、たまたま非正規雇用になった人々はなかなか正規雇用につけないでいます。』
 ちくま新書「閉塞経済‐金融資本主義のゆくえ」金子勝著

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