夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その108 発行日   2010年2月21日
編集・著作者     森 みつぐ
  季節風
 日が沈むのが、冬至の頃に比べて1時間以上も遅くなり、夕方5時を廻った。最近、関東の方で雪が舞う日が多くなっている。本州南岸に前線を伴う低気圧の移動とともに、強い寒気が入り込むと雪が舞うと言う春を呼ぶ気圧配置が多くなっている。
 今年、2年振りに近所の側溝みたいな3m巾の川が凍りついてしまった。そろそろ平年の最高気温がプラスへと変わる。そして、これから雪融けが始まってくる。
  言いたい放題
 昨年、労働者の残業などを含む月平均の「総実労働時間」は前年比2.9%減の144.4時間となり、1990年以降で最大の減少率となったと言う新聞記事を見た。それに伴い、当然、給与も最大の減少となっている。
 総実労働時間を年換算すると約1733時間となる。20年ほど前、連合が年間総労働時間1800時間を唱っていたときがあるが、それを遥かに下回る数値となっている。私には、不況により企業側の強い残業代抑制があり、労働者のサービス残業を強要しているように思えるのである。いつの時代でも、割を食うのは、弱者である労働者である。
 残念ながら、日本の労働者は、私的な時間が増えることよりも、残業をしてでも、お金を増やすことに腐心する。豊かな生活よりも豊かな生き方をしたい私は、懐のゆとりよりも心のゆとりを大切にして生きてきた。金や物を追い続ける生き方と言うものを、もう一度じっくりと考えて欲しいものである。
  つくしんぼの詩
 札幌などの雪国では、冬になり雪が降り積もると、当然道は狭まってくる。私の唯一の移動手段である自転車には、積雪とともに乗らなくなる。当然、車道では危険過ぎるし、歩道では狭過ぎて歩行者にとって危険だし、夏タイヤのままだと滑って危険だからである。
 ところが、除雪で少し道が広くなると、高齢者に多いのだが、夏タイヤのままで自転車に乗っているのを見かける。また冬タイヤにした若者のマウンテンバイクは、スピードを出したまま、歩行者と擦れ違う。怪我をしてからで遅い、怪我をさせてからでは遅い。もう少し考えて、行動して欲しいものである。
  虫尽し
 台湾東部の花蓮の山を上っていた。路傍の下草に、先ほどからベニモンアゲハが翔び廻っている。産卵をしようとしているのだが、ちっぽけなウマノスズクサしか見つからない。更に、その先に目を遣ると、木々の枝葉が大きく揺れていた。
 突然、林道に大きなサルが飛び出してきた。タイワンザルである。3匹、林道上に陣取って動こうとしない。それから、次から次へとサルの群れが、林道を渡ってゆく。そして傍らでは、相変わらずベニモンアゲハが行ったり来たりと翔んでいた。
  情報の小窓
『暑い寒いのと年中不平を言いながら、冷暖房を使って快適に過ごす。面倒だからと何でも車を使って排ガスを出している。そこで自分が悪をなしているという意識はもちにくいかも知れませんが、現代人はどうしようもない「arrogance」、つまり傲慢(ごうまん)にとらわれています。
 だからそれをやめるべきだとは言いません。しかし、人間はDNAの二重螺旋(らせん)構造のように、善と悪の両方を内包して、悩みながら生きていくしかないのであって、少なくても、そういう悪を抱えて生きているという意識のかけらぐらいはもつべきだろうと思います。』
 新潮新書「人間の覚悟」五木寛之著

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