夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その161 発行日     2015年2月22日
編集・著作者       森 みつぐ
  季節風
 一番寒いはずの2月上旬も、然程の寒さもなく過ぎて2月半ばになって、3月半ばの暖かさが訪れている。この冬の気圧配置は、どうも典型的な西高東低の冬の気圧配置ではなく冬の終わり、春の初めの気圧配置のように思っていたが、やはり暖冬だったように思われる。
 暖冬でも大雪になることはある。でも今は、歩道や大きな通りより一歩奥に入った生活道路では、雪も融けだしべちゃべちゃになり始めている。柔らかい日射しを受けて、小鳥の軽やかな囀りも聞こえてきた。
  言いたい放題
 「厚生労働省北海道労働局は、過重労働の解消を目的に道内の事業所で昨年11月に実施した重点監督の結果を公表した。対象となった145事業所のうち、賃金不払い残業(サービス残業)など労働基準関係法令の違反があったのは119事業所(82.1%)に上った。発表によると、法令違反の内訳は、違法な時間外労働が81事業所(55.9%)、賃金不払い残業が34事業所(23.4%)。過重労働による健康障害防止措置が不十分だったのが109事業所(75.2%)だった。(読売新聞より)」
 労働法令違反は、82%に上ったとのことである。私は、この数値は低いように思える。100%近い数値になるのではないだろうか。昨年11月の一月だけの結果だからではないだろうか。企業は、どうにかして人件費を抑え込もうと、あれやこれやと策を練っていることだろう。もしそれが労働法令違反だろうが気にしない。気付かれなかったら儲けものだからである。気付かれたら、知らなかったと言い訳すればいい、謝ればいいだけである。
 そんな折、政府は、企業に有利な労働法令となる「脱時間給」制度を施行しようと目論んでいる。弱い立場の労働者を守る労働法令を緩和させて、もっと働かさせようとしている。今は、対象者を狭く絞り込んでいるが、そのうち少しずつ対象者を拡大してゆくかも知れない。格差社会は、国と大企業によって作られてゆく。
  つくしんぼの詩
 買物をして雪道を歩いていると、前方を杖を突きながら危なげに歩いている老婦人がいた。老婦人も買い物の帰りみたいであった。路面は、雪が融け、そしてまた凍り付いて滑る。そして歩道や車の出入り口は、車道側に斜めになっていて滑りやすい。
 この冬は、雨も多かったのでツルツル路面も多く、滑って転んで救急車にお世話になった人も非常に多かったようである。高齢者は、転倒して骨折でもしようものなら、一生寝たきりになるかも知れない。命懸けの買物である。
  虫尽し
 静岡県の沼津市の住んでいたとき、春早くから胴体の太い大型の蛾、フクラスズメを見かけることがあった。幼虫は、成虫と違って細くスマートなイモムシで、カラムシの葉っぱによく見かけていた。
 北海道にも生息するとのことだが、見たことはなかった。多分、エゾイラクサでも食べているのかなと思っていたら、ある時、エゾイラクサの葉を黙々と食べている幼虫を見つけた。やっぱりいたんだと懐かしんだが大食漢のイモムシ君は、そのままにした。冬は、北海道でも成虫で越すのだろうか。
  情報の小窓
『自意識過剰の自己不在の人も、他意識過剰の他者不在の人も、いわゆる冷たい人である。どんなに善人そうに振舞って「立派なこと」をいっても、うちとけあった友をもたない。心を開いて語り合う恋人も妻もいない。
 そう考えてくると、人間的温かさとは、何のことはない、自我が確立したことにほかならない。真の自己を獲得した人こそ、心の温かい人なのである。
 このことがはっきりわかっていないからこそ、この世の中には悲惨な涙を流している人々がいるのである。つまり、他人に対しては善人そうに振舞い、立派なことをいっていながら、弱い者をいじめている心の冷たい人がいるということである。いじめられている人が、それを訴えようにも回りの人々は信じてくれない。なぜなら、その人が立派な人と周囲の人々には思える場合があるからである。
 立派そうな親に育てられた悲惨な子、そしてその子も歪んでいるが故に、また弱い立場の人問に対して加害者となっていく。悲劇はくりかえされる。いじめられっ子は、状況によっていじめっ子に変わる。殺され屋は、状況次第で殺し屋になる。』
 PHP研究所「「自信が持てない人」の心理学」加藤諦三著

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