夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その22 発行日 2001年3月28日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 先週から一気に、春の陽気である。馨り強い沈丁花の花も終わりを告げ、今や、庭々では春爛漫である。先日、早くもツバメが空を滑るように横切っていた。私のジョギングコースの途中には、ハクモクレンの白い花が、夕暮れ時の群青色の空にくっきりと浮かび上がっている。
 最近、春になっても土の薫りがしてこないので、庭々に花が咲いても、どうも実感が湧いてこない。やはり私は、山野に行って、ひっそりと咲いている花を見るのが好きだ。でも、春が来た。
  言いたい放題
 最近新聞などのメディアで、子どもの学力低下は、「ゆとり教育」の弊害ではと問われている。小学生から大学生全般に亘る学力の低下は、確かなようである。分数計算の出来ない文系大学生。これは、単純に20年間における「ゆとり教育」の結果なのだろうか。
 ここ10年、20年子どもを取り巻く環境は、非常に大きく変わった。否、社会の環境が目まぐるしく変わったのである。そして、今は、IT革命の最中である。インターネット、ゲーム、携帯電話と、つまらない勉強より一段と面白い。
 政治、経済で新聞やテレビを賑わしている不祥事の主は、高学歴のエリ−トたちである。いい大学を出て、いい会社に入るための理由が、全く説得性に欠けてきた。
 このような社会の変化の中で、勉学に興味を持ち続けることは難しくなってきている。果たして、最近問題になっているの学力低下は、「ゆとり教育」の弊害なのだろうか。私には、そうとは思えない。何故、勉強するのか。何のために勉強するのか。その目的意識を示さないままで、目的意識を持てないままで勉強しても、やはり身に付くことはないだろう。難しい時代になってきた。
  つくしんぼの詩
 先日、新聞を読んでいて、”当然!”と思った記事が載っていた。
 また車の話題だが、東名高速での酒酔い運転の大型トラックによる追突事故で幼い子ども2人を失った夫妻を招いての後援会の後、夜の懇親会で飲酒した5,6人がマイカーを運転して帰ったと言うことである。善きにしろ、悪しきにしろ、既に凝り固まった性格の大人に、いくら精神論で訴えても成果は、たかだか知れている。改正(?)しなくてもいい少年法を変えたのだから、大人の場合は、究極の改正を求めたいものである。
  虫尽し
 陽が翳り、林内の薄暗い川底を歩いていた。ふと、水溜まりを見ると、ヤンマが飛びだしてきた。そして、ゆっくりと旋回して、また水溜まりの暗い淵に止まった。”網を!”と思ったが、じっくり観察することにする。水溜まりの淵の泥に、長い尾を曲げて、卵を産み付けているのである。産卵が終わって飛ぶとき、掴まえてみたが、翅がすっかり傷み、尾も泥だらけである。昨日、採ったカトリヤンマだった。バイ!バイ!元気で!
  情報の小窓
 『歴史から見ても、一人一人が抱える不安とかリスクが進行しているときに限って、「自己責任」だとか「自己決定」という言葉がシャワーのように浴びせられるのです。・・・つまり、自分ではどうしようもないリスクなのに一人で解決しなさい、自分で処理しなさいといわれる。しかし、一人一人の人間にとってはどうしようもないわけです。・・・』
 岩波ブックレット「シンポジウム民主主義の危機」金子勝著(経済学)

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