夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その27 発行日 2001年10月14日
編集・著作者    森 みつぐ
  季節風
 先週、夕方講座を受けるために自転車で狩野川の橋を渡っていた。既に、漆黒の闇と化した景色の中、小高い香貫山の端に満月が怪しく煌々と輝いていた。十五夜から幾日も経っていない。橋を渡り終えると今度は、虫の音が聴こえてきた。アオマツムシの聲である。どうも、アオマツムシは、日本の秋には賑やかすぎて似合わない。昼間鳴いているのならまだしも、夜は、しみじみと心に沁みいる聲がいい。
 ゆっくり心身を休めて、秋の夜長を楽しむゆとりが欲しいものである。
  言いたい放題
 静岡空港の建設の是非が問われる中、住民投票条例案が県議会で自民党の反対多数で否決された。日本は、今、国を挙げての無駄な公共投資を見直している。その中で、どう考えても利用者数は少なく、赤字経営が見えている空港建設を、何故決行するのだろうか。今まで地方空港で、県の予想利用者数を越えた事例はあるのだろうか。国内線は、県東部においては、東京の羽田空港が便利である。県西部においては、愛知の名古屋空港が便利である。県中部の人たちでも、便数の多さからすると、羽田か名古屋が便利だろう。国際線は、尚更である。
 いくら小泉首相が意気込んでも、地方の反対勢力が潰す。特殊法人改革においても、道路公団の民営化は頓挫しそうな状況に追い込まれている。第2等名高速は、無用の長物である。いくら検証委員会を設置しても、空港建設が前提なので何の意味も持たない。結局、県民の総意より一部のジェネコンや経済界の利益のためだけに進められる。赤字経営の時は、県民が負債を負うことになるだけなのである。
 7月の石川県知事の再選は、多くに県民が石川氏の住民投票への賛意に基づく結果だっただろうに、県民の判断の甘さが、暫く尾を引きそうだ。
  つくしんぼの詩
 アメリカで起きた同時多発テロは、新しい戦争を予感させる犯罪であった。戦争と言っても国と国との戦いではなくて、テロ組織との戦いである。
 英米の連夜空爆では、やはり民間人を巻きぞいになっている。いつも弱者が、謂れない被害を受ける。ただ、平凡に生きるだけで、それだけで幸せな人々を奈落の底に貶める。殺し合いは、醜いものである。そして、宗教が絡むと一気に複雑になる。
 報復は、報復を生む。もしかすると、それが人間の本来の姿か。人間とは、悲しい生き物である。何処かで報復の連鎖を断ち切る他ないが、国レベルでは不可能である。ノーベル平和賞を受賞した国連に、それが求められる。
  虫尽し
 ブラジルのイタコアチアラ郊外の林で採集していた。空高く、初めて見るチョウが翔んでいる。“口惜しいね!”1km程の林道の終わりに差しかかったとき、突然、前方からイタチみたいな動物が走ってきて叢へと駆け込んでいった。そして、それに続いて中形の犬が追い掛けてきたが、私の前で立ちすくんでしまい、暫くしてから吠えだした。
 “取り逃がしたくらいで騒がないの!俺だって、ワンちゃんに吠えてみたいわ!!”
  情報の小窓
 『八〇年代のアメリカの成果主義導入に向けた試行錯誤を通して見えてきたのは、賃金や売り上げ数値だけでは、働く人間のモチベーションには成り得ないということでした。社員が最大限の能力を発揮し、高い意欲を持って働くためには、まず組織の改革が大切だと認識されるようになったのです。』
 文藝春秋10月号「「人事部廃止」ある商社の人材革命」高橋俊介著(慶応大学大学院教授)

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