夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その51 発行日 2004年3月14日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 今週に入って夕方ジョギングをしていると、黄昏時の空を黒い翼をばたつかせながら飛んでゆく生き物がいた。眼で追ってゆくと、へたくそな飛び方なのだけれど、うきうきしながら餌を求めて飛び回っているコウモリだった。“コウモリも冬眠から醒めて、初めて空中に飛び立つときの心境は如何なるものなのだろうか?”などとつまらね事を思い巡らせながらジョギングを続けた。
 春も麗ら、ハクモクレンの蕾がふっくらと膨らんできて、つくしんぼが仄かな土の薫りに包まれて春霞の隙間に顔を覗かせていた。
  言いたい放題
 とうとう鳥インフルエンザで、犠牲者が出た。犠牲者と云っても、インフルエンザで亡くなった訳ではなくて、養鶏業者が鳥インフルエンザの拡大を苦に、自らの命を絶ったのである。
 確かに今回は、経営者の判断に大きな過ちがあったと思われる。厳しい経営環境の中小企業としての養鶏業者にとっては、鳥インフルエンザの感染は、廃業をも意味する事態だったであろう。“知られたくない。信じたくない。違って欲しい。明日は、きっと良くなる。”と、多くの葛藤を強いられていた筈である。
 家畜伝染病予防法に届け出の義務があるが、廃業の痛みは届け出の躊躇を産み出していたことだろう。それらのリスクをよく考え、国は、経営者への補償・支援対策をしっかりと打ち出しておくべきであっただろう。経営者・従業員の苦痛、苦悶を国は、しっかりと受け止めるべきである。
 今回の自殺の報道を聴いて、私は、ふと思った。小泉改革の成果?なのかと。競争至上主義を絶賛し、負け組は痛みしか残らない社会を目指している。原因は何であるにせよ、負けることは死をも意味しているのである。小泉改革が始まってからは、自殺者数は高水準を維持したままである。
 ここ数年来、弱者にとっては、この日本という国は更に住みにくくなってきているように思えてならない。
  つくしんぼの詩
 隣国中国の来年度国防費が、前年度比で10%以上伸びた。大国がどんどん軍備に力を注ぎ、軍事力による抑止を目指し続けて、相変わらず腕力による対外政策を推し進めている。それ故テロは、世界から消え去ろことはないだろう。
 世界の国々の軍備費のほんの少しでも、貧困に苦しんでいる人々のために使えることが出来るならば、世界はもっと安定した方向へと向かうことを多くの人は知っている。それなのに多くの国々が、そのことに反して逆の方向へと進んでいる。自国の利益を追求することに必死である。
  虫尽し
 ボツワナの首都ハボロネの中心街から郊外に向かって歩いていると、多くのサバンナのチョウたちと擦れ違う。ここは、もうサバンナの真っ只中である。
 1時間ほど歩いたサバンナで採集していた。ツマアカシロチョウが、ここかしこを軽快に翔び交っている。“そう言えば、この木、花が咲いているけれど、何かいないのかな?”・・・“おっ!タマムシじゃないの!”さっきから、この辺りをうろついていたのだけれど・・・。見つけちゃった!
  情報の小窓
 『お互いのつながりや共通点を確認し、他者を排除することで自分のさみしさや不安を打ち消すような表面的なつながり、もたれ合いではなく、お互いの違いを前提とし、どうしようもないわかり合えなさを認め合う中で、それでも少しでもわかり合い、響き合うような深い心と心の交流を持つことができる。』
 NHKブックス「孤独であるためのレッスン」諸富邦彦

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