夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その60 発行日  2005年3月13日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 梅の季節になって、ふと通勤時、もの足りなさを感じてしまった。何がもの足りないのだろうと思っていたところ、休みの日ラジオを聴いていたら、しだれ梅の話題が上っていた。そうである。通勤途中に、老木のしだれ梅が去年まであったのである。ピンクや白い花が、老木を彩っていたことを覚えている。
 ところが、そこの空き地が整備されて駐車場に変わってしまった。昨年は、ミカンの木が切られてしまった。春の鼓動は、人工物からは感じ取れない。さて今年は、一抹の寂しさを感じながらも別のものを探さなくては。
  言いたい放題
 株の時間外取引で、日本放送の筆頭株主になった昨年後半から話題性たっぷりのライブドアの一件をニュースで聞いて私は、ふとあることを思い出してしまった。20数年前のことなので詳細は、忘れてしまったから間違っているかも知れないが、おおよそ次の通りである。プロ野球、巨人軍がドラフト会議で指名権を得られなかった有力選手を、契約直前の空白の一日を利用してトレードで獲得したのである。今回の件と、同じようなことであろう。
 法令の定める内容に照らして、確実に違反している訳ではないが、だからと云って正しい訳でもないと云う、極めてグレーに近い部分を自分の都合のいいように解釈して、利潤を得ようとする。そんな輩は、何処にでもいる。そもそも法律は、最低限守らなくてはならないことを決めているだけである。それ故、法律を守っているからと云って、偉い訳でも何ともない。法律のグレイゾーンにつけ込んで、一稼ぎしようという方が、よほど異様である。
 ネット至上主義、競争至上主義、歪んだ株至上主義の最前線を走るライブドアは、現在の政府が掲げる政策の模範となる企業かも知れない。私は、全く興味が湧かないが。
  つくしんぼの詩
 改正道路交通法が施行されてから、携帯電話を片手に運転している車を見かけることが少なくなった。確かに施行時には、ながら運転は姿が消え、車を路肩に止めて携帯電話をしているのを何度か見た。
 しかし、4ヶ月経って、また携帯電話を片手に交差点を曲がってゆく車を、しばしば見かけるようになってきた。気の緩みとともに、便利な携帯電話に手が伸びる。引き続き、警察による引き締め対策に全力を傾けて欲しいものである。
  虫尽し
 エチオピア南部の山の中腹にある緑多いホテルに泊まった。エチオピアでは予想もしてなかった緑である。
 まだホテルの部屋が掃除してなかったので外で待つことにする。庭には猿の群が訪れていた。そして近くの花には、日本の沖縄でも棲んでいる、メスアカムラサキの雄が止まっていた。“写真に撮っておこう!”早速カメラを取り出して、ばっちり写真を撮った。ところがホテルの外での採集では、一匹もメスアカムラサキに出会わなかった。
  情報の小窓
『社会を導くはずの政治家も財界人も、そしていまや学究者まで、口を開けば競争を謳い、人びとの間に落伍恐怖症を煽り、「格差拡大社会」をもって「活力ある社会」との喧伝する政策が花盛りです。私たちの社会はどこへ向かおうとしているのでしょうか。他人の犠牲や痛みを代償として初めて自分の幸せがある、というような社会でなく、自分の幸せの追求、満たされた生への努力が、そのまま他の人々の幸せ、豊かさの創造につながる、そう願うあり方こそ人間本来のものであるはずです。人と人との切磋琢磨は価値高い研鑽であり人間努力の道です。しかし、いま唱えられる競争至上、市場至上の社会は、他人の失敗がなければわが身の成功もない、そういう仕組みのなかに人びとを追い込もうとするものです』
 日本放送出版協会「NHK人間講座 「共生経済」が始まる 競争原理を超えて」内橋克人

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