夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その67 発行日 2005年12月18日
編集・著作者    森 みつぐ
  季節風
 今年の冬は、一気に訪れた。乾いた落ち葉が舗道を覆い尽くし、真冬の到来である。いつまでも五月蠅かった蚊は、いつの間にか姿が消えていた。逆に寒くなって元気に冬の花、寒椿や柊の花が寒空に向かって咲いている。
 私の家では、本来、幼虫で越冬するゴマダラチョウが、暖かかった秋に、すっかり大きくなってしまい、今回の寒波到来直後に蛹になってしまった。もう部屋の中には、動き回るものはいない。ついでに私も、冬眠に入りたいのだが・・・。
  言いたい放題
 耐震強度偽装設計問題は、地震の多いこの日本社会に多くの問題を投げかけている。事の真相は、これから究明されることになるが、この日本では、当然起こりうる問題だと思われた。
 私は、弱者の立場で物事を考える。それ故、今回の問題は、偽装設計を行った設計者に肩を持つ。不況のどん底だった7〜8年前、それでなくても私利私欲に走る企業は、破産するくらいならば、いとも簡単に法を犯すことだろう。企業の締め付けは、労働者のみならず、その関連会社、下請け業者へと及ぶ。
 労働者が職を失うことのプレッシャーは、相当のものがあるだろう。まして家族がいると、そのプレッシャーは、私には想像しがたいものである。“ノー”が“イエス”になったからと言って、彼を責めることはできない。ただ、偽装が長い間続いたことに問題がある。また、その偽装が人命に関わることであるが故に、更に責任は重い。日本の企業体質は、何処も似たり寄ったりである。コンプライアンスが、どうのこうの言ったところで、企業に倫理を期待するのは間違っている。
 景気は回復しているかのようであるが、政府主導の競争社会は、更なる社会の歪みを拡大してゆくことだろう。
  つくしんぼの詩
 幼い子どもを狙った犯罪が、立て続けに起きてしまった。事件解明の最中にも、子どもたちを狙った未遂事件が起き続けている。物に溢れ経済が発展すると共に、日本は不安定な社会へと突入してしまった。
 人間は、集団生活する動物である。それに適応する心を育てずに知識だけを詰め込もうと教育する。中途半端な頭でっかちの人間が、ここそこにうようよしているのが現代である。政府は、相も変わらず経済優先に走る。物は豊かになったけど、安心して街を歩くことができない社会になってしまったと言うのに。
  虫尽し
 ウラジオストック郊外の丘陵地に鉄塔が建っていた。電力線の下は、保守するための小径が続いている。森林の中よりも、こういう陽が射し込む林縁に虫さんがいる。
 のんびり小径を歩いていると、野良仕事をしていそうな男性が林内から出てきて、何やらジェスチャーをする。“熊が出る!”よくよく見ていると、牛さんを探しているようだ。その後、牛さんが林内をのんびりと散策しているのを見た。長閑な光景である。私は、牛さんではなくて、虫さんを探しているの。
  情報の小窓
『以上三つの要素に、アメリカ人が深く共感を覚えているのだと考えてみると、いまブッシュ大統領がとっている単独行動主義とは、ひと口で言うとこういうことになります。アメリカは新大陸の国家である。旧大陸の文明の価値観に妥協する必要が、どこにあるか。アメリカはやりたいようにやる-------。 このようなわけで、ヨーロッパに対しても、イスラム世界に対しても、場合によっては、中国や日本に対しても、アメリカ的価値観を強引に押しつけてくる、というやり方になる。こういう動きが底流にあります。』
 PHP新書「アメリカの行動原理」橋爪大三郎

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