夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その91 発行日 2008年6月22日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 今年、札幌の春は、どうも爽やかな晴れの日が続かない。気温も少し肌寒い日が多いようだ。それでも最近は、白い房状の花々をぶら下げたニセアカシアの花が、樹木を白く染め上げるように咲き乱れている。その近くを通るたびに、心地好い甘い香りが漂ってくる。
 私の両親が住む実家近くには、エゾノコリンゴの木がある。先週頃から、その木の周辺を白く大きく白いエゾシロチョウが翔び回って、周辺の庭にも、花の蜜を求めて舞い始めている。
  言いたい放題
 地上遥か上空では、子どものときからの夢を叶え、星出宇宙飛行士が無重力の世界で活躍していた。一方、地上では、子どものときの夢を早々に諦めざるを得なくなり、生きていることの実感を得ることもできず自己破滅の道を選択し、東京秋葉原で通り魔殺傷事件を起こした若者がいた。
 インターネット掲示板を使用した劇場型事件を起こし破滅へと向かう若者、逆に、ひっそりと自らの命を絶つ若者もいる。最近では、硫化水素を発生させて自殺する人も多くなったので、ひっそりとと言えない状況であるのだが、両方とも、その原因である社会的要因は、同じように思える。
 社会に出ても年収200万円にも満たないフリーターや非正規社員の道しかない昨今、こんな年収のままでは、まったく将来の人生設計を描くことなんてできない。子どものときの夢は、夢のまた夢にもならないどころか、生きてることの実感もないまま自己否定へと向かう。もしくは、このような境遇に追いやったと社会を恨み復讐へと向かう。夢と希望は、勝者と言われる人たちだけのものになってはならない。誰にでも、夢と希望を持ち続けられる国であり続けなければならないと思うのだが、近年の日本は、それさえも期待できない状況となっている。
  つくしんぼの詩
 札幌市の一部のバス路線を受け持っている民間のバス会社が、今年限りで運行の撤退を表明した。以前は、札幌市の市営バスが運行していたのだが、赤字が続いたため民間のバス会社に移行した経緯がある。
 民間の企業は、当然、利益が出なければ、そこから消えてゆく。公共性の高い市民の足である移動手段を確実に確保することは、行政の役目である。まして昨今問題となっている環境問題を解決するためにも、エネルギー効率の悪いマイカーより公共の乗り物を充実させることも行政の役目であろう。単純に利益という視点からだけで、官か民ではないはずである。
  虫尽し
 昨年、札幌に引っ越してから、近くの定山渓が私の散策コースとなった。春先、歩きに行くと。完全防備した人たちが、山菜採りに来ている。藪の中へと分け入るので、虫に刺されたりもする。昨年、私は、虫に刺され痒い思いをしたような記憶はなかった。
 ところが今年は、毎回、1〜2ヶ所刺されて、2日ばかり痒さが続いている。先週も気付かぬうちに額と指を刺されてしまった。オオブユである。途中で擦れ違った人がいたが、熊除けの鈴の音と蚊取り線香の匂いがプ〜ンと漂ってきた。“世界には、一週間以上も痒さが続くのもいるから、2日くらい、許してあげようか!?”
  情報の小窓
『民主主義とは完成するとかしないとか、そういう実体のある概念ではけっしてない。・・(省略)・・民主主義とは、人間相互のエゴイズムを調和させるために、ほかに仕方がないから、ある妥協の方法として生まれた消極的、相対的な政治形態でしかないのである。放置しておけば人間の欲望には際限がなく、エゴイズムの激突は、必ず無政府状態か専制独裁か、そのいずれかに結果するしかないが、誰しも他人を独裁者にさせたくないという自分のエゴイズムを持っている。民主主義は、そういう相互のエゴイズムの調節手段としての、最悪よりも次善を選ぶ妥協の産物として成立したにすぎない。』
 PHP新書「個人主義とは何か」西尾幹二

Copyright (C) 2008 森みつぐ    /// 更新:2008年6月22日 ///