汗たぎちながれ絶対安静に
夜もすがら汗の十字架背に描き
三時打つ烏羽玉の汗りんりんと
汗微塵身は冷静の憤
夕立来と烏蝶飛び烏飛び
芭蕉葉の露重畳の今朝は蒸す
芭蕉葉の露集りぬ青蛙
青蛙はためく芭蕉ふみわけて
青蛙両手を露にそろへおく
蝿を打つ神より弱き爾かな
蝿打てば即ち蟻の罷り出づ
兜虫み空を兜捧げ飛び
かたつむり露の葛の葉食ひ穿ち
心頭の蝉みんみんといさぎよし
みんみんや鼻のつまりし涙声
好きといふ露のトマトをもてなされ
茄子汁の香に久濶の何も彼も
老鶯に篁夕日青丹寂び
蟻の列いま粛然と夕焼けぬ
白牡丹われ縁側に居眠りす
ちり牡丹七花八裂して白磁
玉の汗鳩尾をおちゆきにけり
玉の汗簾なすなり背に腹に
月見草ランプの如し夜明け前