冬木立ランプ点して雑貨店
躓きし石生きてとぶ枯野かな
庫の中地獄に見ゆる焚火かな
葬儀社のがらんどうなる寒さかな
大いなる月おそろしき枯木かな
初冬や夕月かかる御霊屋に
初冬や竹の中なる柚一と木
大根を引きたる穴の落葉かな
時雨るるや馬車より低き小松原
諸共に丸めて我身古衾
清浄と仄かにぬくし古衾
寒椿尿瓶を愛づるあろじかな
風の子の一と群過ぎぬ虎落笛
チンドン屋流すよ冬の荏原郡
チンドンや枯原道に多々良踏む
耳塚の前ひろびろと師走かな
短日の照し終せず真紅ゐ
大歳の常にもがもな弥陀如来
しぐるるや僧も嗜む実母散
湯ぶねより一くべたのむ時雨かな
時雨るるや又きこしめす般若湯
涙ぐむ粥あつあつや小夜時雨
夕粥や時雨れし枝もうちくべて
鞘堂の中の御霊屋夕時雨
しぐるるや粥に抛つ梅法師