袖乞のしぐれながらに鳥辺山
時雨来と水無瀬の音を聴きにけり
かぐはしや時雨すぎたる歯朶の谷
通天やしぐれやどりの俳諧師
しぐるるや目鼻もわかず火吹竹
酒買ひに韋駄天走り時雨沙弥
しぐるるや笛のごとくに火吹竹
梅擬つらつら晴るる時雨かな
しぐるるや日がな火を吹く咽喉仏
しぐるるや閻浮壇金の実一つ
御僧や時雨るる腹に火薬めし
時雨来と栴檀林にあそびをり
小夜時雨開山さまはおきて居し
鼠らもわが家の子よ小夜時雨
時雨鳩わが肩に来て頬に触れ
花を手に浄行菩薩しぐれをり
ぎつしりと金看板や寒の雨
雪模様卒都婆の垣根をかためけり
牡丹雪林泉鉄のごときかな
雪晴の障子細目に慈眼かな
しんしんと雪降る空に鳶の笛
月の雪あをあを闇を染めにけり
物陰に月の雪あり一とちぎれ
一枚の餅のごとくに雪残る
渦巻いて芒は雪を被り居り