和歌と俳句

原 石鼎

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ひる寝ふかく蝿の翼をゆめみたり

の脊の紺青にして樫の風

恐ろしき爪外に出て籠の蝉

蝉雲にとぶや羽見えし西瓜畑

人間に日はゆふべなる裸かな

空渡る雷二道や夏の海

蝉握る一と群の子に泳ぎ川

楼の蚊帳の灯影たよりの夜泳かな

泳ぎ子の脱ぎ衣に土手の薊かな

健かに細き腕や水泳着

岩へ上る手足細さや水泳着

咲くや今朝の大鐘まだ鳴らず

僧二人ともに酔ひ居る かな

洗ふ茄子と洗ひし茄子と籠二つ

茄子の艶紫水をはじきけり