くつろげし胸の白さよ蚊遣香
眠たうてあごのまろさや蚊火の妻
神仙を夢みて覚めぬ蚊遣香
埒もなや蚊火焚く妻の大あくび
たましひのさびしくいぶる蚊遣かな
蚊遣火やみすぎよすぎの裏長屋
在り慣れてうき世ともなし衣更
内縁の妻の誠や衣更
源氏名の昔もありぬ衣更
湯ぼてりの肌によそ風初袷
抜きすぎの衣紋いやしき袷かな
三子皆男で譲る単衣かな
わが好きの単衣つるせり寝ても見る
うすものや袂の手巾歴々と
翩飜と羅を解く月の前
うすものの裾や吹かれて埒もなし
うすものや乳のしみ出し二ところ
うすものに赤き湯文字を巻く勿れ
人酔うて浴衣いよいよ白妙に
貸浴衣みな男もの妻も着る
降り灑ぐ灯影うれしき浴衣かな
令夫人ざつくばらんに浴衣がけ
糊利いて肌につれなき浴衣かな
甚平やすこしお凸で愛らしき