潮風に吹かれたかぶり夏羽織
旅果つや皺の出来たる夏羽織
嵩もなう解かれて涼し一重帯
帯どめの翡翠は青し一重帯
水の粉や胴ほそぼそと一重帯
通り雨に逢うて戻りぬ一重帯
夏帯や自ら疎む石の胎
白服や循吏折目を正しうす
白服や五日の旅によごれたり
はつたいの日向臭きをくらひけり
団々として白玉の七つ八つ
白玉や夏書疲れに参らする
白玉や朧々として水の底
しら玉の雫を切つて盛りにけり
白玉やひんやりとして舌の上
ところてん煙の如く沈み居り
帷子の腋背涼しところてん
心太喰うて涼しきのんどかな
水無月の落葉するなり心太
心太うす味もちて啜らるる
瓜揉や相透く縁のうすみどり
瓜揉の酢の利き過ぎし月夜かな
冷奴うけとる月の舌涼し
口中に漂ふ柚の香冷奴