爽かやことしの夏も死なざりし
平凡に咲ける朝顔の花を愛す
残暑に倦み猫を邪慳に扱へり
月の出や滅法涙脆くなり
余命いくばく生命保険払ひ込む
台風に仰臥の四肢をこわばらす
草深に露命を維ぐ秋日和
生きるとは死なぬことにてつゆけしや
しびとばな生けて花買ふこともなし
てのひらに一顆珠なす青ぶどう
枕頭に柚子置けば秋の風到る
病む鶴の高くは翔ばぬ露日和
白菊の九つの花みな薫
肌寒や妻の機嫌子の機嫌
疲れ寝の妻の寝顔や昼の虫
無花果を提げて三十年の友