おもかげを墓前にしのぶかすみかな 蛇笏
かすむ日の畦土麥へそそぎけり 蛇笏
風鐸のかすむとみゆる塔庇 蛇笏
中坂のおもひでともる霞かな 万太郎
餓鬼となるわが末おもふ夕霞 草城
やまのはの樅に瀬音やはるかすみ 蛇笏
川波の霞むを見れば疾く流る 秋櫻子
河北潟見ゆる限りの霞かな 虚子
嶺とほくかすめども雪又新た 蛇笏
群山に霞める眉は大菩薩 秋櫻子
東京のまっただなかの霞かな 万太郎
桂領桂河原の霞かな 万太郎
佇めば水ひろびろとまづ霞み 万太郎
金華山囀りもなく塔かすむ 蛇笏
日りんのかすむ光りを浪にのみ 蛇笏
水すでにあぶらのごとき霞かな 万太郎
谷の寺元黒谷の霞みけり 虚子
夕眺めいつととのへる霞かな 万太郎
年月のまことつもりし霞かな 万太郎
屋根ふきの屋根の一日霞かな 万太郎
こつねんと塔うかびたる霞かな 万太郎
いたき歯をうつかり噛みし霞かな 万太郎
老婆出て霞む百穴ただ見つむ 三鬼
春がすみ団十郎といふ名かな 万太郎
夕日うくる塔となりたる霞かな 万太郎
耳成と畝傍濃淡霞中 立子
うち霞み山頭の火ぞあきらかや 汀女
霞ひき盆地青ます山と川 林火
叱られて仔牛が坐る遠霞 不死男
富士霞む伊吹も霞む距たりて 誓子
あねいもと別の山見てかすみけり 双魚