大風に羽織かむりて田螺とる みどり女
風騒ぐ水田の浪の田螺かな 喜舟
まひる吾が来たり田螺は鳴くものか 鷹女
寂しさよ昏れて田螺の吐く水泡 鷹女
かがやきて田螺の水は田の沖へ 青邨
光輪を負ひて貧しき田螺かな 茅舎
堰の戸の百千の田螺ひとつ落つ 悌二郎
みちのくに田螺取り食ひ在りと知れ たかし
月の出のおそきをなげく田螺かな 万太郎
田螺とり日本の飢深くなりぬ 楸邨
溜息が田螺を生みぬあはれあはれ 鷹女
水の下田螺黒き身出し尽す 欣一
哲学の田螺を投げて蒼い穹 鷹女
蝶々の翳来て田螺老いそめぬ 鷹女
堰の戸に田螺百あまり暖かし 秋櫻子
干パンツ抜けて田螺へ今の風 不死男
老いて裸足田螺の水は透きとほり 静塔
田螺和彼我死にゆきし者ばかり 波郷
寺の鐘雨の田螺にひびきけり 青畝
殻とみて通る安積の田螺かな 青畝
霽れしぶる吉野の雨の田螺かな 青畝