和歌と俳句

帰り花 忘れ花

放哉
返り花あからさまなる梢かな

風生
返り咲く故園の軒端菫かな

蛇笏
返り咲く園遅々とゆく広さかな

秋櫻子
梨棚や潰えんとして返り花

素十
真青な葉も二三枚返り花

青畝
帰り咲いて一重桜となりにけり

草城
夕風のわたればさむし帰り花

草城
帰り花とほき木末に幽かなる

草城
帰り花日かげりぬればさやかなる

草城
ゆきずりにみつけてうれし帰り花

ちらぱらと散りもしてあり返り花 花蓑

庭桜返り咲きたる今年かな 花蓑

草田男
ひと枝にうすく真白く返り花

草田男
返り花三年教へし書をはさむ

青畝
梨棚のところに来たり帰花

虚子
立ち昇る炊煙の上に帰り花

万太郎
ひろびろと日のさしてゐる返り花

青邨
返り花書屋をのぞく童あり

青邨
傘細くすぼめくぐりぬ返り花

亞浪
返り花子らが写生の外に在り

静塔
返り花俳人兵のことぎれし

帰り花兄妹睦びあひにけり 

万太郎
来ては去るその日その日よ返り花

万太郎
返り花その日その日の来ては去る

亞浪
遠光する野の水や返り花

亞浪
鶏犬の声す山中の返り花

草田男
返り花母恋ふ小田巻繰返し

秋櫻子
返り花残月空にまた白し

万太郎
越して来てみつけしものや返り花

不死男
返り花享年三鬼へあと一年

返り花日向は耳が静かなり 双魚

秋櫻子
濤音や返り咲きして桃の枝

秋櫻子
梨どころ来れば道辺に返り花

秋櫻子
返り花満ちてあはれや山ざくら