和歌と俳句

花橘 柑子の花

貞徳
門前に市も立花の盛哉

芭蕉
橘やいつの野中の郭公

芭蕉
するがぢや花橘も茶の匂ひ

杉風
橘や定家机のありどころ

千代女
橘の香やその空はへだつとも

蕪村
たちばなのかはたれ時や古館

蕪村
橘やむかしやかたの弓矢取

白雄
たちばなにかたちづくりす夜の軒

子規
病みて臥す窓の橘花咲きて散りて実になりて猶病みて臥す

漱石
漢方や柑子花さく門構

晶子
ややひろく庇出したる母屋づくり木の香にまじるたちばなの花

憲吉
橘花のかをりの深きおぼろ夜はひとりなやみて物をこそ思へ

立子
橘の花や従ふ葉三枚

青畝
嵯峨御所の橘かをる泊りかな

草田男
香は橘他郷ながらも南の夜