皇太后宮大夫俊成
世の中はうきふししげし篠原や旅にしあればいも夢に見ゆ
宜秋門院丹後
おぼつかな都にすまぬ都鳥こととふ人にいかがこたへし
西行法師
世の中を厭ふまでこそ難からめかりのやどりを惜しむ君かな
返し 遊女妙
世を厭ふ人とし聞けばかりの宿に心とむなと思ふばかりぞ
藤原定家朝臣
袖に吹けさぞな旅寝の夢も見じ思ふかたより通ふうらかぜ
藤原家隆朝臣
旅寝する夢路はゆるせ宇都の山関とは聞かずもる人もなし
藤原定家朝臣
みやこにも今や衣をうつの山ゆふ霜はらふ蔦のしたみち
前大僧正慈円
立田山秋ゆく人の袖を見よ木々のこずゑはしぐれざりけり
前大僧正慈円
さとりゆくまことの道に入りぬれば恋しかるべきふるさともなし
素覺法師
ふるさとへ帰らむことはあすか川わたらぬさきに淵瀬たがふな
西行法師
年たけてまた越ゆべしと思ひきやいのちなりけり小夜の中山
西行法師
思ひ置く人の心にしたはれて露わくる袖のかへりぬるかな
後鳥羽院御歌
見るままに山風あらくしぐるめり都もいまは夜寒なるらむ