青海の まなかにゐつつ 昼久し 錦絵ならべ 見居りけるかも
天の原 はるばる来つつ 現かも 海のいろ深く 黒き山二つ
荒磯岩 黒ぐろと霧 はれにけり 冬の芒の 青みたる見ゆ
はるばるに 波の遠音の ひびきくる 木のかげ深く 月夜の踊り
秋もはや 今宵を踊り をさめなる 秋の月夜の 更けにけるかな
荒磯べの 芒の中に 芒折り 魚の鰓を 貫きにけるかも
うろづくの 鰓にとほす 冬芒 未だも青く とほしけるかも
一ぴきの 赤き魚を 吾が提げて 芒の中の 暮れ早みかも
寒ざむと 夕波さわぐ 海づたひ 海は見えずも 芒の中に
暮れぬれば 芒のなかに 胡頽子の葉の ほのぼの白し 星の明りに
椿の蔭 をんな音なく 来りけり 白き蒲団を 乾しにけるかも
はらはらと 布団をすべる 椿の花 土にぞ止まる 昼は深けれ
真白なる 布団の上に 只ひとつ 椿の花の こぼれて久しき
昼の音 静もりぬれば 椿の花 障子の外に 零るる聞ゆ
冬の日は 短けれども 椿の下 白き布団の ふくらめるかも
まさやかに 朝の雨やみし 芒のなか 道さへ青み 踏みにけるかも
いとどしく 青み静もる 芒のなか 一人ぽつつり 行きとどまらず
芒の中 いたも明るみ 踏みて行く 熔岩道の 堅くもあるか
いとどしく 光のなかの 青芒 露いつぱいに 落ちも零れず
青々し 芒のなかに 一ぴきの 牛を追ひ越し はろかなる道
芒のなか 歩みとまれば 綿津美の 波の遠音の さやけく聞ゆ
夕焼空 焦げきはまれる 下にして 氷らんとする 湖の静けさ
冬空の 天の夕焼けに ひたりたる 褐色の湖は 動かざりけり
かわきたる 草枯いろの 山あひに 湖は氷りて 固まりにけり
まばらなる 冬木林に かんかんと 響かんとする 青空のいろ