をとめ子の守りしくりやは、蚯蚓鳴き 冬菜凍みつき、秋 冬を経ぬ
大歳の日ざし をどめる 牀のうへ。身を思ふ力も なくなりにけり
しばしばも、まどろむ我か。うつうつに 子を見れば、常に ねむり居りにけり
泣きあぐる声の みじかさ。乳児の息の いや細ぼそと なりて ゆくらし
すこやかに 遊ぶ子どもか。うつらうつら 乳児を寝せつつ 声 聞え来も
病み臥して、心なごめり。年の瀬を遊ぶ 子の群れに、身は 行かねども
小路多き 麻布狸穴。年くれて、明日の春衣を着たる 子も居り
おもかげに たつふる里や。海凪ぎて、今日しも 人は、潜きしてゐむ
ありありて 着欲しき帯も 買はざりし かかる悔みも、今は 言ひけり
諒闇に 歳窮れり。世の人のうへも、しづかに 我は おもはむ
まことあることばを 汝は 恋ひにけむ。安房のみ崎の里 別れ来て
今はもよ。歎かひ憊れ、ひたぶるに 身を悔ゆらむか。心のどかに
家びとの めをと睦びて、もの言ふを よしと聴くらむ。心よわりに
朝宵に、粥をすすろひ 思ふらむ。喰はせてくれむ 大き 白き手を
すべなきに似たるこの世も、相なごみ おのづからにし 道はとほれり
平凡のこと と 思ひて 在るものを、目にあたりては、心くだけぬ
もの知らぬ鄙の女を よしと 婚ぎけむに。この 情濃き直妻を あはれ
こと足らぬ病の牀に、妻おきて、棄ててかへらぬ 汝が名宣らさぬ
をみな子は、すべなきものか。病みて 子を産み、憑みし人は 家に来らず
をみな子は、さびしかりけり。身の壮り ふみしだかれて、なほ 恋ひむとす
寝し夜らの 胸触る時の、身に染みて 忘れぬものを あはれと思へ
わが家のくりや処女は、赤ら頬のすこやかにして、汝に思はれし