たのみては ひさしくなりぬ いそのかみ ふるのやしろの もとのちぎりを
よろづよの いろもかはらぬ ためしには かみなびやまの さかきをぞとる
かみやまの かづらををれば つきのうちに わがおもふことの ならざらめやは
つゆしげき をざさがはらを わけゆけば ころものすそに なびくしらたま
よのなかは みづのうへなる うきくさの うきにたへたる みをいかにせむ
むらさきの はつもとゆひを むすぶより きみがくらゐの やまをしぞおもふ
わがきみを いはひこめつつ たけのえだ ちよとちぎるぞ うれしかりける
ちとせふる いはねのまつの つるのこは けふすをたちて なぬかなりけり
われもいさ たづねいりなむ をののえの くちけむやまの あとをしのびて
からひとの ころもにかざる しらたまの しろきひかりの めづらしきかな
おとろふる ひなのわかれの かなしさに きずなきたまの みをぞうらむる
からごろも たちもはなれで あさゆふに めかれずみれど あかぬいもかな
としつきの ゆきつもるにも くろかみの かはるすがたの はづかしきかな
かのきしに わたりつきぬる あまをぶね いかにのりえて うれしかるらむ
わたつみに ただよふふねの うきしづみ そこをとまりと なきぞわびしき
もろともに まぢかきほどに すまひして いざかきごしに ものがたりせむ
このさとに かぐらやすらむ ふえのねの さよふけがたに きこゆなりけり
くりかへし むかしのことを ひきかけて しらぶるからに ねこそなかるれ
かきたえて とひくるひとも なきものを そらたのめする ささがにのいと
あしひきの やまべにあそぶ このはさる おもふこころぞ ありてなくなる
金葉集・秋
月を見て 思ふ心の ままならば 行方も知らず あくがれなまし
金葉集・恋
思ひやれとはで日をふる五月雨にひとり宿もる袖の雫を
金葉集・雑歌
教へおきて入りにし月のなかりせばいかで心を西にかけまし
詞花集・雑歌
筑波山 ふかくうれしと 思ふかな 濱名の橋に わたす心を
千載集・春
九重に 八重山吹を うつしては 井手のかはづの 心をぞくむ
千載集・秋
七夕の 天の羽衣 かさねても あかぬ契りや なほ結ぶらむ
千載集・雑歌・物名 ふりつづみ
池もふり 堤くづれて 水もなし むべ勝間田に 鳥のゐざらん
新古今集・羈旅
小夜ふけて 葦のすゑ越す 浦風に あはれうちそふ 波の音かな
新古今集・雑歌
萬世を ふるにかひある 宿なれや みゆきと見えて 花ぞ散りける
新勅撰集・春
いつしかと けふふりそむる はるさめに いろづきわたる のべのわかくさ
新勅撰集・秋
あきの夜を あかしかねては あかつきの つゆとおきゐて ぬるるそでかな
新勅撰集・恋
ひとめもる やまゐの清水 むすびても 猶あかなくに ぬるるそでかな
新勅撰集・雑歌
はるはいかに ちぎりおきてか すぎにしと おくれてにほふ はなにとはばや
続後撰集・釈経
もとゆひの 中なる法の たまさかに とかぬかぎりは 知る人ぞなき
続後撰集・恋
うけひかぬ あまの小舟の つなてなは たゆとてなにか くるしかるべき
続後撰集・恋
あふせなき 涙の河の 底みれば 恋にしづめる かげぞかなしき
続後撰集・恋
あし火たく しのやのけぶり 心から くゆる思ひに むせぶころかな
続後撰集・恋
なつやまの こずゑにとまる 空蝉の われから人は つらきなりけり
続後撰集・雑歌長治二年三月
河竹の ながれてきたる 言の葉は よにたぐひなき ふしとこそきけ
続後撰集・羈旅
秋しもあれ たちわかれぬる 唐衣 うらむと風の つてにつげばや