和歌と俳句

相模

後拾遺集・恋
怪しくもあらはれぬべき袂かな忍びねにのみ濡らすと思へば

後拾遺集・恋
あやうしと見ゆるとだえのまろ橋のまろなどかかる物おもふらん

後拾遺集・恋
我が袖を秋の草葉にくらべばやいづれか露のおきはまさると

後拾遺集・恋
ありそうみの濱の真砂をみなもがなひとりぬる夜の數にとるべく

後拾遺集・恋
やくとのみ枕の下にしほたれてけぶりたえせぬとこの浦かな

後拾遺集・恋小倉百人一首
恨み侘び干さぬ袖だにあるものを恋に朽ちなん名こそ惜しけれ

後拾遺集・恋
かみなづき夜半の時雨にことよせて片しく袖を干しぞわづらふ

後拾遺集・恋
いつとなく心空なる我が恋や富士のたかねにかかる白雲

後拾遺集・恋
涙こそあふみの海となりにけれ見るめなしてふながめせしまに

後拾遺集・雑
ふみみてもものおもふ身とぞなりにける眞野の継橋とだえのみして

後拾遺集・雑
野飼はねどあれゆく駒をいかがせむ森の下草さかりならねば

後拾遺集・雑
逢坂の関に心はかよはねど見し東路は猶ぞこひしき

後拾遺集・雑
まことにや空になき名のふりぬらむあまてる神のくもりなきよに

後拾遺集・雑
人しれず心ながくや時雨るらむ更けゆく秋の夜半の寝覚めに

後拾遺集・雑
東路のそのはらからはきたりとも逢坂まではこさじとぞおもふ

後拾遺集・雑
さもこそは心くらべにまけざらめ早くもみえし駒のあしかな

後拾遺集・雑
綱たえてはなれはてにしみちのくのをぶちの駒をきのふみしかな

後拾遺集・雑
言の葉につけてもなどかとはざらむ蓬の宿もわかぬあらしを

後拾遺集・雑
きのふまで神に心をかけしかどけふこそ法にあふひなりけれ

後拾遺集・雑
いつかまたこちくなるべき鶯のさへづりそめし夜半の笛竹